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「三校連合戦術競技会。通称『トライアーク・コンフリクト』だよ。知らなかったの?」
大会なんてあるのかとレイフに聞いてみたら、あっさりと答えられた。
「みんな、トラコンって呼んでる。有名だよ?毎年の目玉じゃん」
詳しく聞くと、レローネ学園・ペグシュ騎士校・ラナカル魔法専門校の三校から代表選手を集って、いくつかの種目で競い合い、魔法・武力・戦術の優劣をつける大会らしい。
「俺らの学園は毎年の優勝校だよ」
「へえ……」
「今年も優勝はうちだよね。なんて言ったって、シリウスがいるんだもん」
レイフはにっこりとこちらに笑顔を向けてくる。
近くで聞いていたサイラスも間に割って入ってきた。
「確かにー。今年はアニスもいるし、1年は負けなしだねー」
そこにはアウロニスもベローナもいる。
「ったりまえだ。優勝以外ありえねー」
「でも、ラナカルも毎年強敵だって聞くわよ?」
更にケイリアがひょっこりと顔を出す。
「ベローナさんは優秀ですから、きっとラナカル魔法専門校の方とも渡り合えると思います」
「ケイリアちゃんの方が優秀じゃない」
周囲が騒がしくなっていく。
5人が楽しそうに会話しているのを眺めながら、脳裏を過ったのはドレイクの一言だった。
―――学園は無理かもしれん。
5人との学園生活もそう長くはできないかもしれない。
だったら、そうなっても後悔しないように、大切にしよう。
胸が温かく感じて、自然と頬が上がる。
「シリウスはどの競技に出たいとかある?」
レイフの振ってきた話題に、肩を竦めて返答した。
「俺、出ないよ」
空気が凍り付く。
教室中が静寂に包まれた。
「嘘、でしょ?」
レイフが頬を引きつらせながら、聞いてくる。
それに首を振った。
「本当、出るなって言われたから、出ない」
「誰に?」
「後見人に」
その一言で周囲はざわつきが戻ってくる。
しかし内容は後見人と大会の話ばかりだ。
「そういえばー、シリウスの後見人はバルタザール伯爵なんだっけー。超つよじゃん?」
サイラスの言葉に、ベローナが驚く。
「え?そうなの?」
「そうだよー、社交界はその話題で持ちきりー」
やっぱり知っていたかと、遠い目をする。
「でも、どうして、大会の出場がダメなんですか?」
ケイリアが眉を下げて、心配そうに顔を覗き込んできた。
自業自得なので、何も言えず、顔を逸らす。
「もしかして、親父か?」
アウロニスの言葉に目を泳がせながら、口を開いた。
「レオンティウス侯爵閣下もね。でも正直、やりすぎた俺が悪いとは思ってる……」
それに反応したのはアウロニスとレイフだ。
「呼び出しくらってたもんね」
「自業自得だろ」
「だからそう言ってるだろ」
じと、とアウロニスを睨みつけると、クスと笑い声が聞こえてくる。
ケイリアが口元に手を当てている。
「シリウスさんのそんなムスッとした顔、初めて見ました」
ベローナもそれに乗っかる。
「あんなにクールな感じだったのに、なんだか意外よね~」
口をぎゅっと引き結んで、顔を下げた。
恥ずかしい。
「あー!恥ずかしがってるー!かーわいっ」
サイラスのその的確な指摘には腹が立って睨みつけておいた。
「……殴りたい」
「だろ?俺はいっつも思ってる」
アウロニスと初めて意見が一致した気がした。
レイフが机に突っ伏す。
「そっかー、シリウスが居ないなら、俺たちで頑張るしかないね」
「まあこいつが居なくても優勝できるだろ」
「強気だねー」
「本当、どっからその強気が湧いてくるのか分からないわ」
「ふふっ、頑張りましょうね」
その5人の顔を見て、心が和む。
この時間が少しでも長く続けばいいと、そう思った。




