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魔導列車の中は、貴族の屋敷に近い豪奢な造りだった。


「流石、魔導列車ね。高額だから、私は初めて乗ったわ」


ベローナが紅茶を片手に、ソファのような高級座席を噛みしめるように、背中を預けている。


その隣には今回の大会でペアに抜擢されたケイリアが、同じく優雅な所作で紅茶を嗜んでいた。


「私も数回程度ですが、屋敷のように寛げてしまいますね」


にっこりと笑ったケイリアを一瞥し、窓を眺める。


凄まじいスピードで景色が通り過ぎていく様は、圧巻の一言だった。


「すごい速いでしょ?もちろん、シリウスは初めてだよね」


「うん」


ある程度事情を知っているレイフが、ひょっこり顔を出してにやけ顔を浮かべている。


それには素直に頷いた。


「あ、それ俺が食おうとしてたやつだぞ!」


「早い者勝ちでーす」


通路を挟んだ隣の席では、アウロニスとサイラスがお菓子の取り合いをしている。


それをウォルターは溜息を吐きながら傍観に徹していた。


「相変わらずだな、君たちは」


呆れているところを見るに、この3人は古くから付き合いがあるのだろう。


「景色だいぶ変わってきたね」


レイフの声にまた窓に目を向けてみれば、建物の様式が変わってきたせいか、景色の雰囲気もガラリと様変わりしていた。


「なんか、魔導具が多いな」


「正解!」


レイフは嬉しそうに指を鳴らす。


「俺たちが向かってるリミナはさ、隣のビスルリア帝国の影響で、技術面でかなり発展してるんだよね!だから、魔導具を使った身近なものや、建物が多いってわけ!大闘技場なんか見たら、口が塞がらなくなるよ~」


今はトライアーク・コンフリクトが行われる『アストラ・グラディウス大闘技場』を中心に栄えた、『アストリアル』という大都市に向かっている最中だった。


ビスルリア帝国との境界ということもあり、通称『リミナ』と呼ばれているらしい。


「ビスルリア帝国は一度だけ行ったことがありますが、かなり過ごしやすい都市でした」


「そうなんだ?一度でいいから行ってみたいわ」


ケイリアとベローナも話に参加しつつ、レイフが続ける。


「ビスルリア帝国は産業先進国だからね。一度は行って経験したいよね」


「そんなに違うのか」


「違う違う。もうあらゆるものが魔導具だから、楽しくてしょうがないよ、ね?ケイリアさん」


振られたケイリアは軽く返事をした。


ケイリアとレイフの2人がビスルリア帝国の思い出を話し合い、それにベローナが質問をするという構図が出来上がる。


その声を聞きながら、背もたれに深く身を預ける。


学園での生活は初めてのことばかりだ。


楽しそうな6人を視界に入れながら、目を閉じた。



――――――



「おーい!シリウス!起きて~」


揺れと音で意識が浮上する。


目を開けると、レイフの顔が視界を覆いつくしていて、その顔をグイっと押し返した。


「邪魔」


「起こしてあげたのに~」


「ぐーたら寝てんなよ。さっさと行くぞ」


アウロニスに急かされる形で、魔導列車の出口へと向かう。


魔力による微細な振動を背後に、駅へと降り立った。


胸に僅かな圧迫を感じながら、外へと歩を進めると広がったのは、視界に収まりきらないほどのドーム状の建物だった。


「ついたー!」


レイフが大きく伸びをする。


王都よりも人の往来が激しく、良く見ると観光客と思われる他国の人も多い。


色とりどりに光る街灯に、動く階段、空を飛んでいる小型魔導具が平然と街並みに溶け込んでいる様子は、別世界に迷い込んだようだった。


「本当にすごいな……」


思わず出た独り言は拾われなかったが、殆どの生徒が同じような反応をしている。


「今から、宿泊施設へと移動します。はぐれないようについてきてください」


教師の指示に従い、ぞろぞろとアストラ・グラディウス大闘技場を迂回するように歩いていくと、宿泊施設が立ち並ぶエリアにたどり着いた。


その一つの建物に教師が入っていく。


自動で動く扉だった。


「これも、魔導具か」


「すごいよね。楽しいでしょ」


隣を歩いていたレイフに言われて、頷く。


構造を考えるだけで楽しい。


純粋に来て良かったと思った。


「さっきまで寝てたけど、裏方ってそんなに忙しいの?」


宿泊施設の受付をしに教師が向かっている間、代表選手と補佐役は待機となり、荷物などの準備を行う。


手荷物は先に送っているので、実質休憩だった。


レイフの質問に、曖昧な返事をする。


「そんなところ」


競技用魔導具・装置検査補佐の役割は、その魔導具の構造を当日までに把握することが課題となっていたが、すぐに覚えてしまったので、そこまで忙しくはなかった。


疲れは別のところからだった。


ドレイクに渡された、首にかけるタイプの魔導具を服の上から触れる。


国王陛下からの命令でつけることになった、体内魔力保有値異常検知魔導具。


今後、学園に通い続けるための条件として、この魔導具を常に身に着けていることが義務付けられた。


日常生活で排出される量とは明らかに違った魔力の流れを検知した場合に知らせを届ける魔導具の、対個人用。


要するに、勝手に魔力を使うなということだ。


魔力を使用した場合は、その日の報告書に詳細を記入してドレイクに提出する決まりとなっている。


異常な体力の消費でも、魔力が揺れ動くので検知される。


これに慣れるための疲労感で、魔導列車内で寝てしまったのだ。


大きく溜息を吐く。


隷属契約の魔法陣とも干渉してしまうため、疲れは今まで以上に、すぐにきてしまう。


未だに押し寄せてくる眠気と戦いながら、程よい涼しさの冷房を肌で受け止めていた。



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