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専攻科目の授業が始まって1ヵ月が過ぎた。


それぞれの履修する科目に慣れるまで、慌ただしい雰囲気だったが、今は落ち着きを取り戻し、ゆったりとした時間が過ぎることが多くなってきている。


更に、1ヵ月の節目としてそれぞれの科目にて、特殊な授業を行うことが多いらしい。


それは騎士科と魔法科も例を漏れず、合同実技という特殊な授業の名目で演習場に集められていた。


「実習棟と違って、下は土だし、とにかく広いなあ」


「実際の戦闘を考えて作られている感じはある」


レイフに返答しながら、足で土をなぞる。


踏み固められた地面には、既に何度も魔法が放たれた痕跡があり、焦げた匂いがわずかに漂っていた。


「今回の課題は、連携だ」


教官の声が響き、空気がひりつく。


「6人編成の部隊をつくり、仮想敵と戦ってもらう。仮想敵はDランクの魔物のワーウルフが5体。部隊の編成は既に分けてあるので、今から発表する。呼ばれた者から指定されている位置に移動しなさい」


休む間もなく名前が読み上げられ、生徒たちが移動していく。


レイフも早い段階で呼ばれて、同じ部隊に配属された生徒とおしゃべりをしていた。


「次はJ部隊。シリウス」


「はい」


呼ばれて移動し、更に続けて4人呼ばれたが、最後の名前は嫌に耳に残った。


「ウォルター・レオンティウス」


「はい」


まさか同じ部隊に配属されるとは思わず、ウォルターを目で追う。


ケイリアと一緒に居るところをよく見かけたが、話したことはまだ一度もない。


視線が交差したが、すぐに逸らされる。


「まずは、指揮役を1人決めること。指揮役をした者は評価に反映させるのでそのつもりで。また今まで習ってきたことを生かしているか。臨機応変に対応できているか。騎士科と魔法科を兼ねて履修している者が多いが、どのように使い分けるのかなど、勝敗ではなく、総合的に評価をしていく」


そして作戦を考える時間を10分与えられた。


それぞれの部隊が円を囲って話し合いをしていく中で、J部隊も自然と円になって顔を突き合わせる。


口火を切ったのは、ウォルターだった。


「まず指揮役についてだが、やりたいものが居れば挙手を、居なければ私が引き受ける。誰かいないか?」


全員が沈黙で返答し、指揮役はウォルターに決定した。


「それでは作戦についてだが、前衛と後衛をあらかじめ決めておいて、役割を割り振るのが妥当だと思うが」


そこで言葉を区切ったウォルターと目が合った。


「シリウス、君は確か、騎士見習いだったな。何か意見はあるか」


まさか、意見を求められるとは思わなかった。


逡巡し、ワーウルフの特徴を思い出す。


「ワーウルフはとにかく俊敏で顎が強い。どこまで再現されているか分からないが、1対1で相手取ると翻弄される可能性がある。それなら、ウォルターの言う通り、前衛と後衛に分かれて、魔法で隙を作り剣で致命傷を与える作戦が、基本戦術だと思う」


「そうか」


それならばと、他の生徒に得意な魔法などを聞いていくウォルターの横顔を眺める。


他人の意見を取り入れ、それを生かした上で作戦を組み立てられるのは、なかなかできることではない。


貴族ならば尚更プライドというものがあるはずだが、それを感じさせない実直さは、見ていて気分がいい。


「シリウスの騎士としての実力は疑ってないが、魔法はどれくらい使える?」


「魔力量が人並み以下だからあまり期待しないでくれ」


「なるほど、そうなると君は前衛のサポートに入ってもらうのがいいだろう」


「分かった」


前衛が騎士科のみを専攻している生徒2人と両方専攻している生徒1人の計3人。


その全体のサポートとして臨機応変に対応するシリウスを真ん中に置き、後衛に魔法科のみ専攻の生徒とウォルターという配置に決定した。


「隊列は前衛を前に扇状に展開。左右前衛の後ろに後衛を配置。中の前衛にサポートを入れる。基本的には近接に入る前に魔法で足止め、隙をついて攻撃の流れを主軸として、臨機応変に対応していくものとする」


ウォルターが「異論はないな」と締めくくると全員が頷いた。


威圧をするのではなく、部隊を鼓舞している。


できた指揮官だ。


「それでは、A部隊から、順に始めていく。各部隊の長所と短所も後程筆記にて採点対象にするので、しっかり見て、学ぶように」


それを締めくくりにし、合同実技の授業が幕を開けた。



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