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突然だけど、空間魔法を頼りに生き延びます  作者: ももがぶ
第2章 新天地を求めて
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第5話 貴族は面倒なんだから

「ひかれる? まあ、いいです。じゃあ、続きから……」と先輩のことは横に置いて、俺が今まで見知ったことを掻い摘まんで話すと「へぇ」とか「ほぉ」と漏れ聞こえてくるけど、大丈夫だよね。


「それじゃ私もその……国王とやらに会わないとダメなの?」

「ん~そうですね。多分ですけど、会わないってなると……」

「なると?」

「スッゴく面倒なことになると思います」

「げっ!」


 先輩に国王と会うのは避けられない必至だと伝えれば凄くイヤそうな顔になり、先輩の口から聞いてはいけない言葉が出る。


「げって……」

「あ、ごめんなさい。でも、いきなり国王はちょっと勘弁だわ」

「ま、その前にここの領主でお貴族様の伯爵に会いますから大丈夫じゃないですか」

「あ~貴族ってホントにいるんだぁ。どうにかならないの?」

「ムリです」


 貴族を相手にするなんてイヤだと言うが、お世話になっているこの御屋敷も貴族様の御屋敷なんだからムリを言わないで欲しい。


「え~そこは異世界の先輩として後輩を助けようとか思わないの?」

「せ……ウララ、いいですか。今までの読んでいたラノベの世界ではなく現実世界なんです。斬られれば血が出る現実が待っているんです。そんな世界で貴族に逆らうってことがどれほど面倒か分かるでしょ」

「え? 怖いとかじゃなく面倒なの?」

「え?」


 貴族を相手にするのが面倒だから、なるべく問題を起こさないようにしたいと話せば先輩は不思議そうな顔をする。


「いや、だからね。普通なら『貴様!』って感じで無礼打ちされたりするんじゃないの?」

「え? されたいんですか?」

「いや、されたくはないよ。でも、ヒロが貴族に逆らうのはダメだっていうから」

「ええ、ダメですよ。だって、絶対に面倒くさいから」

「そこ!」

「え?」

「だから、『貴族が怖い』じゃなくて『貴族が面倒くさい』ってどういうことなの?」

「だって、面倒でしょ」

「いや、異世界初心者にそんな同意を求められても困るんですけど……」

「多分ですけど、ウララも俺も相手が何かしようとしても大丈夫だと思いますよ」

「へ?」


 貴族から何か物理的なことをされても俺を傷付けることは出来ないし、先輩のスキル『完全保護』も期待できる。


『完全防御』じゃなく『完全保護』が気になるところではあるけれど、『保護』してくれるのなら多分大丈夫だと思いたい。


 もしムリでも俺が守ることも出来るだろうし。


「と、まあそんな訳で一度会えば、後はないと思うから」

「で、私はその後、どうすればいいの?」

「えっと、好きにすれば「ナニソレ?」……えっと……」


 先輩も異世界で気になったところを旅してみるとかないのかなと「好きにすれば」と言ったところで、先輩に呆れられる。


「あのね、私は好きでここに来た訳じゃないの! それはあなたも同じだから分かるでしょ!」

「あ、はい……」

「それなのに……か弱い女の子一人放り出すって言うの?」

「女の子って……」

「何!」


 先輩も好きにすればいいのにと喉元まで出掛かって言葉だったけど、先輩も望んで異世界(こっち)へと来た訳じゃないと言われ、さすがに無神経だったかと反省する。


 でも、女の子っていう歳かなと不思議に思っていると先輩が不機嫌になるので、ここは無難にやり過ごすしかない。


「いえ、なんでも」

「それにヒロと一緒にいたいって、さっき言ったのはナシなの?」

「いや、そうじゃなくて……」

「もし、どこかに旅するのならヒロと一緒がいい! ダメ?」

「ダメじゃないけど……」

「じゃ、いいのね?」

「いや、いいとかじゃなくて……」

「もう、相変わらずハッキリしないのね。でも、勝手に着いていくからね。撒こうとか考えないでよ」

「わ、分かりましたよ」

「うん、それなら……」

「え?」

「もう、ほら! 早く!」

「へ? なんで()()()()()()?」

「違うわよ!」


 これで一通りの説明が終わり先輩の機嫌もどうにか上向きになった感じがしたところで先輩が「ほら!」と両腕を広げてみせる。


 俺はそのポーズを見て懐かしさから「すしざんまい」と声に出せば、先輩がまた不機嫌になる。


「もう、だから仲直りの抱擁(ハグ)でしょ! それとこれからもよろしくの抱擁なの! だから、ほら!」

「えっと、俺は純粋な日本人なんですけど?」

「私だってそうよ」

「いや、だからそういう日常は送って来てないわけで……」

「あ~もう、いいからほら! さっきここに来る時はしたクセに」

「あれは……」

「だから、あの要領でいいんんだから簡単でしょ。はい、ギュッ!」

「あ……」


 先輩に言いくるめられた感がしないでもないけど、ま……いいかな先輩もなんだか嬉しそうだし。


「コホン……もう、よろしいですか?」

「「あ!」」


 気が付けばオジーが(わざ)とらしく咳払いをする。


「いつから、いたの?」

「ノックくらい「しましたよ!」……え?」


 オジーにいつからと俺が問い、先輩がノックくらいはと零せば、オジーは何度もしましたと答える。


「まったく、何度ノックしてもご返事がないから『もしや何かあったのでは?』と思い、失礼と思いながらも扉を開ければイチャイチャとまあ、とりとめも無いことを恥ずかしげもなく……見ているこちらの歯が浮きそうでしたよ」

「えぇ~そんな要素がどこにあった?」

「もう、オジーさんったら……」

「そんなことより、旦那様の元までお願いします」

「はい」

「やっぱり、避けられないんだね……」

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