VSクリストフ五世
後編スタートです。
王の居場所に心当たりはあるか、とノルンに聞かれ、ジェイドは最後に自分が長兄に会った場所は三階の家族の団欒の部屋だったと思い出す。そこからはウラヌスタリアの市街が一望できる。その場所で兄と別れ、ベリアルと会い、聖獣の加護を持ってくれば国王の身体も返してやるし、国民の安全も保障すると約束を取り付けた。きっとそこだ、と二階、三階への階段を上っていく。
『聖獣をここへ連れてきて、殲滅する方法があるのかもしれない』
ノルンはなんとなくそう思うのだと言う。
「ノルンの勘がそういうなら、そうなんだろう。ここまではまんまと策に乗ってしまっているな。」
だけどジェイドの現状すべきことは、国王の身体を悪魔から取り戻すことだ。そうすることで食われた魂が救済されるのだ。この剣で、一太刀でも浴びせることが出来れば・・・。兄と手合わせして、一回もそうできたことはない。長兄は武に、次兄は魔法に優れた兄弟で、自分だけ取り立てて取柄もなかったが、上を見ているので要領はよく過ごせていたと思う。
階段で上階に上る道中はやはりしんとしていて、魔獣の気配も悪魔の気配もなかった。
三階は全体居住空間になっていて、広いリビングと各寝室がある。リビングのドアを開けると、広い窓からウラヌスタリアの市街全貌を眺める国王の後ろ姿があった。それだけなら、いつもと変わらない兄の面影がある。
「来たか」
声は野太く、兄の声ではない。
「約束を果たしに来た」
悪魔が約束を守るはずがない。
「それで俺を斬ってくれ」
しかしなぜかベリアルは受け入れ態勢だった。
「ここから、自由になりたい。」
「え、もう、怖いんだけど、絶対なんかの罠だよな、え、グリフォンどこ!?」
ジェイドは震えて、ウラヌスの剣を抱きしめる。
『グリフォンはリリス討伐のお手伝いに行ったわ。タマモが今瀕死』
ノルンが蘇生中だと、報告を受ける。タマモは妖怪だ、ちょっとやそっとでは死なないとは言うが、リリスが最強すぎて、ジェイドは震えた。ユズの安否が心配になる。
「あの女は悪魔らしい悪魔だ。サタンの思想をそのまま引き継いでいる」
「あのさ、あのさ、ちょっと待って、お前は違うの、悪魔に悪魔らしいとかそういうのあるか?」
全部悪魔は悪魔だろう。
「俺は別にこの土地に興味もないし、扱いにくい魔力で復活させられて、迷惑している。リリスを食えるからという話だったのに、リリスが俺を食うとか言うし、もうやだ、自由になりたい」
悪魔はなんだか泣き言を言い出した。
「早くそれで斬って、悪魔の世界に戻してくれ」
悪魔の世界では彼は魔王なのだそうだ。
「いやいやいや、お前のせいでこっちは二万弱は被害に遭ってるし!兄貴も食われてそんなすぐに楽になりたいとか、そうは問屋が卸さねえわ!」
「俺を呼び出したのはあの魔女だろ。俺はリリスを呼び戻すための布石でしかない。国の被害に関してはジュピタルの魔力の扱い方が分からなかったんだ、それに誰かの魂を食わなきゃ地上に復活できないし。一応食った魂は冥界に丁重に置いてきたから、それで斬ってくれればすぐ救済される。」
この悪魔は魔力面では特級悪魔なのだが、性格がおかしいと悪魔界隈では定評のある悪魔だった。弱気な魔王様と揶揄されている。しかしそんなことはジェイドが知ったことではない。
「え・・・じゃあ、自分が斬られたいがために俺に加護を集めさせたってことか」
「それはあの魔女の意向だ、俺の可愛い子分たちが実験体にされてしまって・・・悪魔の核をシミカドルにしたんだ。だからそれを食えば、聖獣は死んでしまうぞ。」
「ちょっとまて、ラルフ食ってなかったか」
