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異世界という名前の世界はない  作者: 古池ゲコ
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異世界から見た現世もまた異世界である

書ききる自信はない

俺が異世界に来てかれこれ一月が経つ

言葉も徐々に分かるようになってきた

未だに字は読めないが、意思の疎通ぐらいは出来る

この一月で、ボディランゲージがやたらと上手くなった

この調子ならあと半年もすれば言葉をマスター出来そうだ


しかしここの言葉は発音が難しい

なんとなくロシア語に似ているような気がしなくもないがロシア語をしっかり聞いた事がないのでなんとも言えない

食事に関しては、質素ではあるが不自由しない程度には食えている

言葉が話せないながらも荷積みの仕事をもらってどうにか食いつないでいる


来た時と比べるとなんとなく手がゴツくなったし、若干だが筋肉もついた気がする

なによりタフになった

こっちへ来て二日目の夜、初めて生で盗賊とやらを見た

野蛮な連中だと想像の上では理解していたが、実物は想像を超えていた


ボロボロの服を着て今にも死にそうな顔で荷車を引いている数人の男

おそらく盗賊に捕らえられてこき使われているいるのだろう

彼らが引いている荷車には布がかけられているが、そこから血まみれの人間の腕らしきものがはみ出ているのが見えた

妄想の中でなら、かっこよく出て行って盗賊の武器を奪って倒してやろうなどと考えたりしたかもしれない

しかし現実にその光景を目の当たりすると、声も出ないどころか手足に力が入らず心臓の音で盗賊たちの会話が聞こえないほどだった

もしあの時見つかっていたら間違いなく逃げ切れなかっただろう


こっちへ来て七日目の朝、俺は教会で目覚めた

皆祈りを捧げているようだが何を言っているのかは分からず、ここの神様がどんな神様なのかも知らない

ただ一見して分かるのは、ここでは十字架ではなくUの字のような形をした飾りが使われているようだ

教会の神父らしき老人は極めて親切で、必要な言葉をいくつか教えてくれた

俺は、運が良かった


こっちへ来て十日目の夜、暖かいベッドの上で蝋燭の火を見つめていると、なぜだか涙が溢れて止まらなかった


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