第24話 うらやまけしからんって話
御屋敷に戻るとユリアを呼び出して伯爵様への面会を頼むと「差し障りなければ、どの様なご用件かお伺いしても」と言われたので、オジーに休暇を取らせてあげたいからと言えば「あ~ご家族と久しく会ってないでしょうから、喜ぶでしょうね」と優しげに微笑む。
なので、ユリアに「オジーの家族に会ったことがあるんだ」と言えば「ありますよ」と返され、ちなみにどんな感じの人なのかと問えば人差し指を顎に当てながら「そうですね……」と思い出している様子を見せる。
「そうですね、一人は「え?」……なんですか? まだ、何も言ってませんよ」
「え、いや。今『一人は』って言ったよね」
「ええ、言いましたよ。それがどうかしたんですか?」
「いやいやいや、一人はってことは……まさかとは思うけど……」
「ええ、オジー様には三人の奥様がいますよ。お子さんも確か、それぞれとの間に何人かいたと聞いています」
「聞いてないヨォ~」
「そう、言われましても事実ですし。どうしました?」
「く……」
ユリアはオジーが家族と長く会えていないことを知っていたので、休みをもらえると聞きオジーにとってよいことだと優しく微笑んで見せたが、俺がちなみにオジーの奥さんってどんな人かと聞けば、三人もいることが判明しショックを受けてしまう。
いや、オジーに対し失礼だとは思うが、今のオジーの風貌からちょっと想像がつかないと落ち込んでいる様子の俺を心配そうに見ていたユリアにそう応えれば「オジー様にだって、過去はありますから。それに……」とユリアが続けて話したのは、オジーは嘗て冒険者として活動していた頃のパーティーメンバーと一緒になったと言うことらしい。
「なんて、うらやまけしからん……」
「どうしました?」
「いや、別に……」
「もしかして、ヒロ様も考え直したんですか?」
「いや、そういう訳じゃないけど……」
「そうですか。では、私は旦那様に、その旨をお伝えしてきます」
「うん、頼むね」
「はい。では、失礼致します」
ユリアを見送り、ハァ~と深い溜め息が思わず出てしまいセツが『主ぃ~』と心配そうに触手を伸ばし、俺の頬を撫でる。
「ありがとう、セツ。大丈夫だから……うん、大丈夫! 大丈夫なハズ……」
『主ぃ~?』
「……」
心配してくれるセツに大丈夫だと応えてみたものの「ホントに俺は大丈夫なんだろうか」と急に不安が見えないどこかから駆け寄ってくるのを感じた。
今の俺は冒険者ギルドに登録してはいるが、しっかりした生活基盤と言えるほどではない。
どちらかと言えば、短期アルバイトみたいな感じだろうか。
先輩みたいにコスメ全般を手掛ける器量もなければ、財力もない。
今の自分は王都に招聘されるまでは伯爵家の食客という身分でしかない。
こんな俺が家族を養っていけると胸を張って言えるだろうか。
答はもちろん『NO!』だ。
「ハァ~そりゃ、元々女性関係は苦手だと放置していたのは認めるけど、異世界に来てから急に異性に寄って来られたら身構えるのもしょうがないだろ……」
『主ぃ~大丈夫ぅ~?』
「うん、多分大丈夫だよ。ありがとうね。でもさ、先輩だって誰も身寄りがないこの世界で不安から俺に頼っているだけかも知れないし……セシルは焦っているだけだし……ユリアも上手くいけばと思っているだけだろうし……ん~どうしたものかな」
『……』
「ん? どうしたセツ?」
『ん~誰かもう一人忘れている様なぁ~』
~とある冒険者ギルドにて~
「クシュッ……」
「ミーさん、風邪ですか?」
「ううん、大丈夫よ。ありがとうね」
~再び御屋敷~
「ヒロ様、旦那様からオジー様の休暇申請の許可は下りました。そして、これが王都の御屋敷へオジー様が休暇を取る旨が書かれていますので、オジー様へ渡すようにと預かりました」
「ありがとう。セツ、お願い」
『は~い』
セツに手紙と『よかったね。ご家族とごゆっくり』と一言寄せたメモを転送してもらうと、直ぐにオジーから返事が来た。
「早っ!」
「ホント、どんだけ待ちわびていたんだろうね。どれどれ……ん?」
「何が書いてあるんですか?」
「近い! 近いから!」
「あ、すみません……」
「ホント、そういうのはやめてね」
「ええ、出来るだけ注意します。エヘッ」
セツから受け取ったオジーからの手紙を読んでいると、その内容に持ったユリアが横から覗き込むが、色んな柔らかい感触に慌ててユリアを離すと共に注意する。
改めてオジーからの手紙を読むと手紙には休暇取得のお礼と『いつになりますか?』とあったのでオジーに対し「なんのこと?」と渡せば『いつ、迎えに来てくれますか?』と返された。
だから、俺はちょっとした意趣返しで「二ヶ月も休暇があるんだから、大丈夫でしょ」と渡せば『冗談は止めて下さい! 自力で帰ったら往復するだけで休暇が終わるじゃないですか!』と紙面からツバが飛んで来そうな勢いだ。
ちょっと可愛そうだったかなと「じゃ、今すぐ! ナウ!」と渡せば『すみません。とても有り難いのですが、せめて明日以降でお願いします』と返された。
「ちょっと揶揄いすぎたかな」
「そうですね」
俺の呟きにオジーとのやり取りを静観していたユリアもボソッと漏らす。
「じゃあ、オジーの都合のいい日を教えて」と渡せば『後日、必ず連絡致します』と返って来たので、オジーの件はこれでヨシ! と。
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