『ラルフは大丈夫よ、化身の中にとりあえず貯めてるだけ。あの子は美味しいものを最後まで取っておくタイプなのよ。あとで吐き出させるわね』
ノルンはため息をつく。
『オニキスが賢くて良かったわ。何か感じ取ってラルフを制御してくれてる。』
ジェイドはバクバクと鳴る心臓を押さえる。
「それと・・・この城全体がシミカドル化している。だから」
「・・・だから、城だけが無事でいる。で、この城が爆発すれば西の大部分が更地と化すわけだ」
ベリアルは頷く。これは結構深刻な問題である。爆発する前に俺を悪魔界に・・・とか言っているが、ふざけるな、却下だとジェイドは一蹴した。
「お前の魔力と兄貴の魔力を合わせれば、城全体を初期化する時戻しの術をかけれるんじゃないか。そのくらいはやってもらうぞ」
「・・・え・・・悪魔が人間に協力するなんて聞いたことない」
「お前みたいな悪魔も俺は聞いたことねえわ!転移だ転移!兄貴のとこに転移しろ!」
「リリスが俺をここに閉じ込めたから・・・」
ドゴオオオオオンと凄まじい音がして、城全体が揺れた。ベリアルをここに留めている強制魔術が消える。リリスの魔力が消滅したようだ。
「リリスがいなくなった!」
ベリアルの魔力が途端に膨れ上がる。魔力の増大に伴って、影が悪魔の形になり、その影から、ベリアルはエルドラドを召喚した。
「転移じゃなくてまさかの召喚!?」
「ジェイド、これは一体どういうことだ」
いきなり呼び出されたエルドラドは咄嗟にジェイドを後ろに庇い、フェイト王の姿をしたベリアルに杖を向け、魔法のシールドのようなもので包んでしまう。
「兄貴、この城が全体シミカドル化してる。だから、なんとかならないか。魔力が足りなかったら、こいつが補助する。」
「なら、メリッサを捕縛してから」
「何が起爆のきっかけになるか分からないんだぞ、」
「メリッサが起爆したら、この城も爆発する」
ベリアルが言う。メリッサ自身もやはりシミカドル化しているようだ。自分の命など、顧みていない。最初から捕縛は困難だったのだ。
エルドラドはベリアルを完全に信じていいのかは分からなかった。だけど、四の五の迷っている暇はない。
「ジェイド、」
ザクっと白銀の美しい髪の毛を襟足からエルドラドは切り離し、ジェイドに投げた。
「これは大事に持っておけ」
「え」
ドスっと杖絨毯に突き刺す。この魔力で、国を守れるのなら、そのためのこの魔力量だったのなら、たとえ命が尽きても構わない。
リビング全体が青い光に飲み込まれ、そこから城全体に光が広がっていく。
***
アレクシスはクリストフと一騎打ちの場が設けられていた。とはいえ平原で周りにシールドがあって、他の攻撃が当たらないようにされているだけなのだが、アルベルトはほかの魔装兵がメビウス国境へ向かうのを食い止めている。
だけどこれで目の前の相手に集中できる。体格もそれこそ家格も名声もすべてが格上の相手である。魔法も使えば、剣や鉾も自在だった。アレクシスは剣一本だ。それだけでここまでのし上がってきた。これからも留まることなく、精進する。打ち合いの末、何度か急所を貫いたり、頸動脈を断ち切ったりしたが、やはり絶命はせずに立ち上がる。何度殺せばいいのか、アレクシスは数えるのはやめていた。
クリストフの息は上がっている。
「素晴らしい集中力だな、まったく隙が無い」
攻撃に転じようとすればねじ伏せられ、防御もままならない猛攻が浴びせられる。純粋に美しい剣技に、クリストフは惚れ惚れとしている。その余裕しゃくしゃくな様子にアレクシスはいらついた。しかしそれは相手の策だと冷静になる。
「俺は魔法も使えるぞ」
シールドが外からの攻撃を遮断するように内側からも出口がないのか、それに乗じて、足元から水が溜まっていく。
