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「……点検終わりました」


「ありがとう~みんな!開会式まで休憩しようか!」


リーダーが声をかける。


試合前の点検が全て終了したことの合図だった。


魔導具は数が多く、魔導装置は精密さが要求される。


そのため丁寧に何重にもチェックをし、気づけば開会式直前まで作業していた。


しかし、魔導具に関しては配布後、試合前にもう一度チェックする必要がある。


身に着けた状態で誤作動を起こしたら、人命にかかわるためだが、このあとも作業が続くと思うと気が重い。


この役割は仕事量の割に責任も伴うので、かなり不人気であることを、作業中に聞いてしまって後悔している。


もし、次があるならば断わろう。


そう決意した。


近くにあった椅子に腰かけ、水分補給を行う。


他の生徒は、やり切ったと晴々としている。


周囲との疲労度の差にさすがに恨みがましく思った。


代表選手も続々と集まり、作戦会議やら、体調確認などを行っている。


眺めているとその中から一人抜け出して、こちらに歩いてくる人影を見た。


「お疲れ。かなり疲れてそうだが、大丈夫か?」


ウォルターだった。


顔を上げるのも億劫だったが、何とか持ち上げて、ウォルターの顔を見る。


「うん……疲れた」


「だいぶだな」


苦笑して隣に座ってくる。


沈黙もほどほどにウォルターが口を開く。


「ガーディアン・ブレイク、出場するんだ」


「知ってる」


「レイフと一緒にやるよ」


「うん」


一拍置いて、ウォルターがこちらを見た。


「観ていてくれるよな?」


期待の眼差しに、微笑む。


「……分かった」


返事を聞くと嬉しそうに笑った。


「ありがとう!評価、頼むよ」


開会式があるからと、ウォルターは代表選手の輪の中に戻っていった。


開会式は、代表選手のみが並ぶ決まりとなっているので、補佐は裏で準備を継続していて構わないし、休憩していてもいい。


暫くは動けそうにないなと背もたれに身を預けて、目を瞑った。


「おい、寝てんのか?」


その声に目を開ければ、アウロニスの顔が視界に入ってきた。


「何?」


そのままの状態で返事をすれば、怪訝そうな顔をする。


「疲れてんな」


「……重労働したあとだよ」


「ふーん」


興味もなさそうに隣に腰掛けてくる。


自然な様子に煩わしさは感じない。


「開会式は?」


「出るよ。ちょっとした暇つぶしだ」


自然に息が漏れる。


「アウロニスは今日、何も出ないんだっけ?」


二日目に行われる、フラッグ・ドミニオンにだけ参加する予定だったはず。


確認すると、軽く返された。


「だから、開会式終わったら、暇だな」


疲れている人間の隣でいうセリフとしては、かなり煽ってきているとしか思えない。


「補佐、手伝えば?」


「はあ?俺はそんなガラじゃねえ。そんなことする暇あったら、寝る」


その発言には流石に苛立ちを感じて、投げ出されている脛を思いっきり蹴った。


「いっ!」


「もう開会式始まるから、行ったら」


睨みつければアウロニスは顔を歪めて立ち上がる。


「上等だ、こら!開会式終わったら、覚えてろよ?」


凄んで去っていった。


こういうときはさっさと逃げるに限る。


試合前の検査室へと、疲労度の高い身体を叱咤して歩き始めた。


『これより、第52回 三校連合戦術競技会を、始めます!』


大きな歓声が大闘技場を揺らす。


それと同時に小さな悪意が舞台の裏側で、燃え広がっていった。



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