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ジュピタル王国英雄奇譚  作者: ヤー子
第二章 ドラゴン辺境編
9/23

国境防衛


夕飯もとらず、ユズは寝てしまって、今日は少し元気がないようだったし、昨日からなんだか様子がおかしいのは心配だった。門限があるはずだが、夜中アレクシスが訪ねてきて、ベッドの端で寝ているユズにため息をつく。

「なんか・・・悪かったな」

「・・・実のところ、彼女には心労をかけてしまっているよな、申し訳ない」

「お前さ、ずいぶん懐かれてるよな。」

アレクシスが見るところ、ジェイドはユズの御し方がうまい。それは目下気になるところではある。こいつが恋敵になる可能性はゼロではない。あのデビュタントで彼が自分からユズをさらっていったことを今も鮮明に覚えている。

「あー・・・年の功だろ、アレクもさ、別に自ら憎まれ役を買って出ることはないと思う。今回のことは実際、どうしようもないことだろ。」

「いいだろ、そういう役だよ、こいつは実際甘やかされるのは慣れてるんだ。」

だけど、泣かせるのは久しぶりだった。

「あんまり意地悪してると、嫌われるぞ?」

「いまさら、こいつ相手に優しくなんてできない」

彼も彼で不器用だよな、とジェイドは肩をすくめた。結婚とか婚約とか、そういう相手にでもなれば優しくできるのだろうか。アレクシスがこの容姿を最大限に利用して、甘いセリフとかが言えたら大抵女はイチコロだと思うのだ。それがユズにあてはまるかは別問題だが、彼らの恋路はユズがアレクシスを男として意識しなければどうにも進展しない。それだけは断言できる。

「そもそも俺は誰に対しても優しさなんて持ち合わせてない」

「嘘だろ、よく考えろ、それじゃあ女の子を口説けない」

「口説かなくても寄ってくる。」

「・・・アレク、それじゃあ関係が続かないだろ?」

「続かせる必要はないだろ。」

その時々で、欲が解消できればそれでいい、とアレクシスは続ける。いつかユズが彼と添い遂げて、幸せに笑っているような未来が来る・・・そのころには自分はたぶんこの世にいないのだが、今段階でその未来が見えなくて、ジェイドは焦る。

「普通、好きな子には優しくしたくなるもんなんじゃないのかな、これも机上論なのか・・・」

ジェイドは自分の感覚がおかしいのだろうか、と考え始める。まれに好きな子に意地悪をしてしまうタイプもいるという。反動行動だ。アレクシスは人に厳しい分自分にも厳しいのだろう。あとは女には苦労しない、そういうところが根っこにあるような気がする。あとはジュピタルの性差とか身分差とかが根本だ。幼いころから一緒にいるとはいえ本来彼はユズを恋い慕える身分ではないのだ。だから彼はなるべく急いで出世しなければいけない、ユズが適齢期になる前に。

「まあ、おいおい考える。アレク、もうちょっとだけでいいんだ、ユズと・・・そうだ!デートしてみろよ。ドラココで、カフェに行ったり、雑貨屋でなんか買ってやったりさ!」

「は?無理、忙しい。」

アレクシスはジェイドの提案を一蹴した。ジェイドは分かりやすく落ち込んだ。アレクシスはきっと仕事ができるのだろう。仕事人間なのだ。この男の考え方にも矯正が必要である。ジェイドはそんなことにヤキモキしている場合ではないとは思うのだが、ユズが泣いてしまっていたし、一肌脱がねばなるまい、そう決心したのだった。


***


昨日夕飯を食べ損ねたから、ユズは腹が減って早朝に目が覚めた。ジェイドが椅子に座って剣を支えにして寝ている。ジェイドを布団に引っ張り込むのはユズの力を持ってすれば容易かった。むにゃむにゃと布団に潜り込む彼をぽんぽんと寝かしつけて、自分はセレスの剣を持って外に出る。空は白んでいるけれど、朝日はまだ昇っていなく、ひんやりした早朝の空気が清々しい。城の裏側に大きな広場があり、ここを馬が駆けたり、ドラゴンが闊歩したりするのだろう。広場の奥に森が広がっている。森の回りにはハルジオンやタンポポ、シロツメクサなどが咲いていた。森を一時間も歩いてさらに東側に抜ければ、ゴツゴツとした岩場があった。歩きにくい岩場は急な坂になっていて、登り切れば大きな川がある。この川がマルス魔法大国との境界なのだと聞いたことがある。

