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テンプレにあこがれて何が悪い!?

 突然ですが、皆さん。


この俺、一色直輝いっしきなおきは、いわゆるテンプレ展開が大好きです!


 ツンデレ王女様系ヒロイン、最高!

 ラッキースケベから始まる出会い、流れるようなバトル展開、

 お約束のチョロイン陥落。

 もうたまりませんね、まったく。


 今ご紹介したのは、テンプレートのほんの一例にすぎません。

 テンプレートの魅力はこんなものじゃないんです。

 テンプレートには、いわゆるフラグ、お約束といったものも含まれます。

 

 食パンをくわえて、「遅刻、遅刻ー。」と叫びながら、

 曲がり角で運命の出会いを果たすヒロイン。


 殺人事件現場で、「犯人と一緒の部屋になんかいられるか!」と

 部屋を飛び出し殺されるモブ。


 必殺技を炸裂させて、悪役を倒す正義のヒーロー。

 

 どれもこれも素晴らしい、先人たちの生み出した、

 ああなればこうなるの典型例です。

 ここまでくると、もはや、美しさすら感じてしまいます。


 しかしながら、昨今、

 若者のテンプレート離れが急激に進んでいるというじゃありませんか。

 

 いわく、「テンプレは食傷気味だわ。もっと、オリジナリティのある作品が見たい。」

 いわく、「うわ、出たよ。はいはい、テンプレ乙、テンプレ乙。」

 いわく、「毎クール、毎クール同じような作品を何個も作んなよ、無能。」

 

 おぉ、なんと嘆かわしいことか。

 彼らは、テンプレがテンプレたる理由を全く理解していらっしゃらない。 


 テンプレートとは、すなわち母。

 すべての物語を生み、すべての物語を支える存在。


 テンプレートがあるからこそ、

 人々は物語の展開を予測し、安心して物語を読むことができるのです。


 テンプレートがあるからこそ、

 読者の裏をかき、感動と驚きを与える深みある作品ができあがるのです。

 

 まさしく、王道なくして邪道なし。

 テンプレなくして、名作なし。


 はぁー、やっぱり、テンプレート最高!

 もし、叶うなら、テンプレファンタジー異世界に今すぐ転生したい!

 そして、おなじみチート能力で、異世界無双して、

 ハーレム作って修羅場ったりしたい!

 

 いや、ファンタジーじゃなくてもいい。学園物でも全然いい。

 かわいい幼馴染はもちろん、ブラコン姉妹に、

 小悪魔な後輩、セクシーな先輩。

 あー、何かの縁で偶然、彼女たちとお近づきになって、

 悩みを解決して、惚れられて、ハーレム作って修羅場ったりしたい!


 そんな妄想をこじらすくらい、俺はテンプレ展開が大好きで、

 テンプレ展開にあこがれていた。


 〈その願い、この儂が叶えてやろう)

 

 突如、頭の中に響く女性の声。

 この展開はまさか、夢にまで見た女神さまからの異世界召喚の流れ!?

 そう思ったのを最後に、俺は意識を失った。


********************************************

 

 ・・・目を覚ますとそこは、赤黒く薄気味悪い世界だった。


 水の代わりに得体のしれない真っ赤な液体の流れる川に、木々の代わりに無数の針が生えた巨大な山。

 大地は荒れ果て、空は黒く染まり、世にもおぞましい恰好をしたモンスターたちが辺りをうろついている。

 

 ・・・あれあれあれあれ?なんか、思ってたのと違うぞ。

 普通ここは、女神さまが現れて、

 「勇者よ。世界を救ってください。」ってなる展開じゃないの?

 どう考えても、女神さまがいらっしゃる気がしないよ?ここ。

 

 もしかして、異世界転生ものは、異世界転生ものでも、

 人間じゃない生き物に生まれ変わるパターンの奴か?


 そう思って、自分の体を見回すが、特に異常は見当たらない。


 顔だけがクリーチャー化している可能性も考えて、手で顔に触れてみるが、  目、鼻、口、耳すべてある。

 鏡があるわけじゃないから断言はできないが、これは、おそらく人間の顔面で 間違いない。


 頭に声が響いて、気を失い、元いた世界とは異なる世界に連れて来られたまで は良い。

 だが、この展開はいったいどうしたことだ?

 女神さまが出てくる気配もしなければ、魔物になったわけでもない。

 すべてがあべこべで、テンプレートからは程遠い。

 

 「やっと目が覚めたか、小僧よ。」


あまりにテンプレからかけ離れた展開に、俺がまだ事態を飲み込めずにいると、 先ほど聞いたのと同じ声がした。

 

 ・・・ようやく、召喚主のお出ましか。

 一体、どんな奴がこんなテンプレを無視したふざけた召喚をしやがったんだ。

 一言文句言ってやんなきゃ、俺の気が済まねぇ。

 ありったけの憎しみをこめながら、声のした方へと視線を向ける。


 「!!?」


 そこにいたのは、女神でもなければ、邪神でもなく。

 魔術師でもなければ、召喚士でもない。


 蝙蝠を思わせる漆黒の翼に、頭に生えた二本の角。

 豊満なバストに、くびれた腰、引き締まった臀部から覗くのは、

 先のとがった特徴的なしっぽ。

 その姿は、まさしく、悪魔そのものだった。


 あまりにも予想の斜め上をいく召喚主の登場に、俺があっけにとられていると、悪魔は何を勘違いしたのか、俺に向かって妖艶に微笑みかけてくる。

 そして、次の彼女の一言が、俺をさらなる混乱の渦へと叩き込んだ。

 

 「おぬし、儂と契約して、ともに魔王を倒さぬか?」

 

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