第18話 あんなに元気だったのに……
「これで検分は終わりだ」
「はい、ありがとうございました。じゃ、セ「ちょっと待て!」……はい?」
「まさか、まさかとは思うけど……それも……なのか?」
「ええ、そのつもりですけど何か?」
「何かってお前、メイジにウォリアーにジェネラル、それにクイーンまで食わせたんだぞ。何もキングまでやらなくても……キングの魔石なら……」
「俺はセツが喜んでくれるなら、それでいいんです」
「なあ、もう一度よく考えてみてくれないか。キングだぞ! 滅多に出ないんだぞ!」
「だから?」
「だから……って、あ~もういいよ。だが、今回限りだからな!」
「今回限りも何も依頼達成の条件には入ってませんよね?」
「ぐぬぬ……」
「それよりも早く巣の確認をお願いしますね」
「ああ、分かったよ。ったく」
ギルマスはもう一度考え直せと言うが、ウォリアーをセツに与えた時から、ずっと「あ~」とか「勿体ない」とか「正気か!」と言っていたが、俺は喜んで吸収するセツの為ならそんな雑音なんか気にしない。
「ほら、セツ。ギルマスに邪魔されない内にさっさと食べちゃえ」
『ピィ!』
セツに「いいよ」と言うと直ぐにその身体を大きく広げ、身の丈五メートルを超すであろうゴブリンキングの身体を包み込むと嬉しそうにその身体をフルフルと震わせながらゴブリンキングの身体を溶かし吸収していく。
「う~ん、セツが喜んでいるのは嬉しいんだけど、シュワシュワと溶かされていく過程は流石にグロイな」
「あ~勿体ない……」
「ギルマス、セツの食欲が失せるんで止めて下さい」
「お前よぉ~そうは言うが……ハァ~こんなことなら、ちゃんと依頼書に書いておくべきだったな」
「どゆこと?」
「今後、今回みたいなことがないように依頼で倒した魔物は全てギルドに卸せとな」
「うわぁ~それってマズいんじゃないですか?」
「まあな、だが今回みたいなことがあれば……」
そう言ってギルマスは俺とセツをチラリと一瞥すると面白くなさそうに顔を顰める。
「それはそうと魔物の集団暴走の兆候があったと報告しなくてもいいんですか?」
「ああ、それもあったな。だが、証拠となる魔石もないしな」
そう言ってギルマスはまた俺の方をチラリと見る。
「別に魔石がなくても巣の数とか、それにキングやクイーンがいたのはギルマスもその目で見たでしょ。なら、それでいいじゃないですか」
「いや、だがな……」
「それともギルマスはそこまで信頼されていないんですか?」
「ぐ……分かったよ。取り敢えず報告書は上げるよ。って言うか、お前に言われなくてもそれくらいはするわ!」
「なら、いいんですけどね」
「そう、思うんなら一個くらい残してくれてもいいじゃないか」
「済んだことをいつまでもグチグチと……」
「少し愚痴るぐらいは許せよ」
「はいはい、じゃ「待て!」……はい?」
「巣の場所を教えろ」
「ああ、そうでしたね」
魔石のことをまだ諦めきれないのかしつこいくらいに嘆息しているギルマスに少々いらつきながらも巣の場所を教えろと言われたので、部屋に戻りギルマスの前で空間把握を使って詳細な地図を描いて渡す。
「はい、どうぞ」
「おう。こりゃまた随分と細かいな」
「大雑把の方がよかったですか?」
「あ、いや。これでいい。これがいい! ありがとうな」
「じゃ、早めの確認をよろしくお願いしますね」
「ああ、そのくらいなら残っている冒険者でも出来るだろう。他に何かあるか?」
「じゃ、これを」
テーブルの上にゴブリンの犠牲者になった人達の遺品と思われる物を並べる。
その中には冒険者ギルドのライセンスカードも何枚かある。
「管理はギルドにお任せします」
「ああ、分かった。ホントにありがとうな」
「いえ、これも役目の一つだと思っていますので。では、失礼します」
「ああ」
冒険者ギルドを出て御屋敷目指して歩いていたが、セツの様子がどこかおかしい。
俺の右肩に乗っているのだが、小刻みに身体が震えていると思っていたら、その震えがピタリと止まると同時に柔らかい光に包まれる。
「セツ? もしかしてヤバイ?」とセツに話しかけてみるが、『ピ……』と弱々しい返事が返される。
「セツ?」
『ピ……』
回りに人がいて俺の方を興味深げに見ているのが分かるが、今回はセツの一大事だ。人目よりもセツの方が大事! なので、その場で御屋敷の部屋に転移すると直ぐに肩に乗せていたセツを手の平に乗せ呼び掛ける。
「セツ、セツ、お願いだから返事してくれよぉ!」
『……ピ』
「セツ? セツ? お願いだよ。返事してくれよ、セツゥ!」
『……』
やがて光っていたセツの身体もスゥ~ッと電池が切れた様に明るさをなくし、いつもの半透明の身体に戻るが、手の平の上でプルプルとするだけでセツからの反応は何もない。
「セツ、ウソだよな。ウソだろ。セツ……俺を一人にするのかよ! なんとか言えよ! セツゥ!」
『ピ……』
「セツ?」
『……』
必死に呼び掛け、セツが少しだけ反応したが、直ぐに反応しなくなり、身体の張りもどことなくなくなり水が抜けた水枕みたいにペタリと平たくなる。
「セツゥ!」
『……』
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