ドラゴンが5体ほど、見張りのように岩場からマルスの大陸を眺めていた。マルスのほうにもドラゴンがいてこちらを見ていた。


「・・・ユズ?どうした、こんな朝早く。ここは一般人は立ち入り禁止だぞ?」

ニコラスがユズを認めてかけよってくる。彼も連日仕事し通しのような気がする。ドラココを代表するドラゴン使いなのに、給金はそんなに弾まないらしい。メアリーにもっと楽をさせてやりたいのだが、それが叶わないのが現状だ。

「・・・ニック、おはよう。アレクと喧嘩した。」

「アレクと?まあ、あれも気が立ってるからな、八つ当たりされたのか、可哀そうに。」

ニコラスは別にユズは自分に会いに来たわけでもないし、アレクとのことなんて聞いてもないのに、支離滅裂なユズの応答に大人の対応をしてくれた。ジェイドもそうだが、少し年を取れば、男の人はこんなふうに優しくなるのだろうか、とユズは不思議に思った。

ユズは、東側から朝日が昇ってくるのをニコラスと眺めた。色のついていない世界が徐々に色づいて行くのがいつみても壮観だという。寝ずの番だが、朝日を見られるのは好きだ、とニコラスは独り言ちた。

ドラゴンが朝日に嘶く。地面を震わせるような鳴き声だ。これがドラゴン辺境だと、ユズは神秘にも似た生命体を見た。朝日に照らされるドラゴンは美しかった。


「ユズ、今すぐ帰れ」

ニコラスは異変を感じ取った。ドラゴンが飛び立つ。マルス魔法大国からの魔砲弾が閃光を上げながらこちらへ撃ち込まれた。それを一匹のレッドドラゴンが飲み込んで、炎を吹き返した。

「奇襲!城に伝達!!」

伝令兵が蜘蛛の子のように散っていった。魔砲弾はいくつも閃光を打ち込み、ユズは戻るよりもマルス国の動きに目を走らせた。

「川岸に船が付きそうだ!」

「くそ、魔法で姿を消してやがったな。兵士はまだか!乗り移られるぞ。・・・ち、ここの兵士、ろくに仕事しねえ!」

だからアレクシスは貴重な存在らしい、彼が寝ずの番にいるときはすぐ兵が来るからだ。

「迎撃したほうがいいのか!?」

「お前は戻れ!ランサーが蹴散らすから、」

ニコラスの背後に黒いフードをかぶった男が現れて、杖を振り上げたのをユズは剣で受けめて、飛び蹴りをする。

「気を抜くな、もう乗り込まれてる!」

「・・・強いってのは嘘じゃねえのか・・・もう四の五の言わねえ、追い払えるなら頼む!」

ユズが飛び出していくのをニコラスは見た。戦う人間を綺麗だと、思うことは初めてだ。朝日に照らされて、次々と敵を屠っていく。剣から緑のオーラが出ていて、彼女の後ろにはうっすら鳥のようなライオンのような生き物がついているように見える。黒いフードの敵は実体がないのか、切り倒したらフードごと消えていく。

「・・・これが、グリフォン・・・って、ランサー飛べ!ウィンドアローだ!」

見とれている場合ではない、ここで敵に踏み込まれたら、ドラゴン使いの名折れである。ランサーは風を操って、敵を吹き飛ばしていく。ランサーはまるでユズを援護するかのように敵に突っ込んでいく。レッドドラゴンもブルードラゴンも、ドラゴン使いの手を離れて、ユズに共鳴するように攻撃を繰り出した。

セレスの剣が緑色に光る。ドラゴンの息吹が剣にまとわりついていく、それを薙ぎ払えば、一振りで敵が相当数飛んで行った。そんなことができるなんて、ユズは知らない、知らないけど、驚いている間はない、ここを通せば、10万都市がある。それだけは阻止しなきゃいけない。魔砲弾がユズに一直線に向かってきた。剣で閃光を受ける。びりびりと、服が破けて、頬にも痛みが走る。ニコラスが何か叫んでいるが聞こえない。受けきれずにじりじりと押されて、ユズは弾き飛ばされた。

