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3日目の緊張はこの討伐任務で一番の張り詰め方をしている。


ジョエル森林に入る前に、全体集合がかけられた。


「作戦を一部変更する」


一拍、ドレイクがゆっくりと大きな声で告げた。


「変異個体が混ざっている可能性が極めて高く、その影響を受けて通常のフォスフォレーラーが狂暴化している可能性が出てきた。よって、班から隊へ拡充し、守りを固める。戦線の保全を目的とし、無理な戦闘は避けること。変異個体を見つけ次第、後退し報告すること。それから、全員が生きて帰ってくること」


力強いその言葉に、全員がドレイクに瞳から逸らせない。


「気合入れていくぞ!!」


「「「おお!」」」


士気の上げ方が上手い。


1日目と同じとまではいかないが、どうすればいいのか明白になった分、今朝の重苦しい空気は取っ払うことができただろう。


行軍中は雑談ではなく、作戦の見直しがそれぞれで行われる。


「まずは必ず二人で動こう。素早い動きだけどお互いに魔力の揺れに意識すれば前後で助け合える」


「どちらかが倒れても、すぐに後退ができるからいい判断だと思う」


再編されて一小隊となったリーダー同士は、お互いが先導する者として助け合っている。


その雰囲気は下にも伝播する。


良い兆候だ。


「シリウスは、アウロニスとでね。頼んだよ」


「はい」


「アウロニスも」


「はい!」


リーダーの言葉にアウロニスは勢いつけて返事をする。


その後にこちらに目を向けた。


何となく、怒っている気がする。


「今朝、何話してたんだよ」


声のトーンを一つ落としたその言葉に眉を寄せる。


そして思い当たる節は一つしかない。


ドレイクの呼び出しだ。


戻ってきたら寝ていたから、あまり気にしていないと思ったんだが、的が外れたらしい。


どう答えようか悩んでいると先に言葉が紡がれる。


「お前、俺と同じ騎士見習いのクセに、ドレイクさんと何であんなに親しいんだ」


「……」


その言葉に睨み返す。


「それ、今、関係ある?」


「関係あるだろうが、個人的に呼び出しとか、作戦会議に呼んだってことだろ。親しくなきゃ呼ばれない」


声量は抑えているが、口調は荒い。


また嫉妬を押し付けてくる。


大きく深呼吸をして、アウロニスから目線を外した。


「今は討伐に集中しろ」


腹は立つが、今はそれを表に出していい時じゃない。


アウロニスも分かっているのだろう、それ以上口を開くことはなかった。


重苦しい空気が流れる。


最悪の気分だった。


「戦闘準備!」


ドレイクの声がかかり全員が剣を握る。


「行くぞ!」


その言葉を皮切りに、戦線が動き出した。


切り捨てて、切り捨てて、切り捨てて。


アウロニスと背合わせを意識しながら、無心に剣を振り続ける。


そして前回よりも早く特異体が現れる。


概ね対処できているようだが、やはり戦線は揺らぐ。


後退する者が一人いると雪崩のように増えていく。


ドレイクが先頭に立ち、切り結んでいるが、やはり恐怖の伝播は速かった。


アウロニスに向かって突貫してくるフォスフォレーラーが一体。


ただアウロニスは気づいていないようだった。


「っ!」


魔力の揺れが大きくなりようやく気付いたが、その時はもう目の前にいる。


その個体を思いっきり縦に分断した。


アウロニスの目がこちらを向く。


「しっかり見ろ」


「……っ!」


アウロニスは何も言わず構える。


歯を食いしばっていた。


反転させ、また背中合わせになる。


朝日までが途轍もない時間のように感じた。


そして崩壊は訪れる。


「ああ!!助けてくれ!!」


その叫びは後ろの後退した者たちからだった。


フォスフォレーラー数体が、団員に嚙みついている。


ドレイクとエドマンドが率先して後退し、助けに入った。


後退陣営には静魔帯の効果範囲を広めた杭が打たれている。


通常のフォスフォレーラー相手ならば、十分相手取れるはずだった。


前線よりも後ろに特異体が来たということは読みが当たったと断定していい。


指揮系統を司る、変異体が奥に居る。


虎視眈々とこちらを捉えようと隠れて眺めている。


歯ぎしりを鳴らす。


これ以上は無理だ。


「撤退だ!!皆、ジョエル森林の入口まで戻れ!!」


ドレイクの叫び声が森林を埋め尽くす。


木々が大きく揺れた。


隊員が一斉に動き出す。


ドレイクは怪我人を任せ、後退の指示を前線へと繋げていく。


「怪我人を最優先!極力戦闘は避けて、なるべく広がって走れ!!」


隊員が後退していく中、立ち尽くしているアウロニスの肩に手を置き、促す。


「いくぞ」


「……分かってる」


静かに返答し、踵を返した。


アウロニスを後ろで意識しながら走る。


途中に漂うフォスフォレーラーは切り捨てていく。


最後の悪あがきだ。


撤退の流れは素早い。


ドレイクの全体号令が効いている。


皆が悔しさの中、安心していた。


そしてそれは、シリウスも。


「え?おい!!アウロニス!!」


その声が聞こえたときには、あいつははるか遠くに走り去っていっていた。



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