第33話 バレちゃった
「それじゃ、私はまた王都にてヒロ様達の受け入れ準備を進めておきます」
「うん、頼むね。それと……」
「なんでしょうか?」
「大丈夫?」
「大丈夫とは?」
「だってさ……」
「あ~そのことでしたらご心配なく。もう、なんとも思ってませんから!」
「オジー……」
「大丈夫ですって! それよりも私をさっさと送っちゃって下さい……」
「オジー……やっぱり、まだ……」
「な、何を言うんですか! あんな奴等のことなんて……これっぽっちも……もう、これっぽっちも……うぅ~うわぁぁぁ~~~ん!」
「やっぱり……」
俺の部屋で今後のことを話し終え、そろそろオジーを王都へと連れて行こうとしていたところで、やたらとオジーが張り切っていることが気になり、声を掛けてみたら……案の定と言うか、俺の前では強がって見せたものの今まで家族と信じていた連中に裏切られた傷はまだ塞がっていなかった様で、情緒不安定だ。
「オジー、こんな時に言うことじゃないかもしれないけどさ、早いところ本物の女性を知った方がいいと思うよ。幸い、王都にはそういうお店もあるだろうしさ」
「……一緒に行ってくれますか?」
「え? なんで俺が?」
「正直、私一人じゃ心細くて……それにまた騙されてしまうんじゃないかと疑心暗鬼になってしまいそうで……だから、お願いします!」
「そ、そう……そこまで必死にお願いされちゃうと……無下に出来ないなぁ。困っちゃうなぁ、ぐふふ」
「何かお困りですか?」
「ゆ、ユリア……いつからそこに?」
「いつからと言いますか、オジー様を案内して来たのは私ですよ?」
「あ……じゃあ、もしかして……」
「はい、しっかりと聞かせて貰いました!」
「……」
「ヒロ様もそういうお店に興味があるのですか?」
「ちょ、ち、違うから!!! 俺じゃなくオジーがどうしてもと言うから、仕方なく……そう、仕方なくだよ。ね、オジー」
「はい。ですが、勧めて来たのはヒロ様ですよね?」
「お、オジー……裏切るなんてヒドいじゃないか!」
「ヒロ様、裏切るも何もユリアはずっと聞いていたのですよ」
「そうですよ、ヒロ様。ですが、『魚心あれば水心』と申します」
「お、俺を脅迫するつもりなの?」
「そんな脅迫だなんて……ですが、ある意味脅迫かも知れませんね」
ユリアは右手人差し指を顎に当てながらそう言うと「うふふ」と笑う。
「……何が望みなの?」
「そんなに難しい話じゃありませんよ」
ユリアの発言を聞いて俺はホッと胸を撫で下ろす。
「では、私のお願いを聞いてもらえますか?」
「……いいよ。聞かせてくれ」
「では……」
「それは……ちょっと……」
「ダメですか?」
「いや、ダメと言うか。伯爵様と相談しないと俺一人じゃ判断出来ないかな」
「うふふ、ウソはダメですよ。ヒロ様が旦那様に頼んで無理と言うわけないでしょ。ですから、いい返事を期待していますよ」
「……俺のことは考え直すんじゃなかったの?」
「はい、考え直しましたよ」
「なら「その結果、もう少し一緒にいて観察しようと決めました」……はい?」
ユリアの願いは至極単純なものだった。
王都へ一緒に連れて行って欲しいと、ただそれだけだったのだ。
だけど、ユリアはこの前先輩と一緒に考え直すと言っていたハズではと確認してみれば、よく考え直した結果、俺のことをもう少し知りたいとなったらしい。
「ユリア、もう一度よく考えてみる気はない?」
「え? どういうことですか?」
「いや、だからさ……あ~もう、分かったよ。伯爵様に頼んでみるよ。でも、ホントに許可されるかどうかは分からないからね。それでいいよね?」
「ハイ! 末永くよろしくお願いします」
「いやいやいや、違うでしょ」
「いいえ、違いませんよ」
「だって、もう少し観察するって」
「はい、そうですよ」
「なら「だから、ずっと側で観察させてもらいます。この先ずっと……未来永劫……ずっと……うふふ、逃がしませんよ」……えぇ!!!」
ユリアの説得は無理だと観念し、取り敢えずオジーと王都に転移しようとしたところで「話は聞かせて貰ったわ!」と先輩が扉を勢いよく開き右手人差し指で鼻を擦りながら得意気に胸を張っていた。
「え? どゆこと?」
「だから、話は全部扉の向こうで聞かせてもらったわ!」
「……えっと、それはどこからどこまででしょうか?」
「確か……『それじゃ』ってヒロが言ったところから、私が扉を開けるまで?」
「全部じゃないか!」
「あれ? そう?」
「そう? じゃなくて……あ! ユリア、さっきの約束はナシで」
「え? どうしてですか? 私は誰にも言ってませんよ?」
「だって先輩に聞かれてたし」
「えぇ! ウララ様、何をしてくれやがりました!」
「ユリア……さん?」
「ユリア、素が出てます」
「え? これがユリアの素なの?」
「チッ」
先輩にさっきまでの話を全部聞かれていたんじゃ、ユリアとからお願いされたことは意味がないと約束をナシでと言うと、ユリアの態度が豹変し、先輩が驚きオジーはユリアに忠告すると俺は隠されていたユリアの性格に驚いてしまう。
しかも舌打ちまでしてるし。
「ヤダ、この娘怖い……」
「ふぅ……バレたならしょうがないですね。でも、もう知られたからには遠慮しないでもいいですよね。ね、ヒロ様。うふふ」
「……セツ、守ってくれる?」
『頑張ってねぇ~主ぃ~』
「ウチの子が冷たい!」
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