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補佐役会議が行われる教室に入ると、中は喧騒に包まれていた。


既に、4年生から2年生の役割は決まり終えているようだ。


2年生と教室の扉の前ですれ違った。


奥の座席を確認してそちらに向かうと、デインとライラが座っている。


「シリウス君、こっちです」


手を上げて、自分の隣の席を示す。


そこに座って、声をかけた。


「ライラも補佐するんだな」


「……はい」


何気なく言った言葉だったが、ライラは目を合わせず、か細く返事をするだけだった。


それを言及することなく、机に用意されていた補佐役の資料をぱらぱらと捲る。


「あ、始まりますね」


デインの声で壇上に目を向ければ、2人の教師が立っていた。


内一人は補助として控えるようにザカリー教授が立っている。


錬金学科の教授だ。


「……ザカリー教授か」


思い出すのはデインの不正騒動。


あの事件以来、大きな関わりもなく、教師と生徒という立場で接している。


「1年生の補佐役に応募してくれてありがとうございます。私はこの大会の運営責任者の、オットー・ルートヴィヒです。この大会の安全管理責任者であるザカリー・マイロ教授と共に、この場を仕切らせていただきます」


柔和な口調で教室内に声を響かせる。


紹介に預かったザカリー教授は軽く一礼するだけに留めた。


「それではまず、トライアーク・コンフリクトの補佐として同行する際の注意点を軽くお話しします。詳しいことは資料にまとめましたので、一読しておいてください」


1、3泊4日の旅程すべてに同行すること。

2、大会の妨害行為は一切禁ずる。発覚した場合は、即帰還、処罰を与えるものとする。

3、補佐役の役割は、円滑な大会運営と、出場者の安全管理を目的とする。

4、他校の生徒とのトラブルを避けるため、接触は控えることとする。ただし、宿泊施設内での給仕や控室等への案内はその限りではない。

5、補佐役の生徒は全員、個別の役割とは別に、代表選手等の体調や、魔導具等の異常が見られた場合は即座に報告をすること。


つらつらと書かれている注意事項を眺める。


オットー教授はその中から重要なものだけを声に出して列挙した。


「以上です。また分からないことがあれば聞いてください。では次に役割分担をしていきます。人員には限りがありますので、定員を超えた場合には、話し合いを設けることとします。また全員が役割を行えるわけではないので、もし役割が決まらなかった生徒は今年の同行は諦めていただくことになります」


それに、疑問が浮かんだ。


人手が足りないから教師が推薦してきたと思ったが、どうやら違うようだ。


ボードに描かれていく定員の数は明らかに、この教室に居る人数以下を示している。


オットー教授は宿泊施設の滞在人数の兼ね合いだと付け足していたが、かなり逼迫しているということだろうか。


意図が読めず、困惑している間も進行は続いていく。


「では、まず一番重要な、運営補助から決めていきたいと思います」


試合進行の管理・補助がメインの大立ち回りが必要な役割だった。


説明を聞く限りでは、主に教師が取り仕切るのでそれの雑用という感じらしい。


オットー教授が人員を募ると、ほぼ半数が手を挙げた。


デインもだ。


「では定員より多いので話し合いとさせていただきます」


そして、話し合いという名の振り落としが始まったのを横目に、ライラに声をかける。


「これは人気のポジションなんだな」


ライラは少し驚きながらも、ぼそぼそと口を開く。


「そうですね。一番代表選手や他校の生徒と関わることが多いからでしょうか」


つまりは応援が間近でできるということだろう。


応援を目的にしていたデインがやりたがるのも分かる。


話し合いが終了し、デインが戻ってくる。


「やりました!」


嬉しそうなので、それに苦笑を返しておいた。


「次は、安全管理・結界監視の役割の募集をしていきます」


軽く手が上がり、定員以内であったので、あっさり決まった。


「次は、魔法陣・装置等の調整補助です」


内容は、名前通りで、試合用結界魔法陣とその他の安全装置の起動補助・管理だ。


多少知識がないと、やれることは少ないかもしれない。


それにライラが手を挙げた。


ふと、先日の図書棟での出来事を思い出す。


このために勉強をしていたのだろうか。


これもあっさり決まって、次に移る。


残り二つの役割が残っている。


「次は、競技用魔導具・装置検査補佐です」


これもその名の通り、それぞれの試合で代表選手が使用する魔導具の安全管理が主な仕事だった。


そして、これも定員には満たず、次に向かうかと思ったが、そこでザカリー教授が何やらオットー教授に耳打ちをしていた。


視線が合った気がして、眉を寄せる。


何だろうか、じっと観察をしていると、オットー教授がきょろきょろとし始め、目が合って止まった。


「シリウスくん、君はこの役割をやってもらってもいいだろうか」


名指しに驚いたが、周囲も同じようでざわつきと視線が一気に集中する。


いろいろと思うことがあったが、やりたいものがあるわけでもない。


小さく返事をすると、役割分担をまとめているであろう紙に筆を走らせた。


「まさか名指しで来るとは思いませんでしたね」


「……理由は知らないけど、もともとやってほしいとは言われてたよ」


「なるほど、何かシリウス君にしかできないことがあるのかもしれませんね」


デインがにっこりと微笑む。


「頑張りましょう」


最後に緊急対応要員の決定と、二次募集が始まって、ぼんやりとザカリー教授を見る。


黒い影が、少しずつ形になって広がっていくような気がした。



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