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マッチングしたあの人は、詐欺かもしれない、遊びかもしれない、でも気になるからメッセージを送ってしまって夢を見る  作者: 坂東さしま


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平安婚活でわかること

 そうして、私とリュウさんはLINEでやり取りすることとなった。アプリよりも連絡は頻繁になり、マッチングしてから約二か月が経った。リュウさんはあれ以来、会おうというメッセージは送ってこない。


 動画や画像も送れるようになったけど、まだ疑いが残るためにこの機能は活用していない。写真から個人が特定されたらどうしようって。ばからしいけど、一線を越える勇気がない。


 でもふとした時、何か送りたくなる。例えば、新作のコンビニスイーツの写真。日暮里のネコの写真。実家のイマネコの写真。先日、家族と食べた坂東太郎のお気軽寿司セットの写真。


 彼と共有したい。


 その欲求だけが堆積していく。会ったこともない、写真だって本当にあの顔なのか分からない。本当は東京ホテイソンのたけるかもしれない。ああ、彼は彼で面白くていい顔だけど。


 そんな人を好きになっていく、この過程がどうしようもなく、辛い。


 辛いなら辞めればいい。詐欺なんだからコトが起これば通報すればいい。


 簡単なんだ。この痛みから逃れることは実にお手軽なこと。


 なのに。私は月曜日の昼も、歯磨き後に返信すんだ。そばつゆが胃にたぷぷ。なんつーでれすけ。




桜川未来:今日の夜、電話しませんか?




 一線を越える勇気がない、って独白したばっかりなのに。指が勝手に動いた。写真を越えて電話って。勇気あり過ぎ。私の新たな一面発掘。


 


太田龍:いいんですか?


桜川未来:私の都合でお会いできないから、まずは電話からいかがでしょうか?


太田龍:よろしくお願いいたします。




「……あ、えっと、初めまして? 龍さんですか?」


 22時に、私は彼に電話を掛けた。事前に電話をしていいかメッセージは送っていたからか、待たずに出てくれた。


『そうですね、声では初めまして。太田龍です。あはは、なんか、あれだ、あのー、うん、すいまん、言葉が下手で』


 龍さんの声は佐藤健じゃなかった。メッセージの雰囲気から明るそうな人柄と予想はしていたけど、例えるなら元気な中学生みたいだ。


「ふふふ、いえいえ。ずっと知ってる人なのに知らない人みたいな、でも知ってる人みたいな。不思議ですね」


 未来さんの声は想像以上に、柔らかい。煮込み過ぎたうどん、つきたての餅、えっと、もっとオシャレな表現が欲しいんだが。大福かな。あ、今日の俺の寝間着Tシャツはクリームパン柄。うーん、クリームパンの方がオシャレかな。未来さんの声はこなくりのクリームパンだ。あまくてふわふわで美味しい。


「そうそう、そんな感じ! 平安時代の貴族って、手紙でやり取りしてから会ってたんすよね? ってことは、現代の俺たちも似たようなことしてるのかなあ、なんて」


『確かに! 一周まわって平安婚活ですね。メッセージだけで何がわかるのかなあって疑問だったんですよ、アプリ始めた頃は。いきなり会う人もいるようですけど。でも、メッセージが続かない人は会ってもつまんないだろうなあ、って想像しちゃうっていうか。実際はわかりませんよ。メッセージの中身がすべてじゃありませんし。でも、相性は合わないかなって思いました』


「それはあると思います。なんだろうな、よくわかんないけど。文章って不思議ですよね。あーえーあの、文章の上手い下手じゃないんですよね」


『うんうん、文章からでも、例えオンラインでも、文字から気持ちって伝わる……なんでだろう……』 


「なんで、ですかねえ。未来さんってきっと優しい人だろうなあって、伝わってきます」


『そんな……龍さんって、面白い人なんだろうなあって、とってもよく伝わってきますよ』


「へへへ、面白いか……ねえ、」


 そして俺たちは/私たちは同時に言った。


――会いませんか?

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