第31話 ちっちゃな俺のちっちゃな俺がぷるんぷるん
血液検査でオジーと子供達との関係性を否定出来れば、全てを奥様達の不貞が原因として別れることが出来るのだが、今ひとつ決定打に欠けることに気付いた。
血液型による鑑定は、当然ながら異世界では周知されていない。
なので、『そんなのオジーのでまかせよ!』と言われてしまえばどうしようもない。
だから、『これが動かぬ証拠だ!』と言える位の決定打が必要だ。
「どうしたもんかな~」
『主ぃ~どうしたのぉ~』
「ん~あのね……」
『なんだぁ~そんなことかぁ~』
「え?」
俺が頭を抱えて唸っているとセツが心配そうに聞いて来たので、ある程度の事情を話すとセツからの答えは思わず耳を疑ってしまうものだった。
「え? セツ。どういうことか分かっているの?」
『分かってるよぉ~要はオジーとの関係がないって分かればいいんでしょぉ~そんなの簡単だよぉ~』
「えっと、セツさん?」
『だってね……こういうことでしょ?』
「はい?」
「ヒロ殿……説明してもらえるんだろうな」
「もしかして、ぷぅも出来たりするのかな?」
『今はムリ!』
「今は……か」
俺の質問にセツがその身をキュッと細く長くすると、そこにはミニチュアサイズの俺がいた。
しかも全裸で……だ。
そして、そんなセツを見た伯爵様が俺にどういうことなのかと説明を求めてくるが、俺に分かる訳もなく、ミニチュアサイズの俺を模したセツに目で訴えると『僕が説明するよぉ~』と言うので、俺と伯爵様はセツを前に身を正してジッと待つ。
セツ、その前にその『全裸の俺』をどうにかして欲しいんだけど。
なんでそんなとこまで模しているのかな。
さっきからユリアが興味津々といった感じでスケッチしているけど、なんの為なのか聞いてもいいのかな。
セツが模した小さな俺の小さな俺がぶるんぶるんと揺れるのを見ながらセツが説明するのを聞いていたが、纏めると単純な話だった。
「要するにセツが取得したDNAを元にその姿を真似することが出来るってことなんだね」
『僕には主が言うでぃえぬえぃがなんなのか分からないけどぉ~主が言う様に僕が得た情報を元に色んな姿になれるんだぁ~例えば、こんなのとかにもねぇ~えいっ!』
「「「おぉ~」」」
セツはそう言うとゴブリン、オーク、バジリスク、コボルトにコカトリスへとその姿を変えて見せた。
「なるほど、セツは食べた獲物に変身することが出来ると……だが、そうなるとヒロ殿に変身することが出来るのはどういうことだい? はっ! まさか、ここにいるヒロ殿はもしかして既にセツに食べられ、セツが擬態したヒロ殿なのか!」
「違います!」
『違うよぉ~』
「ん? そうなると、さっきの説明がつかないのだが?」
「いえ、伯爵様。我々の身体の設計図は何もその身を全部食することをせずとも、髪の毛一本からでも入手可能なのです。セツは、俺といつも一緒ですし、寝る時にはセツに包んでもらったりしていたので、その際に髪の毛などの体毛をセツが取り込んでいたとしても不思議ではありません」
「……そういうものか。ふむ、まあ難しくてよくは分からないが、ここにいるヒロ殿は間違いなく本物であるということでいいのだな」
「はい、それは絶対に間違いありません」
「分かった。だが、オジーと子供達との関係性を否定するのはどうするのだ?」
「それはですね……」
伯爵様とオジーに子供達との親子鑑定の方法について説明すると、「困ったな」とだけ伯爵様が呟く。
「え? もしかして反対ですか?」
「いや、そうではない。オジーの問題解決については問題ないのだが、問題はその方法が周知された場合なのだよ」
「それはつまり……公にされたら飛び付く人もいるだろうし、ソッとしておいて欲しい人もいると言うことでしょうか?」
「ああ、その通りだ。客たる君が知っているかどうかは知らないが、我々貴族社会では嫡男が誕生し正式に嫡子として認められた後はご婦人の好きにしてもいいと言うのが不文律である」
「えっと、それって……」
「ああ、要するに異性関係については目を瞑ると言うことだ」
「それなら、それで問題ないのでは?」
「そうだな。だが、嫡子と認められた後に……不幸な出来事があった場合、正妻から産まれた子供が跡継ぎであると宣言したらどうなると思う?」
「どうって、認めざるを得ないんじゃないですか?」
「そうだな。今は誰も血筋を問えないからな。だが……」
「あ!」
「そういうことだ……」
伯爵様が気にしていること、予測していることが分かってしまった。
でも、まだ何も見えない先のことは置いといて、今はオジーの問題を解決する方が先だ。
俺は伯爵様にそう提言し、伯爵様も「分かった」と了承し話を進めると伯爵様も俺の説明を理解してくれたようだ。
「要するにオジーの子であれば、その設計図とやらにオジーのモノが半分はあるハズだと……そういうことか」
「はい。そういうことです」
「ふむ。繰り返しになるが、それは確実なのか?」
「絶対に確実とは言えません」
「それは何故だ?」
「はい。もし相手……この場合はXとしましょう。このXとオジーがなんらかの姻戚関係にあった場合にはXもオジーと重なる部分があります。ですが、子供に対しては半分以上ない場合には親子関係を否定出来ます」
「そうか。ならば、オジーの家族については私が責任を持って対処しよう」
「いいのですか?」
「旦那様……」
「オジーよ。お前はもう私の家族も同然だ。そんなお前を騙した連中を私も許せない。だから、任せてくれないか。決して、お前にも子供達にも悪い様にはしないから」
「奥さん達は……ま、知ったこっちゃないですよね」
「ああ、当然だ。ふふふ、純情な男の心を弄んだ罪がどれほど重いのか……思い知ることになるだろう。フハハハ!」
「……魔王降臨?」
「ヒロ様、大丈夫でしょうか?」
「オジー様、ガツンとヤッちゃいましょ!」
伯爵様が黒く染まらないことを祈りつつ、作戦の詳細を詰めていくのだった。
でも結局はDNAによる親子鑑定も周知されてはいないから、どうやってもゴリ押しにしかならない。
それでも取っ掛かりとしては十分だ。
後はそれを足がかりに真実を詳らかにすればいいだけだ。
最後まで読んで下さりありがとうございます。
おもしろい!
続きはどうなの!
応援してあげてもよくてよ!
と、思ってくれた方。
恥ずかしがらずに下にある☆を★にしてみませんか?
★は★★★★★までありますから好きなだけどうぞ!