「バカ、お前、バカ!!」

ニコラスがランサーに乗って、ユズの弾き飛ばされた場所に風の壁をつくって、そのまま回収する。ドラゴンに乗って、空を飛んでいた。

「なんつー戦い方するんだ、心臓が持たねえ!殺す気か!」

魔砲弾の大本をレッドドラゴンとブルードラゴンが制圧した。向こう岸のドラゴンたちが引っ込んでいく。概ねの脅威は去ったらしい。ユズは荒い呼吸をして、その様子を見ていた。


「すっげえな、どんなやつだって思ったら、女の子かよ」

「お嬢ちゃん、ドラゴンに加護もらってんな?しかも複数の加護だ。いやーお見それいたしました。」

「この逸材はドラゴン辺境にぜひとも置いてほしいもんだよ」

ドラゴン使いたちが駆け寄ってくる。ユズの持っている加護はグリフォンだけだ。彼らが何を言っているのかわからない。自分のドラゴンが自分以外の言うことを聞くことがその証だという。その属性の加護をもらっているからなのだという。

「ど、ドラゴンの加護は複数もらえるの?」

「まあ、そうとも言われてはいる・・・かな。伝説ではドラゴンの神が加護を授ければ、最強のドラゴン使いになれるらしい・・・。」

「ゴッドドラゴンは、寿命で死んじまってな。使役するやつもいなかったんだ。もう20年だ。それからマルスがここを頻繁に狙ってくるようになった。」

ドラゴン使いたちが悲しそうに顔を見合わせた。だけどユズが今現れて、ゴッドドラゴンの加護が再来したと一番年長のドラゴン使いは興奮したように話す。


***


朝、椅子で寝たはずの自分はなぜかベッドで寝ていて、ユズはいなかった。アレクシスが慌てて部屋に訪ねてきた。

「ユズは!?」

「え、し、知らん」

「どこいった、非常時だ」

「何が・・・?」

マルスに攻撃されている、今から自分は東の沿岸に行く。ユズを見つけ出してほしい、とアレクシスは言いおいて出て行った。ジェイドはセレスの剣に探知魔法をかけていたことを思い出して、居場所を探ってみる。東の沿岸にいるようだ。

「・・・まじかよ」

ジェイドも慌てて、アレクシスのあとを追った。


アレクシスがそこについた時には、あらかた状況は落ち着いていた。

「ニック、状況は!」

「・・・アレク・・・、あの子がやっつけてくれた、でも怪我もしてて、今救護部屋に」

ニコラスはまだ目の前で起きたことが夢心地で答える。アレクシスは救護部屋に駆け付ける。アレクシスに遅れて10分、ジェイドはこれでも頑張って走ってきたのだが、体力バカと比べてはいけない、もう走れない。

「・・・大丈夫か、水飲め。」

ニコラスは途中倒れたジェイドに水を差しだした。

「あの子、すげえのな・・・まだ、俺は何が起きたのか信じられない」

「え、・・・う・・・ゆ、ユズは、無事?」

「無事だ、無茶して怪我して・・・、あっちにいる」

このバカ!一人で敵に突っ込むバカがどこにいる!とアレクシスの怒鳴り声が掘立小屋から響いた。アレクシスは心配しているのだ。わかる、分かるけども、ジェイドもふらふらになりながら小屋へ向かった。


「大体っ、何人いたんだよ、敵は、ただの敵じゃない、マルスは魔法をつかってくる。この沿岸じゃまだ魔法が横行するんだぞ!下手すりゃ死んでた!」

「あ、アレクっ、ストップ、ストップだ。」

ジェイドはアレクシスを止めて、ユズに事情を聴こう、と促した。ユズはいたるところ黒焦げで、頬には大きな絆創膏が張られていた。何がどうなってこんな怪我をするのだ、とジェイドは青くなって、治癒魔法を使った。

「あんた魔法使いなのか、よかったな嬢ちゃん、傷が跡なく治るぞ」

年長のドラゴン使いがほっとしてユズの頭を撫でた。

「・・・力で負けた・・・もっと鍛えなきゃ」

「ありゃあ人間じゃねえんだ、普通はあんなに耐えられねえ、俺だったら瞬間で死んでただろうし」

若手のドラゴン使いは、ということはだ、お前は人間じゃないってことだな、と結論付ける。加護を持っていたってあんな無茶はできないだろう。魔砲弾に剣で挑むなんて文字通り、死にたがりとしか思えない。でも彼女は勝つつもりでいたらしい。恐ろしい女だ。

