第2話 やはり強くなりたい…だって男の子だもの
やばいです。脱線が止まらない。チュートリアル回、いつまで続くのか!?
「なあフィーネ。取りあえず町を目指すのはいいが、俺は無一文だぞ」
「異世界に送り出されるとき、最低限の支度金はでているはずだけど、ストレージに入ってない?」
王都を目指しててくてくと歩いている途中の会話。また新情報が発覚する。どうやら俺には右手の箸と左手のどんぶり以外に持ち物が存在するらしい。ちなみに箸とどんぶりは、フィーネには捨ててしまえと言われたが、もはや愛着がわいてしまったので、捨てずに持っている。ファンタジーだと箸はないだろ。必要じゃん。
「ユウト、あんたまだステータス開いていないでしょ?そこに持ち物のタグがあるからそれを開くと持ち物が表示されるわよ。取り出したいときはその物を出すと念じれば、出てくるわ。逆にしまいたいときはしまうと思えばしまえるわよ」
なんと、そんな便利な機能がついていたとは。異世界転移恐るべし。いざとなったら荷物運びのバイトができるじゃないか。トレードマークはやっぱり黒猫か?ペリカンも捨てがたいが、圧倒的知名度で黒猫だろう。物流を制する者は、商いを制す。輸送コストが無くなれば、格安で物を売ることもできる。異世界のアマ○ンも夢ではない。
「ああ、言っておくけど自分より重いものはしまえないわよ。重量オーバー」
俺は思わず、膝から崩れ落ちる。俺の異世界億万長者計画が、霧散する。億万長者になれれば、むしろ、この世界に永住して酒池肉林をむさぼる事も可能だろうに。くそ、神は俺を見放したか。ああ、あの残念微乳にそんな能力ないか。納得、納得。
「ユウト、あんた何やってるの。どうでもいいけど早く見てみなさいよ」
フィーネは崩れ落ちたあと、妙にすがすがしい表情で立ち直った俺を見て、怪訝な表情をしながら催促する。おお、そうだ。ステータスだ。ステータスを見なければ。ここに俺の新たなる可能性が秘めている。界○拳を極めれば、無双は約束されている。それ以外のスキル的な奴があるだろう。なんだ、相手のスキルを奪う能力か?相手の考えている事がわかるスキルか?それとも魔法全属性持ちちかか?魔眼なんかも憧れる。異世界転移なんだ。あるだろう、そういう更なる無双が期待できるやつ。
名前:ユウト・ササムラ
フム、姓と名が逆表示。まあファンタジーっぽいな。
性別:男
身長:181㎝
体重:65Kg
ん、なんか身体測定の結果っぽい。太りすぎは気をつけないと。細マッチョ指令を破る事になる。
攻撃力:32
防御力:9
防御力低っ。攻撃力の3分の1以下って。ポロシャツ・ジーパンは早く改善せんと。死ぬ、確実に死ぬ。
HP:52
MP:60
うーん、この数字はどうなんだ。多いのか、少ないのか。残念微乳は魔法師の10分の1くらいとか言っていたな。魔法師すげー。600くらいMPがあるのか。使い放題じゃないか。いや待て、使う魔法の消費量次第じゃないか。もしかしたら、普通かもしれん。魔法師が。逆に俺がショボい可能性がある。あの残念微乳ならやり兼ねん。
魔法:
界○拳2倍 :消費魔力50 持続時間3分
※身体能力が二倍になります。倍数が1増えるごとに消費魔力が10増えます。
部分界○拳2倍 :消費魔力10 持続時間3分
※身体の特定部位のみ能力が2倍となります。倍数が1または特定部位の個所が1つ増える毎に消費魔力が10増えます
くっ、やはりか。魔法師がすごいのではなく、俺がショボいのか。今のままでは界○拳2倍が1回しか使えん。しかも3分。ウルト○マンか。やはり魔力の底上げが急務だ。気絶して問題ないところで気絶しまくらなければ。ん?何分伸びてればいいんだ。それ次第で、一日の行動すら変わる。ただし名称が界○拳なのは気に入った。界○様、オラ頑張る!
