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アウロニスは高く飛び上がり、木刀を上段から振り下ろす。


速い、が目で追えないほどではない。


半身を後ろに移動させ、体の横スレスレを空を切りながら木刀が通り過ぎる。


地面に当たる前に軌道が変わり、真下から木刀が襲い来るのを予測し、斜めに木刀を入れ込むことで軌道を逸らした。


更に追撃で1合、2合と切り結ぶもしっかりとした体感で隙を見せない。


騎士試験を突破しただけある。


相手が互角ならば、数合打てば、勝ち目があったかもしれないな。


他人事のように考えて、頭上から振り下ろされる木刀に鍔を食い込ませ押し返した。


「なっ」


予想していなかったであろう声が聞こえたが、アウロニスはすぐに体勢を立て直し木刀を構えようとする。


しかし、既にシリウスは深く重心を落としアウロニスの足元に踏み込んでいた。


「遅い」


左手に持ち替えた木刀を、アウロニスの横腹を狙って左一文字で打ち出す。


アウロニスは辛うじて木刀を間に入れたが、重たい一撃は避けられないと悟ったようで、体を自ら転がすことで力を流していた。


追撃はせずに木刀を振って、アウロニスに半身を向ける。


右わき腹を押さえて地面に片膝をついているアウロニスだったが、息を整えて木刀を中段で構えなおした。


「左に持ち替えやがって」


悪態を吐く元気はあるようだ。


「いいよ、かかってきて」


「余裕ぶっこいてんじゃねーよ!」


飛び上がり上段から振り下ろそうとするアウロニスに、顔を顰めた。


「動きが一辺倒」


木刀を両手で掴み、頭上でアウロニスの木刀が地面と水平になったタイミングで真横から叩く。


勢いがダイレクトに伝わったのか、アウロニスの体はぐらりと傾いだ。


そのまま地面まで叩きつけて落とす。


何とか着地をしたアウロニスの真横に素早く移動し、うなじめがけて木刀を振り下ろした。


受け身も取れずにアウロニスは地面へと顔を叩きつけられ、反動で顔が跳ね上がる。


大きく3歩下がって、残心を取った。


「うわ、痛そう」


「速すぎて見えないんだけど、どうなってんの」


周囲の声が耳に入ってくる。


ふっと一息ついた。


起き上がらなければ戦闘不能で終わりだなと考えていると、アウロニスはうめき声をあげながら、ゆっくりと体を起こす。


気力だけは一人前だ。


「くそっ当たらねえし、はええ」


悔しそうに鼻血まみれの顔を歪める。


整った顔が台無しになっていた。


「まだ、やる?」


降参を促したつもりだったが、キッと睨み返される。


「ったりめーだ」


肩を竦めて、木刀を振った。


「わかった」


体感で7分ほど経過しているので、後3分ほどか。


アウロニスは体を木刀で支えながら立ち上がり、構える。


先ほどまでの綺麗な構えではないが、しっかりと柄は握っていた。


「認めて、やるよ、シリウス。お前は、強い」


「どうも」


「でも、やっぱりムカつくから、一発食らわせるっ」


アウロニスがぐっと手に力を籠めるのが分かった。


その気迫に、ドレイクの顔が重なる。


思わず、口が緩んだ。


「何笑ってんだよ!」


今までと違いアウロニスは腰を低くして突貫してきた。


しっかり両手で握りこみ、一文字を繰り出す。


半身を下げて、木刀を下向きで縦に構え受け止めるも、その重さに体全体に力が入った。


これは、今までで一番良い一撃だ。


「すごいな」


素直に感心し、更に力を込めて押し返す。


アウロニスはその力を利用して、右に回転し、左から袈裟斬りを打ち出してきた。


対抗して素早く左回転をし、下から木刀に叩きつける。


更に軌道を変えて打ち込んでくる袈裟斬りに、木刀を滑らせ鍔にひっかけて捻じりこんだ。


アウロニスは苦々しい顔をして、必死に手に力を入れているようだが、敢え無く手首を返される。


手が緩んだ。


その隙を見逃さず、手首に木刀を叩き落とす。


アウロニスの木刀が落ちていくのを眺めながら、これで終わりだなと考えていると、不穏な気配がして咄嗟に顔を後ろに引いた。


チリッと頬に痛みが走る。


アウロニスの足が、眼前を通過したのだ。


あの体勢から繰り出されるとは予想外だった。


油断もあったかもしれない。


重力に従って倒れていくアウロニスを目で追うと、ニヤリと笑っていた。


「当たったぞ」


「試験終了!」


教師の終了の合図の一拍後、大きな歓声が沸き起こった。


鼓膜を揺さぶられるのを感じながら、アウロニスに近づく。


「アウロニスの勝ちかな」


手を差し出せば、アウロニスは片眉を上げながら、手を握って立ち上がる。


「次は絶対ボコる」


「楽しみにしてる」


ふっと頬を緩めれば、アウロニスは舌打ちをした。


「負けた奴の顔じゃねえな」


「試合に勝って勝負に負けるっていうあれだ」


「腹立つな、その余裕」


「アウロニスは顔ボロボロだな」


「言ってろ」


いてて、と顔を顰めるアウロニスに重なるのは、誰の面影だったか、思い出しそうになり目を瞑った。


今、あいつの顔は思い出したくない。


「おい、どうした?」


「大丈夫」


下から覗き込んでくるアウロニスに、顔を背けて返事をし、ステージを降りた。


かくして、Sクラスの騎士科試験は終わりを迎えた。



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