誰?
掲載日:2026/06/21
中学生の頃、付き合っていた人がいた。
学校一の美人だった。
別れてからも仲は良かった。
高校に入ってからも、何度か二人で遊びに出かけた。
僕はどこかで、彼女のことを自分の人生のヒロインだと思っていた。
会うたびに、彼女は中学一年生の頃の出来事を振り返った。
初対面のとき、僕が彼女に向かって、
「誰?」
と言ったことをずっと覚えているらしい。
照れ隠しに発した言葉だった。
そんな共通の記憶が、ほのかに嬉しかった。
時が経ち、僕たちは大学生になった。
ひょんなことから、二人で飲みに行くことになった。
その席で僕は、あの日のことを話題に出してみた。
僕が「誰?」と言った日のことを。
彼女はすっかり忘れていた。
ヒロインがヒロインでなくなる瞬間だった。




