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朝の静けさが、討伐隊の喧騒に搔き消されていく。
フォスフォレーラー討伐任務の当日、騎士団の大広間に、バルタザール騎士団全員と、騎士見習いの15名だ。
必然、騎士見習いの集団と、バルタザール騎士団の集団に分かれている。
その様子を集団から外れた位置で眺めていると、声がかけられた。
「おはよう、シリウス」
ドレイクだ。
「おはようございます。こんなところに居ていいんですか?この後、全体号令ですよね」
じっとりと見てやれば、呆れた顔をされた。
「まだ怒ってんのか」
「……」
「シリウスもまだ子供だな。割り切って行けよ」
「……分かってます」
そうして話していると、こちらに気づいたのか騎士見習い同士で喋っていたアイツが、こちらに走ってきた。
アウロニスだ。
「おはようございます!」
「おう、おはよう。元気でいいな」
「はい!あと、俺を推薦してくれてすごく嬉しいです!期待に応えられるように、頑張ります!」
良い笑顔、良い声。
子供のあどけなさが顔を出す、見たこともないアウロニスに、頬が引きつる。
「うんうん、まあ推薦したのは俺じゃ……いって!」
思いっきり足を踏んでやった。
「大丈夫ですか!?おい!シリウス!失礼だろうが!」
「すいません。足が滑りました。許してくれますよね、ドレイク騎士団長」
「……分かった。もう言わない」
「賢明です」
頭に?マークがいっぱいのアウロニスを置いて、その場を離れた。
未だに大丈夫ですか、とか、あいつ叱っておきます、とか聞こえているが、仕事の前に更に疲れたくはない。
大きな溜息を吐いた。
「疲れてるね、シリウス」
声に振り返るとそこにはバルタザール騎士団、副団長のエドマンドだ。
長髪が特徴の美丈夫な顔を見上げ、挨拶をした。
「おはようございます」
「おはよう、団長に何か言われた?」
「いえ、大丈夫です」
淡々と受け答えをすれば、彼は苦笑をもらした。
エドマンドは、シリウスが騎士団に入る前から知っている。
ドレイクとの違いは、雰囲気か、会話の少なさか。
「ならいいんだ。支給品を渡しにきた」
二つ差し出される。
「解毒薬と、静魔帯だよ、失くさないように」
渡された透明な液体が入った小瓶と、灰色のバンドを、お礼を言いながら受け取る。
「2回目とはいえ、軽く説明しておくね」
解毒薬はフォスフォレーラーの唾液に含まれる毒素を中和させるもの、貴重品だからなくさないように。
静魔帯はフォスフォレーラーの魔力振動攻撃に共振しないようにする魔道具、基本は外さないように。
「どちらも効果は実証済みだけど、飲みすぎると効き目が薄くなるし、長く使用し続けると、体調不良起こしたりするから、無理はしないように」
「はい、わかりました」
去っていく後ろ姿を眺めながら、昨年のフォスフォレーラーとの戦闘を思い出していた。
目では追えない素早い動きに、羽から放たれる微細に振動する魔力波。
集中力と精神力が必要で、昨年も日を増すごとにダウンしてしまう団員が多く、日程は延びた。
だから人員を増やしたのだ。
先ほどのアウロニスのだらしない顔が過り、重たい空気を全部吐き出した。
朝日が煌々と団員たちを焚きつけていく。




