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騎士科を選んだ生徒たちは、実習棟に集められた。


「全員集まったか?では説明する!よく聞くように!各科目の定員はクラス毎に半数までとされている。今回Sクラスからは全員応募されているから、ここから半数に絞るため、試験を設ける。

 試験内容は木刀による1対1の模擬戦だ。生徒同士でペアになって行ってもらう。魔法の使用は禁止、木刀以外の武器も使用禁止。時間切れ、降参、場外のいずれかでその試合は終了となる。また、ある程度の怪我は覚悟の上で戦ってもらうが、重症につながると判断した場合はその場で中断をすることもあるから気を付けるように。

 生徒同士のペアは自由に決めて構わないが、今回の合否に勝敗は一切関係ない。持久力、技術、対応力などを総合的に評価していく。それを踏まえて、対戦相手を選ぶこと。では今から15分後に試合を開始する。ペアの決まった者たちは申告に来るように。では、はじめ!」


一気に騒がしくなり、ペア探しが始まった。


試験内容を知っていたのか、複数の人間はすでにペアを決めて申告に向かっている姿も見える。


隣で一緒に話を聞いていたレイフに話を振った。


「ペア、決まってる?」


「いんや?どうするよ、俺らで組む?」


聞かれ、少し悩んだ。


クラスメイトには騎士見習いであることは伝えていない。


もちろん、レイフも知らないはずなので、隠しているわけではないが、少し後ろめたい気持ちがあるのは確かだった。


知っているのは、あの男だけ。


「どうした?俺とは嫌か?」


「嫌じゃないけど……まあ、いいか」


「おいおい、気になるじゃないか」


詰め寄ってくるレイフに、騎士見習いであることを告げようとしたその時だった。


「シリウス!」


一際大きい声が実習棟一帯に響き渡り、教師と生徒の視線を独り占めする男がこちらに歩いてきた。


アウロニス・エレンディルだ。


紺色の髪を靡かせ、同じ色の瞳を敵意で満たして近寄ってくる。


面倒だなと思ったのは、レイフも同じようで、げっと声を漏らしていた。


「おい、またアウロニスになんかやったのか」


「一度もしてない、そんなこと」


騎士見習いに入った1年前に集会で紹介をされ、その時に顔を合わせた程度だから、話したこともなければ手合わせや合同任務もしたことがない。


本当に接点がないのだ。


しかし、入学式の日わざわざ目の前に来て、何でここに居るんだ、とか、俺はお前を認めていない、だとか大声で捲し立てて去っていったことは、クラス中で話題になった。


犬猿の仲だと。


実際、シリウス的に嫌っているわけではないが、多少は苦手意識があったりする。


眉が寄るのは許してほしい。


「俺と組め」


予想通りの言葉に、息を吐き出した。


「一応、レイフと組む話になってるんだけど」


「はあ?」


顔がこれでもかっていうほど歪んだ。


その後ギロリとそのままレイフの方に目を向けたため、レイフはビクッと肩を揺らす。


「い、いや、まだ申告してないし、大丈夫だけど」


「じゃあ、悪いが今回は譲ってくれないか、俺はコイツと組みたい」


シリウスに話す時とは違った柔らかくなった言葉遣いに、レイフは少し緊張が解けたのか、気になっていたことを聞いた。


「でも、確かアウロニスって騎士見習いじゃなかったか?シリウスって平民だし、左眼も眼帯してるだろう?正直、相手にならない気がするんだけど」


何が気に入らないのかわからないが、この機会にシリウスを痛めつけようとしているんじゃないかと、アウロニスからシリウスを守る意味を込めて聞くと、またアウロニスは顔を思いっきり歪めた。


「ああ?コイツも騎士見習いなんだから、それなりに戦えるだろ」


「え?」


「あ?」


「騎士見習い?シリウスが?」


「ああ、言ってねーのか、お前」


「言ってない」


言ってねーのかよと悪態を吐くアウロニスを横目に、レイフを含めた生徒たちが一斉に騒ぎ出した。


騎士見習いとは騎士団の予備騎士とされ、難しい騎士試験を突破するか、騎士科を履修するかの2択で騎士見習いに所属することができる。


なので騎士見習いであるアウロニスとシリウスはかなり稀な部類であった。


ちなみに貴族でありながら騎士試験を突破し、騎士見習いとしてある程度実績を積んでいるアウロニスは結構有名人だ。


「嘘だろ、騎士見習いもう1人居たのか!」


「だから、平民なのにSクラスなのか」


「この学園に騎士見習いが二人も通ってるなんて前代未聞なんじゃない?」


「確かに、すごいことだよね」


レイフもシリウスに詰め寄る。


「知らなかったんだけど!」


「言ってないから」


「いや、言うタイミングいっぱいあっただろ!教えてくれよ、俺の友達が騎士見習いなんて鼻が高いじゃん」


「悪い」


素直に謝るとレイフは、すっきりした顔をした。


「じゃあ、止める理由ないな、アウロニスに譲るよ」


「おう、ありがとう」


改めてアウロニスはシリウスに向き直る。


「決まりだな、逃げるなよ」


「どうやって逃げるんだ」


嫌味を込めていったつもりだが、アウロニスは鼻を鳴らして教師に申告しに行く。


面倒なことになった。


「頑張れ、シリウス」


「他人事だと思って」


「だって、他人事だもーん」


そういってレイフは対戦相手を探しに歩いて行ってしまった。



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