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突然だけど、空間魔法を頼りに生き延びます  作者: ももがぶ
第2章 新天地を求めて
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第8話 勝手にどうぞ

 自室に戻り、オジーと今後の予定を再確認していると、何やら部屋の前の廊下が騒がしいのでオジーに確認してもらうと慌てて扉を閉めるので「どうしたの?」と確認すれば「出ないで下さい!」と言われる。


「え、どうしたの?」

「とにかく、落ち着くまでは出ないで下さい。いいですね!」

「あ、うん」


 オジーがそう言い部屋の扉を開け廊下に出ようとした所で、扉の向こうから先輩が「ちょっと聞いてよ!」と飛び込んで来る。


 オジーもいきなりのことで先輩を止めることは出来なかったが、その後から入って来ようとするメイドさんの集団はなんとか押さえ込み扉を閉めることが出来た。


「えっと、どうしたんですか? って言うか、その前に髪を乾かした方がいいと思うんですけど」

「え? ドライヤーがあるの?」

「いや、ないですけど?」

「じゃ、どうやって?」

「あ~ん~ちょっと、こっちに来てもらっていいですか?」


 先輩は俺が用意したと言うか、先輩から預かっていた購入したばかりの部屋着らしき物に着替えてはいたが、髪の毛は濡れたままだった。


 確かに先輩が言うようにドライヤーみたいな物はないので、普通ならば髪を乾かすことも難しいけど、ここは魔法がある世界なので先輩を呼び寄せ椅子に座ってもらうとその後ろに立ち手から程よい温度の熱風を出しながら反対の手で髪をすきながら乾かす。


「あら、便利! ありがとうね」

「で、何があったんですか?」

「ヒロがそれを言うの?」

「え?」

「あのね……」


 先輩が言うには俺がよかれと思い先輩のアシストとしてお風呂に入ったメイドさんがやらかしたそうだ。


「えっと、なんかすみません。でも、それだけですか?」

「だけじゃない!」

「え?」


 先輩が言うには、最初は普通に先輩が困らないように色々と教えてくれていたそうなんだけど、先輩が使っているボディシャンプーや諸々に興味を持ち、先輩に断り使い勝手をちょこっと試していただけなのに、気付けばその場で全裸になり勝手に使い始めたまではガマン出来たそうだけど、そのメイドさんを探しに来た他のメイドさんも気付けば全裸になってしまっていた。


 先輩もその頃には洗い終わってゆっくりと浸かっていただけなのでそんなことになっているとは特に気にはしていなかったが、メイドさんが次々に居なくなれば自然と「どういうことだ?」と疑問を持たれるのは当たり前の流れだろう。


 そんな風に次から次へとお風呂場にはいつの間にか大半のメイドが集まることになれば、屋敷の主人である奥様も「何をしているんですか!」と浴室へと怒鳴り込むことになるのだが、既に使い心地を知っているメイドが「まあまあ奥様も」と勧めてくれば「あら!」となる。


 先輩はボトル類は回収するのを諦め、お風呂から出ようとしたらガシッと腕を掴まれ「え?」と驚くと奥様が「もうないんだけど?」と空のボトルを振っている。


「そう言われましても、それだけしかないんで……」と断り出ようとするが腕は掴まれたままなので、先輩は奥様に「あの……」と申し訳なさそうに言いながらも「なんで私が」と思わずにはいられない。


 だけど奥様も「そんなこと言わずに、ホントはあるんでしょ?」と返してくる。


「あの……私はたまたまこちらに来た時に持っていた物を使っただけなので、それを使い切られてしまっては、もうありません」

「え……」


 奥様は手に持ったボトルを繁繁と見ながら「どうにかならないかしら?」と小首を傾げられても先輩にはどうしようも出来ないので「すみません」とだけ断り腕を強めに振り払いなんとか着替えを済ませ廊下に出ようとしたところで、再度「やっぱり、お願い!」と奥様だけでなく他のメイドからも身体に縋り付かれてしまうが、ここで先輩の『絶対保護』が働き奥様達を振り払い廊下に出たところで、あの騒ぎだったと言うことらしい。


「で?」

「で? って何?」

「いや、だから俺にどうしろと?」

「謝って……は、もらったけどなんか納得いかない……」

「いや、空のボトルでも、その裏には成分表が書かれているでしょうから、どうにかなるんじゃないですか?」

「あ!」

「まあ、別にそんなことしなくても、こ「ダメ!」こ……え?」


 先輩は自分が大変な目に遭ったのは俺が余計なマネをしたせいだと言いたそうだったが、形だけでも一応の謝罪は済ませているのでなんとなく尻すぼみになってしまう。


 そして、空になった容器の裏には成分表が書かれているから、何度も試行錯誤を重ねれば近い物は出来るだろうと話せば先輩もそれに気付いた様だ。


 でも、先輩にはその完成を待たなくても複製(コピー)した物がこちらにと出そうとしたところで先輩に慌てて止められる。


「今、ここでそれを出すのはスッゴく危険だわ!」

「あ~分かりました」

「ふぅ~じゃ、これは二人だけのヒミツってことで、ね?」

「コホン……」

「あ……」


 インベントリから出そうとしていた物を慌てて引っ込めると先輩が二人だけのヒミツと強調して言うが、オジーの態とらしい咳払いにバツが悪そうな顔になる。


「ま、私から言うことはありませんが、ヒロ様も注意して下さいね」

「……はい」


 これで先輩の話も終わったと思ったところで扉がノックされる。


「……あまり、いい感じがしないんだけど」

「……私も」

「「いないって言って!」」

「言える訳ないでしょ!」

「「……」」


 さっきの騒動の後に部屋の扉がノックされるのだ。


 考えられるのはボディシャンプーや諸々のお代わりの要求か、製造についての相談に違いないと先輩と顔を見合わせて嘆息する。


 製造云々については、日本じゃないので特許云々はないから問題ないのだから好きにしてもらっていいんだけど、無視する訳には行かないのが居候としての辛さだな。

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