「・・非魔法族なら、水で呼吸できる術がなかろう。」
水は膝まで来て動きも鈍くなる。腰から真二つに切り裂くが、すぐに光って再生される。思うように動けないアレクシスと変わり、水をものともしない足裁きでクリストフは斬りかかってきた。ついにアレクシスは防戦体制になった。
「くそ・・・」
ぎりぎりと力で押される。水はもはや腰まで到達している。足を払われ、頭を押さえられ水に押し付けられる。
「クハハハハ!水攻めも悪くないな・・・喜べ、俺は苦しんで死なせるのが好きなのだ、ひと思いで死ねると思うな」
さすが、非人道的な嗜虐の男と呼ばれるだけある。こんなところで死ぬわけにはいかない。アレクシスは水中から心臓目掛けて剣を突き刺した。ぐいっと頭の手首を外して捻り、相手の腹を蹴り上げて、形勢を逆転する。水はもう首あたりまで来ていて息を吸って水に潜った。鎧のおかげか沈むことができる。この男はもう、人間ではない、ちがう生き物だ・・・とアレクシスは直感で分かった。そういうものの弱点は総じて首であるということも知っている。水中の中で、魔砲弾が飛んでくる。腹をえぐって、血が出たがアレクシスはクリストフに近づいて行く。首を完全に胴体から切り離すこと。目的意識がはっきりすれば痛みなど些末だ。相手の鉾が地上と変わらない速さと重さで降りかかってくるのを切っ先の手前の柄を掴んで止め、剣をその首に突き刺した。真横に引き抜いて、夥しい血を流して首だけが水中に浮く。クリストフの手が、首を追う。その手も切り落として、ごぼっと息が限界になった。
シールドが解除されて、水が平原に飛び散った。
「アレクっ!」
倒れてはいけない、まだ、相手は死んでいない・・・。
アルベルトは攻撃魔法でクリストフを吹き飛ばして、アレクシスの腹に止血の魔法を当てて、万病治療薬を口に含ませる。
「・・・俺もたいがい残酷だな・・・こうやって何度もお前を戦いの場に引き摺り出して」
「気に病むな、まだやれる」
アレクシスは立ち上がる。剣を取るくらいしか自分にできることはない。ジェイドの国を、国民を守る。だからここを通すわけにはいかないのだ。クリストフは首を胴体につなげて、にやりと不敵に笑っていた。
「別動隊が俺だけとは限らんぞ」
「・・・空中ならドラゴン使いに・・・・」
アルベルトは盲点だった、と顔を青くする。地下都市は王城とつながっていて、メビウスに直結しているのだ。
「アル、行ってくれ。俺はこいつを片付ける。」
アルベルトは頷いて、転移した。
***
メビウスの国境はメビウス兵とウィザードランドから来ていた魔装兵が対応していた。負傷者の救護はシャーロットやカサブランカを筆頭にした王家関係者が動いている。
「大丈夫かっ」
「地下通路からたくさん敵が来てっ」
地下に避難していた国民はまたメビウス国境まで避難していた。
「すまない、妖精兵も加わる」
フェニックスが飛んできて、負傷者に治癒の加護をくれる。
「持ちこたえてくれ!」
アルベルトが加勢して、魔装兵押し返していく。
「見て・・・城が・・・」
青く染まっていくのをカサブランカが指さした。青い光は時戻しの魔法だった。
***
エルドラドの髪が銀色のものから黒髪に変わっていく。もう魔力量が枯渇し始めている。
「おい!援護しろ」
「・・・・お前の兄に魔力をやればいいのか、俺も戻し魔法をかければいいのか、どっちが」
「ここに来て優柔不断とか、そういう要素いらないだろ!どっちもやれ!迷ったらどっちもやるのがおすすめだ!」
ジェイドがそういえば、ベリアルは大人しく従った。エルドラドは魔力が戻ったことに驚いたし、戻し魔法もスピードが上がって、東側は完了し、西側に着手されていく。
