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手作りだから…汚くてゴメン。

作者: 国後旺

初短編です。

主人公達の年齢、外見上の特徴は、

[敢えて]書きませんでした。

では、どぞ(>_<)

--12月24日--



今日は今年、私が一番楽しみにしていた日。


私には彼氏がいる。


…付き合って一年も経ってないけど。その人と今日は一緒に過ごす予定だ。


…でも、彼は信じられない事を言ってきた。





その日の朝、彼から携帯に電話が掛かってきた。



[…時間……まだ10時じゃん………もう少し寝かせてよ、もう……]


しかし、鳴り響く着メロ。


彼氏からなんだし…電話を切るのも悪い気がしたので、出てみた。



しばらく喋った他愛の無い話。


…でも、


何か大事な事を伝えたいような感じだったので、ちょっと聞いてみた。


[何か他に言いたい事があるの?]


そう聞けば早いのだが、色々と回り(くど)い言い方をして聞いた。…何故か照れくさかったから。


すると、彼は観念したように言った。





「今日は俺の家で過ごさないか?」






はっきり言って失望した。


今日はツマらない日になるだろう…そう思った。




夜。



私は今、彼の家の前にいる。どこにでも在る、大きすぎず小さすぎない、普通の家だ。


実際に家の前まで来ると、不思議と[仕方ないか]という気が起こる。


[本当なら彼と一緒に何処かに出掛けたかったが、今年は彼がいる。それで我慢しよう。]と思った。



彼の家のインターホンを押す。


家の中から誰かが走ってくる音がする。


玄関ドアが開いた。中からの突然の光に一瞬、目がくらむ。


そこに彼はいて、「あがって」というので、従った。


…流石にいつもとは違った。何というか落ち着きがない。迷子の子猫ちゃんのようだ。



リビングに案内された。



彼が突然クラッカーを鳴らした。ネタバレした簡単な一発ギャグを、百回訊かされた後のような空気が流れた。


その空気を諭ったらしく、彼は私に頭を下げて謝った。ちょ、そういうの、止めて。



彼は私に椅子を用意してくれたので、とりあえず「ちょこん」と座った。



彼は台所にいて、ピンクと黒のエプロンを着けていた。なかなか似合っている。花の妖精さんのようだ。



やがて彼は、何かを持ってきた。彼が持ってきた物…それは……





ケーキ?だった。ん? これケーキ?


「チーズケーキだよ」


彼が苦笑いを浮かべながら言った。


あ、やっぱりケーキだった…。それにチーズケーキらしい。どこでこんな色のチーズケーキを買ったのだろうか。 …ん?


ふと、彼の指を見てみる。


絆創膏(ばんそうこう)が貼られていた。それも…何枚も。


[……もしかして…]


「……作って…くれたの?」


彼は苦笑いしながら答えた。


「チーズケーキ好きって…言ってたから……


手作りだから…汚くてゴメン」




……………………最悪だ…私……


「ううん…私こそゴメン」


あまりの事に涙が零れ落ちた。


「なんでキミが謝るんだ?」


彼は飛ぶペンギンでも見るような、不思議そうな顔をしていた。


「此処に呼ばれた時、今日は何処にも連れて行ってくれないんだなって…

でも仕方ないって…此処で我慢しようって思ったの…。


でも…こんな事してくれてたんだなって……そう思ったら…………っ」


最後まで言えなかった。彼があまりにも強く抱きしめたから。


「…泣かないで……なんか困る……」


彼は自分の胸に、私の頭を抱きながら言った。甘い吐息が耳につぐ。


「………無理だよ…。だって………前よりも……」










「…良かったら、ケーキ食べてみて」


変わらぬ笑顔で彼は言った。


「うん」


フォークを刺して「ぱくっ」一口食べてみた。


「んー! おいしい!!」


見た目はお好み焼きみたいで、ちょっとアレだけど、本当に美味しかった。


「良かった……






隠し味に[海苔(のり)の佃煮]入れといて良かったよ」


「何入れちゃってんの!?」

…………


メリークリスマス☆

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― 新着の感想 ―
[一言] 読ませて頂きました。いいですね。こういう話、個人的に好きです。ほんのりと、爽やかな読後感に浸らせて頂きました。  こんな話って難しくて書きづらいんですよねぇ、俺がやったらケーキに毒薬入れさせ…
[一言] 若い二人の様子がとても可愛らしく描かれていたと思います。 お好み焼きみたいなチーズケーキって表現が、不慣れでも一生懸命作ったという事を伝えていたと思います。
[一言] いいですね。やはり甘い。 ライトノベル……というか、小説自体あまり読まないので、一人称視点で描かれている物語は自分にとって新鮮です。 感情の動きがわかりやすい。あっさりとしていて、それでも安…
感想一覧
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