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 すでに俺らが校門をくぐった頃にはさらに夜は増していて、街を照らすネオンや、夜を知らせるサイレンが纏わりついていた。その闇に溶け込むかのように、彼女のボディーラインを軽くタッチした黒いワンピースがひらりと揺れて、俺の何歩も先を進んでいた。しかし、見失うことはなかった。それでも闇に溶け込めない露出した白い肌が、くっきりと見えていたから。

 そして、その背中を追いかけて行くうちに、俺はその小さくて黒くて白くて、そして優美な彼女の背中を気に入っていた。

勝手にお気に入り登録、完了。

しかし、本当に彼女は何歩も先を進んでいく。あんな華奢に見える細い体なのに、どれほどの力を持っているのか、不思議でたまらない。

…………いや、3階から飛込プールに落ちて平然としていたくらいだから、その時点でこれほどの力を持っていることくらい、軽く想像できた。と、そんなことを思考しているうちにいつの間にか、目的の病院の玄関の前にいた。


「(た、お助けを……………………)」

 とてつもなくおもっ苦しい、そしてなんというか重圧感を覚えるなにかが俺を押し潰そうとしていた。

――――なんなんだ、この沈黙は……。

 病院について既に30分、俺と黒条の間に、言葉が発生したことがない。いや、まぁどちらかと言えば発生はしているものの、成り立ったことがないという表現が一番この場合的確なのだと思う。一応、一般的な初対面としての質問は一通り試してみた。「食べ物なにが好き?」とか、「部活、なにしてる?」とか、「元中どこ?」とか――。ただ、この横にいるやつが、総無視をしてきやがる。まぁそりゃ、病院なんだから静かにしていないといけないことくらい、高校3年生にでもなれば、分かっている。ただ、総無視はさすがに斬新すぎじゃねぇかなぁ。

――あぁ、ほんと助けて。

 つい、語尾に(涙)とか言いたくなる。

 それから沈黙がほんの少し支配したあと、病院を後にした。

 そしてまた、あのお気に入りの背中が、俺の前を行く。これから先の人生に彼女がいるのかは、不明ではあるが、今、この瞬間が意外と楽しく思えた。


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