「ジェイド・・・悪魔と契約でもしたのか」
「いいから集中!とにかくシミカドルを無効化してくれ!」
バタンと扉が開いて、ユズとセドリックが来た。状況は分からないけれど、ユズはセドリックと顔を見合わせて、
「兄上のほうが援護がいるかも」
「一緒に行くか」
「俺も行く!」
転移の術で消えそうになるのをジェイドは飛び込んだ。場所は西側の地下のようだ。
悪魔がうじゃうじゃと次から次へと生成されていく。それが出てきているメカニックを斬ろうとしたが、はじかれた。
「防御魔法か・・・解呪してみる。」
ジェイドはいそいそ術式を書いて、剣で魔法を使う。セドリックがドガンと圧力で潰せたから解呪は出来たのだろう。ユズはもう悪魔を出てきたそばから切り伏せていた。
そのメカニックが見たところ三十台はある。
「ジェイド!来ていたのか!聞いてくれ、オニキスが横暴だ!」
「うるせえ、エルを見失いやがって!なんのためについて行かせたと思ってやがる!」
オニキスとラルフは互いに悪魔を排除しながら喧嘩していた。リンファはくたくたで陰で休んでいるようだ。ジェイドはリンファに駆け寄って、治癒魔法をかけた。
「あ、ごめん兄貴は俺が呼び寄せた。」
『ラルフ、ちょっとは聖獣界に報告して、情報集めしてよ。私は流してるわよ』
「聖獣界は好きじゃない」
「お前は聖獣だろうがよ!」
オニキスはゴンっとラルフを殴る。ラルフも応戦しようと目を光らせる。
「喧嘩してる場合か!オニキス殿、この悪魔の核ってシミカドルの成分でできているそうです。あと城全体がシミカドル化していて、今兄が無効化させる魔法を城全体にかけてます。」
「・・・この城の規模で爆発したら国どころじゃなく、西の大半が終わるな」
ジェイドは頷く。
「で、ラルフは集めた核は全部吐き出せ。食ったら死ぬ」
「シミカドルごとき、俺の敵ではないぞ。」
「そうよ、ジェイド、妾が食えば無効化できる。」
「え・・・だってゴッドドラゴンが食えば死ぬんだろ?」
「ドラゴン、フェニックス、グリフォンと妾の違いは分かるか。ラルフなどと並べられるのは遺憾だけど、代替わりしない聖獣はやはり長年生きれるだけの器がある。ラルフは悪食だしの」
「誰が悪食か。俺にとっては美食だ。」
ラルフはだけどタマモが怖いのでオニキスの背に隠れていた。
「本当か、なら、任せていいのか・・・シミカドルを排除してほしい」
ジェイドは言う。悪魔の核なら、ユズやオニキスの剣でも無効化できるので、その方法もある。だけど本当に数が多いのだ。生成メカを止めるためにジェイドはリンファと協力して防御魔法を解呪して、セドリックが軒並み破壊していく。フェニックス以外は集まっているので、バジリスク・ドラゴン・妖狐そしてグリフォンが聖なる光を掲げれば悪魔が相当数消え失せた。
シヴァルーナが多数オニキスとユズを囲んだ。
「オニキス、ずいぶん似たお嬢ちゃんを連れているね」
「オニキス、はやく楽になりたい」
「オニキス、今日はどうやって遊ぶ?」
と口々にオニキスに話しかけて来る。
「この悪魔って、兄上のこと好きなのかな」
「さあ。」
当の本人は無関心である。額の目が少し泣いているように感じた。そういう情のようなものはきっと戦いにおいては要らないものだと、ユズはわかってはいるが、泣いているのは可哀そうだ。
「やるぞ」
「はい」
オニキスの太刀筋は迷いがなく、数分の違いもなくシヴァルーナの額の目をえぐり出す。それをユズが叩き切っていくという連携だった。最後の一体は宙返りして、オニキスの剣を避けた。
「オニキス、ありがとう、楽しかった」
