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突然だけど、空間魔法を頼りに生き延びます  作者: ももがぶ
第2章 新天地を求めて
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第3話 弁解の余地がない

「ヒロ様、ベッドを温めておきました。うふっ」

「また、勝手に……」

「空田……」

「あっ!」


 御屋敷の自室へと戻ると、もう日常茶飯事になりつつあるセシルとのやり取りだったけど、今日はダメだろ……なんて最悪なんだ……


「すぐに排除しますね」

「うん、頼むよユリア」

「ふ~ん、アレがセシルで……こっちがユリア……と」

「えっと、先輩……痛いんですけど……」

「あ、ごめんなさい。でも、随分とお楽しみの様で……私がどれだけ心配したと……」

「先輩、マジで痛いんですけど……千切れそうです……」


 セシルが俺のベッドに全裸で潜り込んでいるのをどこからか、さっと出て来たユリアがシーツに包んで部屋の外に放り出すと言うのが、ここ数日のやり取りになっている。


 それにしても、一応鍵は掛けているんだけど、どこから鍵を調達しているのかセシルは飽きもせずに俺の籠絡を狙っている。


 そしてあわよくば既成事実を作ってしまおうと虎視眈々と狙っているのだが、これもどこから見ているのか分からないが、いつの間にか現れたユリアに排除されるまでが大きな流れだ。


 だが、どうせなら部屋に入る前に排除して欲しいと思うのはムリなんだろうか。


 そんなことを考えているが、セシルが声を発した瞬間から俺の腰を先輩がギュッと抓っている。


 やっと離してくれた先輩は部屋から出て行く二人を見送りながら、「たった三日の間に随分と仲良くなったのね」と言ってきたので「へ?」と間抜けな口調で返してしまった。


「三日ってなんです?」

「何って空田が消えてから……え~と、今日で確か四日目? じゃないかな」

「はい? もう、二ヶ月以上は過ぎてますけど?」

「え?」

「はい?」

「ちょっと待って! え、どういうこと?」

「どういうことって言われても……俺にはなんとも……」

「あ! そうよ。空田のスマホは? 私のスマホ……あれ?」

「先輩のは俺が……はい、どうぞ」

「ありがとう。って、今どこから出したの?」

「そういうのは後で……これが、俺のスマホですけど」

「見せて!」

「あ……」


 先輩は俺が失踪してから四日目だと言うけど、俺は実質二ヶ月以上は異世界(こっち)で過ごしているから、ウソだと言われても証明する手立てがないから困ってしまう。


 だけど、先輩は思い出したように「そうだスマホよ」と言いだし、俺は先輩のバッグを渡し自分のスマホも取りだせば先輩が奪い取る。


「あぁ~ウソじゃなかった。本当に時間がずれてる……っていうか、私のスマホの方がカレンダーが進んでいるのはどうして?」

「えっと……」

「説明して!」

「実は……」


 ほぼインベントリの中に入れっぱなしだったから時間経過の影響を受けて無いためにスマホ内のカレンダーも止まっていた為だと言うことを先輩に説明するが「え?」としか言わない。


「空田が……あの伝説のインベントリを持っているってこと? そういえば、驚きの連続で言い出すタイミングを逃していたけど、アレって転移魔法ってことなの?」

「そうですね。俺の異世界特典です」

「ズルい!」

「いや、ズルいって言われても……」

「私なんか『絶対防御』って訳わかんないスキルなのよ!」

「ん? それはそれで凄そうですけど」

「じゃあ、交換して!」

「えっと、それは……」

「うん、ムリなのは分かってる。ちょっと言ってみただけだから」

「はい……」


 先輩は冗談だと言うけど、目は本気(マジ)だった……


「ヒロ様、そろそろよろしいでしょうか……」

「あ、ごめん。何?」

「何じゃありません! その先輩様も(まれびと)の様ですし旦那様にご報告しない訳には参りません。なので、今から私の方から簡単に報告をさせていただきますが,王都行きを含めて改めて予定を立てる必要があります。なので、ヒロ様には先輩様に簡単な状況説明をお願いします」

「あ、そうだね。分かったよ」

「では」


 オジーが部屋から出ると「じゃ、お願いね」と先輩が言うのでソファへと案内し異世界(こちら)での生活について、俺が知っていることをこと細かに説明する。


「えぇ! じゃあ、私は異世界(こっち)の言葉を離していた訳じゃないのね」

「はい。大昔の(まれびと)によって日本語が世界共通語として使われています」

「なら、魔法はどうなの? 当然、使えるのよね」

「ええ、この通り……ね」

「凄っ! でも、なんか悔しい……空田のクセに!」

「あと、それ!」

「え、何?」


 先輩がずっと俺のことを名字の『空田』で呼ぶので、先ずはそこから正してもらおうと思い指摘する。


「俺の名前をずっと空田と呼んでますけど、ここでは名字持ちは貴族のみなので」

「じゃあ、なんて呼べばいいの?」

「ヒロでお願いします」

「えぇ! ムリ! 付き合ってもいないのに、そんなのムリ!」

「そこをなんとか頑張って下さい。先輩!」

「なら、その先輩ってのも禁止!」

「え? 先輩は別にいいでしょ」

「なんか悔しいから禁止で!」

「えぇ~じゃあなんて呼べばいいんですか?」

「そりゃもちろん! う……」

「う?」

「待って待って! やり直し、私のことは(うらら)って呼びなさい!」

「分かりましたよ。麗さん」

「さんはいらない!」

「えぇ、だって先輩なのに……」

「こっちではそ……じゃなくてヒ、ヒロが先輩でしょ!」

「まあ、そりゃそうですけど……」

「じゃあ、仕切り直しで……コホン、ウララ……これでいいですか? ちょっと、聞いてます?」

「き、聞いてるわよ!」


 こっちは女性を名前で呼ぶことに慣れていないながらも気合い入れて呼んだのに呼ばれた先輩は俯いてしまっている。


 ちゃんと聞いてますかと顔を覗き込むと顔が真っ赤だった。


「もしかして風邪ですか?」

「ち、違うわよ!」

「でも、顔が「き、気のせいだから!」……そうですか」


 風邪でもひいたのかと心配したけど、どうも違うらしい。


「で、あの二人の説明がまだだけど?」

「二人? ああ、オジーは「それは聞いたわよ!」……えっと……」

「裸の女性(ひと)とメイド服の女性(ひと)よ。随分と親密なご様子だったけど?」

「ああ、裸の方がセシルで、一応『婚約者(仮)』で、セシルの方は『求婚者』ですね」

「不潔よ! ヒロのバカ!」

「えぇ~」

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