17
沈黙が場を支配する中で、体を起こし、立ち上がる。
身体を包む熱は、余韻を残し、風化していく。
汗を腕で拭って、天井を見ながら一息ついた。
「聞いてもいいか?」
「なに」
視線を、未だに倒れたままのウォルターに移す。
「私の魔法を打ち消したあれは何だ?」
「魔法陣を逆算で練り上げて、発動をキャンセルした」
「何だそれは、何でそんなことができるんだ」
「……さあ」
目を伏せて、言葉を濁す。
ウォルターから乾いた笑いが返された。
「秘密主義なんだな」
「そういうわけじゃない」
「いや、いいんだ。それが正しい」
ウォルターは腕で目を覆い隠した。
「最初は違和感だった。貴族の輪の中にいる君が」
息を吐き出す音が耳に残る。
「でも、騎士見習いで優れた才能を持っていて。……醜いなこの感情は」
拳を強く握っている姿は、何を堪えているのだろうか。
「君に勝ちたかったわけじゃない。君の技術を、君の見ている景色を、見てみたかった……」
目を覆っていた腕を天井へと掲げている姿は、眩しくて、そっと目を逸らした。
「私は君に追いつけるだろうか。……いや、違うな。君に追いつけるように、もっと努力をするよ」
ウォルターがゆっくりと立ち上がる。
目の前に立ったウォルターは、自分より少し背が高くて、肩幅があって、背筋は綺麗に伸びていて、誰よりも貴族だった。
「ありがとう」
手が差し出される。
その手をそっと握り返した。




