ましろの海
掲載日:2012/06/17
練習なう。練習なう。
『わたし、ここでずっと待ってるの。』
誰を?と聞けば少し困ったように笑った
『んー、わかんない。でも待たなきゃいけないんだ。』
わからないなら一緒に帰ろう。そう言えば君は、
『無理だよ。だって私はここから動けない。』
毎日、夢を見る。
出てくるのはまっしろな海と一人の女の子。
薄い金色の髪と赤い瞳。
失った誰かを思い出される色彩が恐ろしくて、赤い瞳から目をそらして覚める。
「また、か。」
知らないはずの少女に、夢の中の自分はいつも声をかける。
それはどうしてそこにいるのかとか、君は誰かとかそんな問い。
夢の少女は質問にちゃんと答えを返してくれる。
自分から声をかけて、少女は答えを返す。
けれど今日は違った。
誰かを待っていると言っていた。誰かわからないとも。
一緒に帰ろうと言えば、彼女はあの海から動けないと言った。
「君は、誰なんだろうな・・・」
1年前の今日、恋人を連れて白い海と呼ばれる海岸へデートに行った。
日の光の弱い彼女だから、晴天の日でなく曇りの日を選んで。
海に喜ぶ彼女が振り向いた瞬間
そこで彼の意識は途切れた。
『思い出さなくていいよ。』
『忘れていいよ。』
『幸せになってね。私の分まで生きてね。』
思い出の白い海で、彼女は彼を守り続ける