「ダメだユズ、頼むから俺のいないところで無茶はするな。」

「一大事だったの、ジェイド、私、ドラゴンと一緒に戦ったの!空も飛んだよ、すごかった!」

ユズは恍惚としたように話し出す。キラキラと目を輝かせて。ジェイドはアレクシスと顔を見合わせる。

「可愛いから仕方ないと済ませられることではない。大体なんでここにいるんだよ、一般人は来られないところだ」

アレクシスは幾分か冷静になって事務的に聞いた。

「来てくれて助かったよ、アレク。寝ずの番の兵士が来なかったんだ。彼女がいなきゃ今ごろ、城まで侵略されてたぜ」

「グリフォンの加護、ってところだろ。そういうのを感じ取るらしい。アレクも何か感じたからユズを探したんだろう。」

ジェイドが言う。言われれば例の胸騒ぎを感じて、アレクシスはユズを探したのだ。なるほど・・・とため息をつく。

「アレク、アレクここにいたのか、ごめん、当直が寝過ごして」

兵士が何人かその場に転がり込んでくる。


「・・・てめえら弛んでんじゃねえよ、ここ最近のドラゴン辺境の為体はなんなんだ。鍛えても鍛えてもクソほど上達しねえし、俺がいなくなったらなったで腑抜けてるし。バカにするのもいい加減にしやがれ」

静かに話すアレクシスは本当に怒っているようだった。ユズもこんなアレクシスをみるのは初めてで、ぞわりと悪寒が震えた。

「甘ったれた精魂を叩きなおす。全員訓練場に集合させろ」

兵士たちはまた転がりながら出て行った。

「で、治ったか。」

「・・・ああ、治療は終わった。ユズ、あと痛いところはないか?」

ユズは頷く。

「借りてく。」

ユズはぐいっと二の腕を掴まれて立たされた。強引にアレクシスはそのまま歩いていく。ドラゴン使いとジェイドは、その場に残されて、二人を見送ることしかできなかった。昨日も今日も、ユズはアレクシスに怒られてばかりで、さすがにジェイドは同情してしまう。アレクシスがどうか、少しでもユズに優しくできますように・・・祈っても無駄なのはわかっているが、グリフォンに祈る。

『アレクとユズはあまり相性がよくないんだよ、アレクはオニキスとは相性がいいんだ』

そしてミニグリフォンが気まぐれに出てきた。

「そんなこと言わないで、ユズとアレクが報われるようにさ」

『我に恋の加護はないんだよ、南に、行くといいよ』

「・・・はあい、わかりました」

南のフェニックスは不死鳥。愛と平和の加護があると聞く。

「さて、俺はドラゴンの卵をもらいに行きますか。」

ミニグリフォンは光になって消えていた。



アレクシスは森の中を進んでいく。掴まれた二の腕は痛い。ユズは引きずられるようについて行った。アレクシスは怒っている。また怒られるのだ。ユズのやることなすこと、アレクシスには気に入らないのだろう。ずんずんと歩いていたアレクシスはいきなり歩を止めた。

「ユズ」

「・・・は、はい」

呼ばれて、ユズは神妙に返事をした。アレクシスはユズに向き合って、じっとエメラルド色の綺麗な目を見つめる。

「お前に何かあったら、俺はトパーズ様やオニキス様にどんな顔を向ければいい。」

アレクシスがユズのそばにいるのは、そこからの圧力もある。彼は彼の事情でドラゴン辺境に所在があるのにも関わらず、ユズを探しに来たのだ。こうして手元に置いているような気になっても、それが錯覚だったとアレクシスは半ば焦ってユズに問いただす。ユズに、聞くような内容ではない、それはアレクシスにだってわかっていた。

「・・・ごめん」

「お前のごめんはいつも口だけなんだよ。二度としないって約束しても、そんな約束無意味だ。」

アレクシスはユズの頬に触れて、目線を合わせるように促した。

「どうすれば、分かってくれる?なんで普通の令嬢でいてくれないんだ。お前が剣を取らない道はなかったのか、なあ・・・」

彼が泣き出しそうで、ユズは事の深刻さを理解した。

「心配かけて、・・・ごめん」

でもユズの謝罪は彼には届かない。ユズが何度も約束をやぶったから、信用されていないのだ。

「・・・俺は、どうしたら良かったんだろうな。お前が後ろをついてくる分にはまだ良かったのに。」

一度離れてしまった彼女はどんどん自分を引き離して、飛び出していく。大きな翼を広げて、空を悠々と飛ぶ、グリフォンのように。彼女の自由を、認めてやれないところが、自分の狭量さであるのだと、アレクシスも分かっていた。アレクシスは考えて、ゆっくりと話した。

