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朝、起きると雨が降っていた。


ランニングはできないので、部屋で少しの筋トレと、授業前に素振りをすることにしている。


朝食を食べて、部屋に戻ると、デインがソファに座って、紅茶を飲んでいた。


「シリウス君、おはようございます」


「おはよう」


座って、デインの向かい側に用意されていた紅茶を飲む。


「提出は無事にできましたか?」


「うん、そっちは?」


「もちろん、できました。なかなかよくできたと思います」


昨日まではかなり隈を作っていたので、かかった時間は計り知れないが、嬉しそうな顔に安堵する。


「シリウス君は、騎士見習いの仕事もしながらだったでしょうから、大変でしたよね?」


「まあ、それなりには。でも面白かった」


デインは更に笑顔になる。


「それは良かったです」


デインは朝食を食べるために、部屋を出ていった。


紅茶をゆっくり喉に流しながら、窓を見る。


雨の音が耳障りだった。



――――――



ザカリー教授から呼び出しがあったのは、昼食の後のことだった。


教授の部屋に入ると、中には、ザカリー教授、モプトン、そしてデインが居た。


嫌な予感がする。


「待っていました。デイン・ブランフォードの隣に」


デインの隣に立つ。


モプトンの嫌らしい笑みが、鼻についた。


「さて、昨日提出していただいた研究資料ですが、2人ともよくできていました」


言葉に反して、ザカリー教授の顔は硬い。


「シリウス。君の魔法式の分解から再構築までのプロセスは、順序立てていて無駄がない。更に着眼点もいい。文句なしで高評価です」


レイフは『難癖』と言っていたが、特にそんな素振りもなく、淡々と事実を述べられる。


「そしてデイン・ブランフォード。君も首席の実力は伊達ではないですね。魔法石という物質についての自分の見解、仮説、そして検証、立証まで無駄がないです。かなりの高評価です。それが君の成果であれば、ですが」


眉が寄る。


デインも思わず声が漏れている。


「……どういう、意味でしょうか」


デインの問いに、ザカリー教授は涼しい顔をしている。


「君たち二人は同室者で、仲が非常に良いようですね。授業中も隣同士なのをよく見ます」


何を言っているんだ、ザカリー教授は。


「二人で協力して研究をした事実はありませんか?」


「……ありません」


「俺もありません」


はっきりと口にしたら、ザカリー教授は眉を寄せた。


「証拠は提示できますか?」


「……」


デインは黙る。


静かに一つ呼吸をした。


「それは、協力して研究をしていないという証拠ということですか?」


思ったより強めに言葉が出る。


ザカリー教授が頷いた。


「実は、君たちが共同研究をしているという告発がありました。モプトン、そうですね」


ザカリー教授が隣に控えていたモプトンに声をかけると、モプトンは胸を張って前へ出てきた。


「はい。本当です。図書棟で2人が研究資料を突き合わせているのを見ました」


拳を握る。


何を言っている。


「だそうですが、事実はどうですか?」


「そんなことしてません!僕もシリウス君も寮では研究の話は一切しませんし、シリウス君は騎士見習いですから、部屋を空けていることの方が多いです!授業だって研究の話をしてたことなんて一度もありません!ましてや図書棟でだなんて……君の方が難癖つけて妨害していたじゃありませんか!」


一気に声を張り上げているデインに、モプトンは顔を歪めて対抗する。


「はあ!?それこそ、事実無根だ!なんの証拠があってそんなこと!」


「じゃあ、俺たちの共同研究も証拠があるわけじゃないな」


「……っ!」


淡々と冷めた目で見てやれば、モプトンはビクッと肩を震わせて、目を泳がせる。


ザカリー教授に目を向けた。


「ザカリー教授のいう仲が良いとは最もだと思います。ただ、それが、共同研究をしたという証拠にはなりませんし、モプトンだけが見ていたというだけではあまりにも説得にかけると思いますが」


ザカリー教授は言い返してくるとは思わなかったのか、目を見開いてこちらを凝視している。


ほんの少しだけ頬が上がったのが見えた。


「確かにその通りです。なので、まずは当事者である君たちの意見が聞きたかったのです。ただ、共同研究をしていないという証拠もありません。そうですね?」


目を見返されて、直接問いかけてくる。


目を細めた。


「……はい」


「ならば、こういう告発があった以上、対処しないわけにはいかないんです。分かってくれますね?」


「……」


返事をしなかったのは、少ない反抗心だった。


「今回の一件は重く見ています。同室者だから、友人だからといって許される行為ではありません。しかし、証拠が不十分というのも事実です。よって、今回の処罰については、シリウスは不問といたします」


言葉を聞き、目を見開く。


「……俺だけ、ですか?」


「はい。君だけです。デイン・ブランフォード」


ザカリー教授はデインに目を移す。


デインはあからさまに動揺していた。


「君には他にも嫌疑がかけられているんです」


「嫌疑って……僕は何もしてません!」


「口では何とでも言えます。しかし、告発もたくさん増えれば、証拠不十分でも、十分学園側が動く理由になります。意味はわかりますね?」


「……」


デインは口を動かさない。


沈黙が場を支配して、次にザカリー教授が口に出した言葉は、室内に広く響いた。


「退学処分とします」


雨の音が、耳に酷く残った。



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