18話 爆発
隼side
「何、、、これ」
目の前に見えるものは後部甲板から火を吹き、大きな黒煙をまいあげる大和と、同時に補給ができないと言う絶望感。
彼が見たものは空戦が終わり、ふと大和を見ると、大きな水柱とともに、大きな爆炎を吐く大和の姿だった。それに、3番主砲塔が大破、更にさっきの爆発で4番主砲塔も大破したらしく、1mmも動く気配がない。いや、燃料の問題もある。九六式艦戦の航続距離は3000km、旧日本海軍主力戦闘機『零戦』、つまり、零式艦上戦闘機と、同じ航続距離なのだが、もうそろそろ燃料が危うい。しかし、大和には今もう着艦出来ないのだ。残るはミズーリしかいないが、、、
〜〜〜ミズーリ・CIC〜〜〜
「艦長!!」
航空甲板の航空機整理員が艦橋の奥深く、CICに駆け込んでくる。
「貴様!!こんなところで何をやっておるか!!今は戦闘中だぞ!!」
艦長が怒鳴る。
「艦長、お言葉ですが彼は航空機の整理を担当しています。何事かあったのではないでしょうか?さらに航空機ともなれば非常事態は必須です。内容だけでも聞かれてはいかがでしょうか?」
副長が冷静に艦長に説明する。この副長の説明、さきほどまで怒鳴っていた艦長も「う、うむ、話だけでも聞こう」と納得するほどに説得力があった。整理員は思わず「あれ?副長が艦長の方がいいんじゃね?」と思ったが口には出さず、状況を説明した。
「大和は敵新鋭戦艦の砲撃を受け、ミサイルが誘爆、更には誘爆によって航空甲板が使用不可能になったことはご存知かと思いますが「さっさとどうなったか言え!!ことを急ぐんだろう!?」失礼しました。大和の上空護衛機であるクロードの燃料と弾薬の補給について許可をいただきたいです」
「さっさと補給すればいいだろう?何をわざわざ聞きに来る必要があるのだ?」
艦長はイライラしているようでつま先を浮かせたり地面に叩きつけたりと、必ずどこかがせわしなく動いている。
「それが、、、さっき我が艦の上空護衛機F6Fヘルキャットに補給したあとなのです。そして、あのクロードに燃料を補給すると、我が艦の航空燃料はスッカラカンになってしまいます」
ぞの言葉を言い終わると同時に敵からの砲弾が装甲部に当たり、艦内に激しい衝撃が走る。艦長、副長、砲雷長、航空機整理員、例外無くその衝撃に思わずよろける。よろけた拍子に艦長は頭を激しく打ち、出血する。
「構わん、補給してやれ、大和がここでやられてはFRDの、いや、アメリカのメンツが立たん」
艦長はそう頭から血を流しながらも、自然に笑いながらそう言うと、副長の手を借りながら立つ。
「了解!!」
整理員が全力で走っていく。
その姿を艦長は見送ると、
「砲雷長!!残り装填時間は!?」
そう叫んだ。砲雷長は苦虫をかみつぶすような顔をしたあと
「残り16秒です!!」
そう告げた。ミズーリは魚雷や、多数の砲弾を受け各部に浸水、又は、穴があいていた。浸水による被害でエンジンが故障するのは、残り13秒ほどと予想されていた。
〜〜〜吹雪side〜〜〜
気づけば、周りに味方機はおらず、眼下には敵の巡洋艦、駆逐艦そして目の前には、未だ多数の雷撃機がいた。燃料計を見る。もうすっからかんな状況。無線を使おうとするが、度重なる空中戦で壊れてしまったようだ。整備不良もあるかもしれない。瞬間、吹雪の顔が焦りに包まれる。
「ヤバイヤバイヤバイヤバイ!!どうする!?大和に戻るか?いや燃料が絶対的に足りない。ならこのまま戦う?無理だもう弾もない。かといって、敵を落とすには対艦用のミサイルと爆弾しか残っていない。どうする?どうすればいい?」
吹雪の顔は青ざめている。3秒後、途端吹雪の顔に余裕が戻る。
「やっぱりこれしかないかなぁ…」
吹雪の頬を水滴が流れる。吹雪は涙を腕で拭うと、笑みに満ち溢れた顔で、対艦ミサイルを全て敵艦に発射。何発か外れたが、今の吹雪には、関係ない(・・・・)。そして、緊急用の電信を打つ。これは敵に傍受される可能性の高い物だ。内容は
『我コレヨリ敵艦二攻撃ヲ敢行セリ』
という短い文。しかし電信はまだ終わらない。右手で電信のツーという音を切らさず打ちながら急降下。そして、海面すれすれで機首を起こし、敵巡洋艦に向ける。さっき、ミサイルがこの巡洋艦だけ当たらなかったのだ。敵巡洋艦からの対空砲火が飛んでくるがスレスレでよけれている。まるで弾自身がよけるかのように。
そして、急上昇。巡洋艦の真上で直角に機首を下げる。途轍もないGが掛かるが気にしない。まだ対空砲火は当たらない。
次の瞬間、大爆発とともに、一機の戦闘機によって、敵の水雷戦隊が壊滅した。
吹雪についてはご都合主義にさせていただきます