「ユズ、勇敢なのは、悪いことじゃない。だけど図り間違えるな。自分の実力と相手の実力を見極めなければいけない。それができなければ、必ず誰かを悲しませることになる。」

「はい」

アレクシスは諦めたように少し笑って、ユズの頭を撫でる。

「愛してる、ユズ。お前のことを本当に、大切に思っているんだよ。」

真剣なアレクシスの言葉をユズはその輝くエメラルドの瞳を見つめて、頷いた。やっぱり彼女はこの愛の言葉も、家族に言うようなものと勘違いして聞いているようだ。優しくしたって、結局肝心なことは彼女には伝わらないのだ。ふと手を右耳に滑らせる。

「・・・ピアス、どこにやった?」

「落とした、たぶん、スタジアムで」

「・・・は?失くすなっていったよな。」

「え、ええっと・・・、すごい風で・・・」

ユズは目を泳がせた。アレクシスは盛大にため息をついた。もう、ジェイドの助言は聞かない。優しくしたってこの女はつけあがるだけだ。

「お前ってやつは・・・、人の好意を何だと思ってる」

「ごめん、ごめんねアレク、たくさん探したんだよ、でも見つからなくて、朝はあったの、だからあの怪しいホテルでは、ないと思うの」

「怪しいホテル?」

「あ、やべ」

ユズは口を抑える。ラブホテルの泊まったのは内緒にするはずだった。

「吐け、どこのホテルに行った。包み隠さず吐け。状況によってはジェイドを殺る。どうせ生き返るんだろ、1、2回殺したっていいはずだ」

「いいわけないだろ、落ち着け、アレク」


結局ユズにはアレクシスの追及を逃れる術はなく、ジェイドはドラゴンの卵をもらって無邪気に二人と再会したときに、アレクシスに首を絞められて、三途の川を見ることになったのだった。


***


「ミリアリア!」

アレクシスは辺境伯の一人娘の名前を呼ぶ。見事な赤茶のウェーブがかかった髪の毛をした彼女が振り向く。ミリアリアは上等なドレスを着て、できるだけ可愛くかの人に見えるように、品を作った。

「まあ、どうしたのアレクシス。私を呼んでくれるなんて。」

自分から話しかけることが平生多いので、ミリアリアは嬉しかった。

「三階に空き部屋があるだろ、お前のドレスルームでもなんでもいい、一つ部屋を空けてくれ」

「え?・・・あ、あなたの部屋ならいつでも空けてあるわ。いつでも引っ越してきていいのよ。」

彼が晴れて自分の婚約者になったら部屋をあてがう予定だ。全く打診に頷いてくれなかったはずなのに、今日はその部屋が欲しいとアレクシスは言う。

「グリフォン侯爵家の娘が来てる、そいつに部屋をやってくれ。幼馴染なんだ、もう男と同室とかふざけたことは許されん。ジェイドのクソ野郎が同じ部屋でも変な気なんて起こさねえなんて、須らく無理な話だ、男なら誰だって不能じゃない限り、女と同室で何もないなんて信じられるか。ああ、そうか、去勢でもすりゃあいいのか、その手があった、ちょっと行ってくる」

「あああああ、アレク?どうしたの、すっごい怒ってる?」

ミリアリアは物騒なこと言いだしたアレクシスを一応は宥めてみる。彼の目は血走っていた。本当に人を殺しかねない。でもやっぱりカッコいい。口は悪いが、ミリアリアは彼にぞっこんだった。


「ジェイド、去勢するぞ。それで不問にしてやる」

アレクシスは剣を構えてジェイドを脅す。彼は一応王族である。不敬罪でアレクシスが処刑されてもおかしくない。

「ええっと、勘弁してくれ。子孫を残す機会はもうないかもしれないが、せめて男の矜持は保って死にたい。」

ジェイドは謝り倒すことで、難を逃れることに徹底した。かくしてユズは三階に部屋を確保することになった。



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