2.勧誘
自宅に帰ると案の定、母さんにドシかられた。
2,3発殴られたのはずなのだが、
あの不思議な事件が目に焼きついて離れず、母さんの話は耳に入らなかった。
自分の部屋で思い返す。
あれは、女子高生が正義の味方で犬が悪の手先に違いない。
妖怪や悪魔の類を人知れず倒しているんだ。
格好いいなぁ。すっげぇ、中二病が疼く。
僕もあんな風になりたいなぁ。
さぞかし充実しているんだろうなぁ。
僕みたいに暇を持て余していないんだろうな。
基本、ネットとプラモとゲーム、時々、オ●ニー。ダメ人間だ…。
自分の部屋でゴロ寝をしながら、一人妄想する。
ポツポツと雨が降ってきた。
『こんばんは』
僕は、不意に話しかけられた気がして、起き上がる。
『あれ?』
誰もいない。
空耳かと思い、もう一度寝転がろうとすると、コンコンと何かが窓を叩いた。
振り返るとカラスがいた。真っ黒なカラス。
雨宿りでもしているのだろうか。
鬱陶しいなぁ。
僕が、押入れにしまっている竹刀で追い払おうとすると、
『そんなに邪険にしなくてもいいじゃない。』
カラスがしゃべった。
僕は驚きのあまり、竹刀を持ったまま立ち尽くしてしまう。
『ちょっとしたアルバイトの紹介。中に入れてくれると嬉しいな。』
僕は、言われるままに窓を開けてしまった。
カラスは、器用に窓枠から僕の机に飛び乗り、話し出した。
『よっと、今日の件、君も見ていたよね。』
『今日の件!』
ドクン!と心臓の鼓動が弾ける。
『君の力を借りたいんだ。時給も出るし、適性もありそうだし、楽しいよ。』
『僕の力?』
自慢じゃないが、他人様に自慢できる物は何一つ持っていないぞ。
僕は一人、首をかしげる。
でも、僕もあんな風に戦えるのだろうか。
あこがれた正義の味方、ヒーローになれるのだろうか。
『やる!』
僕は、即答し、カラスは笑った。
『やる気あるじゃない。ようこそ、黒連へ。
公共の敵へ。歓迎するよ。』
『えっ?どーゆー…』
僕は、目が点になる。
こうして、僕は、悪の手先になった。
ちなみに時給は5000円~だそうだ。