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「あ!帰ってきたぞ!」
大きな喜びの声が出迎えた。
それも頭に響くものだから、もう限界なんだと思う。
駆け寄ってくるエドマンドに体を預けた。
「大丈夫!?」
「……すいません、魔力枯渇です」
頷く気配がし、こっちと少し集団から距離を置いた木のそばに座らせられる。
目を開けてアウロニスの方を確認すれば、怪我人を引き渡し、リーダーに怒鳴り散らされていた。
「お前!自分が何をしたか分かってんのか!」
「……すいません」
「命令違反だ!お前のその判断で被害が更に拡大することになるんだ!!分かってんのか!!」
「……」
俯くアウロニスの表情は読み取れない。
それよりもあの怒鳴り声はこちらにもよく響く。
「まあ、しょうがないね、こればっかりはあの子の怒鳴りたい気持ちも分かるよ」
水を渡されて、ゆっくり口に含む。
「でも、シリウスが一番怒鳴りたいんじゃない?彼に」
「……どうでしょう」
自分でも感情の整理がつかない。
怒りもある、でも諦観もある、それよりも強く思うこの気持ちは、なんだろうか。
「その辺にしとけ」
ドレイクのリーダーを止める声が全員を捉えた。
ドレイクは、アウロニスの方を向き、口を開く。
「まずアウロニス、この後ゆっくり話をしよう。時間作ってくれるな?」
「……はい」
俯くアウロニスの声はか細い。
次にドレイクはこちらを向いた。
「そんで、シリウス。よくやった。二人を救出できたのは、誇っていい」
にかっと笑った顔に、質問で返す。
「毒、結構回ってそうでしたけど」
「ああ、たぶん後遺症は免れないな」
それは戦線復帰は見込めないということだ。
でも、アウロニスが助けに行かなければ、もっとひどい状態だったかもしれない。
居たたまれず、目を伏せた。
「しかし、全員が生きて帰ってきたことが、まず大勝利だな」
その言葉は胸が痛いんだろう、アウロニスは歯ぎしりをしていた。
「で、シリウス、疲れているところ悪いが報告が聞きたい」
ドレイクを見て続きを促す。
座っているだけでも、体がだるい。
早くしてくれと、目線で訴えた。
「相当、無茶したな。魔力枯渇か?」
「……はい」
「そうか。結果的に帰ってきたから、不問にしてやる」
言い方が腹が立つので、返事はしてやらなかった。
「それで、変異個体は観たかどうかが知りたい。もし見たなら個体の特徴とか大きさとか、教えてくれると助かるんだが」
「討ったと思います」
「……は?」
ドレイクが間抜けな顔を披露する。
「今、討ったって言ったか?」
「はい。しっかり見てませんけど、確かに短剣を投げて当たった音は聞きました」
「それが本当なら、一番の功労者じゃないか」
「どうぞ、確認してきてください」
明るい光が地面を照らし朝が来たことを知らせる。
ドレイクは変異個体が居たであろう方向を眺めた。
「分かった。それが事実なら、お前は次の討伐は不参加でいい。十分頑張ったご褒美だ」
ドレイクが頭を思いっきりかき回す。
重い、しんどい。
「やめて、本当に疲れてるから」
「おうおう、上官には敬語使えよ~」
じっとりとその顔を睨みつけて、立ち上がった。
「もういいですか」
「ああ、俺とエドマンドで森林の中、確認して後で報告に行く」
それに頷いて、宿へと帰路についた。
自然と解散になる団員たちに紛れて、アウロニスが隣に立つ。
無言で歩いた。
「……悪かった」
その謝罪がなんなのか分からないフリをして、返事はしない。
「それに、あの時……あの場にお前がいなかったら、たぶん俺も同じ目に合っていた。だから……ありがとう」
顔を俯かせるアウロニスに、質問をしたいことがあったことを思い出した。
「……何であの時助けに行ったの?」
それは本当に純粋な疑問。
アウロニスの本質。
「……分かんね。気づいたら勝手に動いてた」
その言葉がストンと胸に落ちる。
───そうか。
羨ましかったのか。
気持ちが整う感覚に、思わず空を見上げた。
太陽が強く照らし出す。
眩しさに目を細めた。
「夜の討伐、頼んだ」
その言葉を聞いて立ち止まったアウロニスに、軽く手を振って、先に部屋に戻った。