「そうかよ、あばよ」
オニキスは額の目ごと、悪魔を一刀両断に切り伏せた。
地下も青い光に包まれていく。エルドラドがベリアルと転移してきた。ベリアルはおどおどとしていて、おおよそ王様の格好には不相応な態度であった。悪魔界では魔王のはずなのに、悪魔界は大丈夫なのだろうか。ジェイドは兄の格好で格好つかない感じはやめてほしいと思うが、兄ではないので仕方がない。
「オニキス、この最上階だけが魔法がかからない、おそらく」
エルドラドは確信していた。そこにメリッサがいる。
***
クリストフは死への恐怖がない分、太刀筋も大振りで、隙もあり、アレクシスからしてみれば、討ち取るのは容易かった。きっと彼本来の武人としての矜持などはもはやないのだろう。
ただやはり首は弱点のようで、そこだけに防御魔法をかけて、簡単には倒せないようだった。
アレクシスは撃ち込みながら打開策を考える。炎の斬撃が飛び、水攻めの次は火攻めと言わんばかりに平原の枯草に火がついていく。風が吹いているから燃え上がるのも早い。
クリストフが踏み込み、その剣を柄の部分で受ける。ミシッと力が加わり、アレクシスは力で押されていく。ビキンと嫌な音がして、根元から剣が折れ、その勢いでアレクシスは十メートルほど飛ばされた。ここまで持ち応えただけでも及第点だ。相棒を捨て、ぶらぶらと手首を振る。
「無様だな、剣を失った剣士に何ができる。」
ここぞとばかりにクリストフは切り込んできた。アレクシスは避けるに徹する。周りが燃えているから、避けられるのも限りがある。あたりの温度も上がって来たのか、つうっと汗が零れ落ちた。クリストフは剣の持たない相手を攻撃するのが楽しくて仕方がない、と笑いながら剣撃だけでなく、魔法も繰り出してくる。攻撃魔法は当たらなければ大したことはない。当たらない魔法と剣にクリストフは苛ついてきたようで、その顔から笑顔がなくなっていく。クリストフからも滝のような汗が噴き出ていた。体調でも悪いのだろうか顔色も良くない。
ふ・・・とアレクシスは笑う。
「ここからがむしろ真骨頂だろ」
アレクシスは鎧を脱ぎ捨てて、汗をぬぐった。
剣技の優れているだけがグリフォンの戦士ではない。アレクシスは魔砲弾を避けながらクリストフに近づいて行く。
「素手で挑むか、無謀というものだ」
「無謀かどうかは、食らってから言ってみろ」
大振りの太刀を避け、その手目掛けて痛烈な蹴りを入れる。汗のせいかクリストフの剣はたやすく手を離れた。息つく間もなく、顎を思い切り殴る。クリストフはアッパーをもろに食らって脳天が揺れた。こんな経験は今までにない。ただの拳ではない、グリフォンの拳である。ふらふらとよろけて目を回して倒れた。
意外と剣よりも有効かもしれない。クリストフは体術の心得はないようだ。そして剣を飛ばしたからか、首の防御が無防備になった。クリストフの剣が杖の代わりだったことを思い出す。
「小癪な小僧め!やめだ!貴様はぶち殺す」
嗜虐思考を切り替えたらしい。立ち上がったなり鉾を振り回し、突撃してくる。しかし脳天を揺さぶられた代償は大きかったらしく、振り下ろした先はてんで違う方向だった。アレクシスは背後から、クリストフの首に腕を回し、足を腹のほうと背のほうで挟み、思い切りねじりながら背のほうへ引き倒し、地面に頭を沈めた。ボキボキと人体から聞こえてはいけない音がして、クリストフは聞き苦しい悲鳴を上げて、白目を剥いて倒れる。アレクシスは満足しなかった。クリストフの剣を持ってきて、首と胴体を切り離した。燃え盛る火が消えていく。クリストフは死んだようだ。
アレクシスは魔石でジャスティスを呼び出し、メビウスの国境を目指した。




