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「J部隊、よく動けていたな」
息を整えながら、教師の目の前へと移動する。
ここで一番意外だったのが、ウォルターが悔しそうな顔をしていることだった。
「まず、前衛についてだが、皆それぞれよく動けていた。隙ができたタイミングをよく見て剣を振るっていたので有効打が多かった。後衛も強すぎない魔法を選ぶことで、見方の支援を目的としているとはっきり分かった。良い戦術だ」
言葉を区切り、ウォルターへと目を向ける。
「この戦術を組み立てたのはウォルターだな。よく勉強している。特に特異点であるシリウスの配置の場所がよく考えられている。あとは場数だな。たくさん経験を積めば、もっと視野が広くなるだろう」
ウォルターは教師の言葉に、目を伏せ、何かを堪えるように歯を食いしばっていた。
はい、と返事をした声は、か細い。
「そしてシリウス」
「はい」
「よく視ているな。2体目のワーウルフを選んだ判断は、非常に感心している。あそこは騎士でも判断が迷うところだ。そこで迷いなく突き進み、成功できてしまう、判断力と行動力、そして技術力。素晴らしいの一言だ。次も期待している」
「ありがとうございます」
褒められたことを素直に受け入れて、頭を下げる。
その直後のウォルターの顔は酷く印象に残った。
眉を寄せて、じっとこちらを見つめている。
怒りではない、嫉妬でもない、あの表情は見たことがある。
理解できないという顔だ。
「それでは、各部隊の長所短所の書き取りを行うので、30分後、各教室に集合すること。解散」
生徒たちがぞろぞろと演習場を後にするが、その流れに乗らずに立ち尽くす。
レイフが気にしてチラチラとこちらを窺っているが、ひらひらと手を振って、気にするなと合図を送る。
演習場に残ったのは、シリウスとウォルターだった。
戦闘の香りを残している土が、2人の空間を支配する。
口を開いたのはウォルターだった。
「私を襲いにきたワーウルフを先に処理したのは、私には荷が重いと思ったからか?」
強い感情が目に宿っている。
妬み、嫉み、怒り、哀しみ。
どれにも当てはまりそうにない。
「違う」
「では何だ。どうしてあの場であの判断をしたんだ。俺には理解できない。できなかった。だから……」
眉を寄せて苦しそうに絞り出す。
「俺は、ウォルターの魔力操作が綺麗なのを知ってる」
魔法科の授業で、見本を見せていた時のことを思い出す。
構築の仕方が無駄のない、洗練されたものだった。
「あれは相当な努力をしてきた証だ。それをしっかり実践に活用もできてる」
ウォルターが顔を上げた。
「戦術の組み立て方も、自分よがりじゃない、最善を生み出し、下を惹きつける。俺にはできない」
慰めているつもりはない。
事実、ウォルターはそれを聞いても顔は晴れない。
「それでも、あの時の判断は、確実に戦場で必要になってくる眼だ」
「……急ぐ必要はないんじゃないか」
「……」
ウォルターの拳が震えている。
開いては閉じてを繰り返している唇は震えていた。
「……今のままではダメなんだ」
「……」
「私は、私が自信を持って立っていたい」
言葉の重みを感じ、どくりと心臓が撥ねた。
意識して深呼吸をする。
ウォルターの言葉が心臓に絡みつく。
逃げるなよ、そう言われている気がした。
「……決闘を、申し込みたい」
その瞳は、強く燃えがっている。