持ち物
お金:100G
荷物:なし
お金が100G。ここの貨幣価値が分からんから、多いのか少ないのか微妙だな。ただ、魔力の件もある。過度な期待は禁物だ。そう言えば、荷物がしまえると言っていたな。丁度、両手に箸とどんぶりがある。しまえ。
持ち物
お金:100G
荷物:お箸1、どんぶり1
おお、両手から箸とどんぶりが消えると表示画面に箸とどんぶりが現れた。これはちょっと楽しい。何かちょっとしまえるものと周りをキョロキョロし出すとじと目のフィーネと目が合う。
「手持ち金額を調べるのに随分と時間がかかっているわね~、ユウト」
「ソンナコトナイヨー」
とぼける時は外人物まねに限るな。勿論両手を広げてオーバーアクションを忘れない。
「死ねっ」
フィーネは小さい体をフル活用して、俺の鼻っ柱を蹴り上げる。外人気取りで鼻が高くなっていた俺は、思わず悶絶する。俺の高い鼻がっ。もっもげる。俺は痛む鼻を抑えながら、全身全霊で土下座をする。
「フィーネ様、申し訳ありませんでしたっ。ついつい楽しくてステータスを眺めておりゃしたっ」
「最初から、そう言えばいいのよ。いい、次は無いわよ。で、いくらなの」
恐ろしい極道の奥さん的な迫力で凄まれるフィーネ姐さん。
「ヘイッ、100G、きっちり納めさせていただきやすっ」
もはや三下に成り下がった俺は、その金すべてを上納する気分で金額を報告する。果たして満足いただける金額かどうか。場合によっては、その辺の中高生を捕まえて、ジャンプさせなくてはいけない。あっしたことないよ、そんなこと。本当だよ。
「ああぁっ100G?…コホン、ユウトに付き合ってたら人格が変わってしまったわ。少ないわね。他にはないの?」
「ヘイッ、他には一切ございやせん」
「いい加減その口調止めなさい。私も釣られちゃうじゃない。うーんそれだと道中で稼ぐ必要があるわね」
えー、三下プレイ、ちょっと楽しかったのに。残念。ん?稼ぐ?魔物を倒したらGでも手に入るのかしら。ドラ○エみたい。
「ユウト、また変な事考えていない?お金は流石に直接は手に入らないわよ。手に入るのは、魔石。あと人型ならその装備も使えるわね」
「魔石ってなんだ。芸能事務所か?」
「別にウン○ンとかバカ○ズムとか出てこないわよって、ツッコますな」
「うんうん、いいツッコみだ。今度はボケを頼む」
残念微乳はボケ一辺倒だったからな。やっぱ、ツッコまれるのも楽しい。でもたまにはツッコまないとこれはこれで、キレが落ちるしな。フィーネは余りボケそうにないから、ここは新たな人材の発掘が必要かもしれん。
「はぁ、魔石の話をしていいかしら、変なボケはいらないわよ」
「魔石って魔物を倒すとそれが石になるのか?」
「ちょっと違うわ。魔石は魔物の核よ。核の無いものは魔物とは言わないわ。例えば、イノシシも核があるとビックボアと言われる魔物になるわ。でもお肉は両方食べられるのよ」
「ほう、毒とか害はないのか?」
「ないわ。毒持ちは元々毒持ちの性質があるものだけ。ただ魔物の方が、その毒が強力になるけどね」
ふ~ん、魔物は強化版みたいなものか。イノシシの肉おいしそうだな。うん、腹減った。
「となると、王都に着くまでに魔物を倒さないといけないのか。よし、イノシシを倒そう。俺はもう腹ペコだ」
「そう都合良く現れればいいけどね。とにかく魔物なら全部倒しなさいよ」
きたっ、ついにきた。俺の界○拳を試す日が。当座の目標は10倍界○拳だが、ゆくゆくは100倍くらいまで引き上げてやる。まってろフ○ーザ。宇宙の平和はオラが守る!俺がむやみやたらにテンションを上げていると、フィーネが思いっきり水を差す。
「あっ、そうそう暫くは界○拳とやらは禁止ね。草原にいるような魔物は雑魚ばっかだから、普通に素手で倒しなさいよ。魔力切れで倒れたユウトを介抱するなんて、めんどくさいもの。いいわね」
そして俺は、再び崩れ落ちる。俺の夢が、スーパーサ○ヤ人に近づく夢が。
「あんた何落ち込んでんの?ほら、さっさと行くわよ。ごはんを見つけないといけないんでしょ?」
そうして俺はドナドナの子牛のごとく、フィーネに引かれながら重い足取りで晩御飯を探すのだった。