第44話 その計画はどうなの?
「え、それだけ?」
「それだけとは?」
「いや、だってさっきは何十章もあるような感じだったからさ」
「長過ぎと言われましたのでギュッとしてみました」
「してみましたって……」
「長いと言われたのはヒロ様ですよ。それなのに短くしたらしたで苦情を言われるのは納得がいかないのですが……」
「あ、いや。そういうことじゃなくてね」
「じゃ、なんなんですか!」
「……えっと、ごめんなさい」
セシルがあれほど盛大な感じでこれまでの人生を語りかけていたのに纏めると
・子爵家の三女
・行儀見習いで領主邸のメイドになる
・歳が歳なので親がうるさい
・このままだと側室、愛妾、愛人になるしか道はない
頑張れば三行で済んだかもと思える。
「行儀見習いとは言え、貴族家の人が働くの?」
「何が不思議ですか?」
「いや、だって子爵って確か……男爵の一つ上の位だよね。なら、そこまで生活苦とも思えないんだけど」
「ハァ~ヒロ様。ヒロ様は貴族に対し偏見を持っていらっしゃるようですね」
「偏見なのかな。だってさ、貴族の人達って煌びやかな衣装に高価な宝石類を身に着けてて豪勢な食事に高価なお酒をこれでもかっていうくらいに食べて飲んで、平民に対しては虫ケラの様に扱う……とか?」
「違います!」
「え、ごめん」
「ハァ~まったく……分かりました。旦那様が言うようにヒロ様にはこちらの世界のことを一から学んでいただく必要があることがよく分かりました」
「適当じゃダメなの?」
「よくありません!」
「ですが、全てが間違いというわけではありません」
「あ、やっぱりいるんだ!」
「ええ、ごく少数ですが……希にいるのは現実です」
セシルは俺が偏見を持っていると言っていたが、残念そうに極希にそういう悪いお手本の様な貴族がいると呟く。
「もしかしたら、そういう人達に会うこともあるのかな」
「……残念ですが、あります」
「えぇ~」
「ヒロ様は客様ですから、そういう物珍しさもあってなんとか縁を持ちたいと思われるでしょうから」
「それはなんとかならないのかな」
「申し訳ありませんが、どうしようもありません」
「避けられないんだ。じゃあさ、そういうのだと教えてくれることは出来るかな?」
「はい。それは必ず」
「じゃ、お願いね」
「はい」
俺は話は終わったと冷めたお茶を飲み干してからセシルをジッと見る。
「何かついてますか?」
「ん、いや。まだここにいるのかなって思って」
「……邪魔ですか?」
「邪魔って訳じゃないけど、ずっと一人が長かったから同じ空間に人……それも異性がいるのに慣れて無くて」
「じゃあ、手っ取り早く「だから、脱がないの!」……チッ」
俺はセシルがまだこの部屋にいるのかと思っているとセシルがなぜそう邪険にするのかと聞いて来たので素直に異性と同じ空間に長時間いるのが慣れないと言えば、セシルが服を脱ぎかけたので慌ててそれを止める。
セシルは「こういうのは接触すれば慣れますから」と言いながら服を脱ぐのを止めさせて「だから、段階があるでしょ!」と強めに言えば舌打ちされてしまった。
「そういう性格だから、今まで売れの「なんでしょうか!」こ……いえ、なんでもありません」
セシルは俺の目から見ても美人の類ではあるし、均整の取れた容姿なので異性からは引く手数多だろうと思っていたが、どうやらセシル自身の性格に難があるらしいと感じてしまう。
それはセシル自身も感じているのだろうが、直す気はなさそうだ。さっきも素直に「ハズレだと思っていました」と言われてしまったし。
取り敢えずは俺の教育係と言うこともあり存外に扱うつもりもないが、焦ってセシルの計画に乗ってコトに及ばないようにしなければいけないと肝に銘じておこう。
「それよりも今後の計画とかあるの?」
「ふふふ、聞きたいですか。では、お話しましょう。まず、ヒロ様には近日中に私の両親に会って頂きます。それから、お姉さま達の嫁ぎ先にも顔繋ぎをしないとですね」
「え、ちょっと待って!」
「まだ、お話の途中ですよ。そういうのは礼儀を欠く行為として褒められるものではありません」
「いや、だって「だってじゃありません! まだ、式の話もあるのに」……式?」
「はい。ヒロ様は神前ですか、人前ですか? あ、こちらでは神仏習合なので仏前はありませんから。で、お好みは? まさか、式自体がいらないとか言いませんよね?」
「ちょ、ちょっと待って!」
「ですから、話の途中で「いやいやいや、そもそも計画自体が違うよね?」……違いませんよ」
「いや、だってこっちの世界の常識を教えて貰うのになんでセシルの両親やお姉さん達に会う必要があるのさ」
「何も不思議なことじゃありません。私とヒロ様の結婚式までに必要なことですから」
「……」
俺はセシルに俺の教育係としての今後の計画を聞いたのにセシルは俺との計画を延々と話し始めてしまった。
「セシル、俺は教育係としての計画を聞いたんだけど?」
「はい。ですから教育係との計画を話しています。それが何か?」
「えぇ~セツ、どうすればいいの?」
『ピ?』
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