第25話 正直、嬉しくない
オジーの休暇申請から三日後、オジーを迎えにと王都の近くのいつもの場所へ転移すると、大きな荷物を背負ったオジーがそこにいた。
「オジー、随分と大荷物だね」
「お迎えありがとうございます。妻達や子供達にお土産を買っていたら、こんなになりました。ご迷惑なら……」
「待って! 大丈夫だから、持てるから!」
「そうですか。では、お願いします」
「はいはい、で「会わせませんよ」……えぇ! じゃ『主ぃ~ちょっと、それはどうかとぉ~』……冗談、冗談だからセツまでそんな風に俺を見ないでよ。ほら、オジーからもなんか言ってよ」
「……」
「オジー?」
「いいですから。早く収納して下さい。そうしないと……『ガサッ』……ほら」
「わ、分かったよ。転移!」
オジーにちょっとだけオジーの家族達に会わせてくれないかなとお願いしようとしたら瞬時に断られたので、それならとオジーの荷物を少し減らそうかなと考えたところで、セツから止められると同時にジト目で見られているような気持ちになる。
セツに目はないんだけどね。
そしてオジーからは意味深な言葉を告げられると共にオジーの後ろから何かが近付いてくる雰囲気を感じたので慌てて御屋敷へと転移する。
「あ! もう、照れ屋さんなんだから……そこがまたいいんだけどね……でも、次は逃がさないから」
茂みから出て来た何者かはそんな言葉を残して、その場を後にする。
御屋敷に転移すると、オジーは伯爵様に挨拶して来ますと部屋を出て行ったので、俺はオジーから預かった荷物をインベントリから取り出し床に置く。
「また、随分と買ったんですね」
「家族へのお土産だってさ」
「あぁ~なるほどですね。多いですからね」
「だね」
インベントリから先輩愛用のコスメセットを三組取り出すと、オジーに渡してとユリアにお願いすると「オジー様に会わないんですか」と聞かれたので「会っちゃうとまた揶揄いそうになるから」と平原へと転移する。
『主ぃ~何をするのぉ~』
「ん~ちょっと小遣い稼ぎかな……」
『狩るのぉ~』
「そ、狩って狩って狩りまくる!」
『よ~し、じゃぁ~いっちゃうよぉ~』
「うん、お願いね」
『分かったぁ~』
冒険者ギルドで予めいくつかの依頼を受けやって来たのはお馴染みの原っぱで、これから森の中へと入って行く。
『主ぃ~競争だねぇ~』
「え?」
『ふふふ、僕も強くなったんだよぉ~知ってるでしょぉ~』
「そりゃ、そうだけど……ムチャはダメだからね」
『分かってるよぉ~じゃあ、行くねぇ~』
「あ……」
俺が止める間もなくセツは森の奥へと入って行った。
「行っちゃったかぁ……もしかしてこれが子離れってヤツなのかな? それにしては早過ぎだよ。あ~あ」
どこか嬉しそうに跳ねながら森の奥へと進んでいくセツを見送りながらそんな風に感傷的な気分になるが、いつまでも落ち込んでいてもしょうがないと依頼達成の為に俺も森の奥へと入って行く。
暫くしてセツと合流するとセツは『むふぅ~』と鼻息も荒く俺に挑発的な態度を取るので、俺は少し悲しくなる。
『どう? どうなのかなぁ~主ぃ~僕の勝ちでいいのかなぁ~」
「それはどうかな?」
『え? えぇ~』
セツは捕食した獲物をその場に吐き出すと、勝ち誇った風に俺を挑発する。
だから、俺はその挑発に乗り同じ様にインベントリから仕留めた獲物を放出すると、そこには魔物の小山が出来た。
『……』
「で、なんだって?」
『意地悪ぅ~』
「だって、セツに負ける訳にはいかないじゃん」
『大人気ないよ主ぃ~』
「いいの。まだセツに追い越される訳には行かないから」
『分かったよぉ~でも、まだ一敗だかねぇ~』
「はいはい、じゃ帰るよ」
『はいは~いぃ~』
「ハイは一回!」
『はいは~いぃ~』
「……もう、帰るよ」
魔物を回収しセツを右肩に乗せると御屋敷へと転移する。
すると、そこにはオジーが待っていた。
「やっと帰ってきましたか」
「オジー? どうしたの? オジーの荷物はそこに置いてたけど?」
「ありがとうございます!」
「……えっと、特にお礼を言われる様なことはしてないけど?」
「いえ。それでも礼は言わせて下さい。本当にありがとうございます。では、失礼します」
「あ、うん。ごゆっくり……」
部屋から出て行くオジーの背中にそう声を掛けるとオジーはこちらを振り返りぺこりと頭を下げた後、部屋から出ようとするが悪戦苦闘している。
「あれ?」
「オジー?」
「あ、いえ。ちょっと待って下さい。あれ? おかしいな……」
「オジー、ムリだよ。てつだ「いえ、結構です! ふん! ふん! あれ……そんなハズは……」……ね、オジー」
「ダメです。っていうかイヤです!」
「もう、揶揄ったりしないからさ。それに俺がオジーの家を覚えていた方がよくない?」
「……お願いします」
「ふふふ、そうそう。人間、素直が一番だからね」
「……どの口が」
「ん?」
「あ、いえ。お願いします」
「はいはい」
背負った荷物が部屋の入り口で支えて部屋の扉から出られなかったオジーは何度か試して見たが、どうやっても出られないと悟り、俺の方を向いてからイヤそうに「頼みます」と言うので荷物をインベントリに収納してから「さ、行こうか」とオジーに促せば「はい……」と余り気乗りしない感じで一緒に御屋敷を出るのだった。
「いやぁ~オジーの奥さん達と会えるのが楽しみだね」
「……」
「オジー、もう折角久しぶりに会うのにもっと楽しそうに嬉しそうにしなよ」
「……これが素ですから」
「もう、そんなこと言うのなら、荷物出さないぞ」
「くっ……卑怯な!」
「うそうそ、そんなことはしないから。ほら、早く行こう」
「ハァ~分かりました。ですが、絶対に手を出したり余計なことは言わないで下さいよ」
「もう、何遍も言わないでよ。分かってるって。ダイジョブダイジョブ」
「ハァ~もう、いいです」
オジーはそう言うととぼとぼと歩き出す。
「俺、悪くないよね?」
『主ぃ~大人気ないよぉ~』
「えぇ~」
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