第43話 そういうことはまだ早いから!
「チェンジって、どういう意味ですか! 私と生涯共にすると約束してくれたのではないのですか!」
「いや、だからって……会ったその日に寝食を共にすると言われても重いって……」
「ですが、客様の世界では珍しくないことだと聞いています!」
「あぁ~まあ、そういう世界の人もいるっちゃぁいる」
「なら「だからって俺がそうだとは思わないで欲しい」……どういうことですか?」
「何度も言うけど……」
俺は「悪いけど一緒に寝るのは勘弁してくれ」とセシルに言えば、日本では出会って直ぐにヤル人達もいたと聞いていると反論してくる。
そういう話を俺も知らない訳ではないし、同級生や同僚などから武勇伝の様に聞かされ羨ましく思っていたのも事実だが、今の状況とは少し違うんだとセシルに説明するが「分かりません!」と怒らせるだけだった。
セシルに言わせれば「別にヤリ棄てる気持ちがないのならいいじゃないですか!」らしい。だが、俺からしてみれば「これからのお付き合い」を大事にしたいからこそ軽々に物事を進めたくないんだと説明するが「そんなの詭弁です」と逆に押し切られそうになる。
「それに私の裸どころか、ヒロ様の裸も見せられ、互いに見せ合った仲じゃないですか」
「あ、先程はありがとうございました」
「あ、いえ……お礼を言われるほどでは……」
確かにセシルの全裸は見てしまった……しかし、俺が望んで見せてもらったと言うよりは閉じている瞼を無理矢理こじ開けられて見せられたと言う方が正しいと思っている。だから、それを錦の御旗にして迫ってこられても躱すのは難しくはない。だけど、セシルとは今後の付き合いもあるからマジメに程よいお付き合いをしたいと考えているのだが上手くいかない焦りからポロッと零れてしまう。
「なんで男の俺がヤリたくないと言って、セシルがヤらないのかと迫ってくるんだよ。これじゃ立場が逆じゃないか」
「あ……」
俺が呟いたことがセシルの耳に入ったのか、セシルの顔が急激に赤くなったかと思えば、今度は青褪めていく。
「……申し訳ありません」
「あ、いや……そんな……」
セシルは急にその場で土下座して謝るが、俺としては俺の気持ちが分かってもらえればいいだけなのでそこまでの謝罪を求めていない。なので、俺はセシルの前に片膝を着いて「これからも焦らずにゆっくりでお願いします」と右手を差し出せば、セシルはその手を両手でガッシリと掴むと「ホントですね?」とニヤリと笑う。
俺は「やられた!」と思ったが、どうせ逃げられないのだからとハァ~と嘆息してから左手でセシルの手をしっかりと覆い「ホントだよ」と言えばセシルは破顔し「宜しく御願いしますね」と俺の手を持ったまま、「さあ、行きましょ」と立ち上がり寝室の方へと移動するので「いや、だからダメでしょ」と引き留める。
「チッ」
「いや、舌打ちしたよね? 俺の話を分かってくれたんじゃないの?」
「分かりましたよ。イヤと言うほど分かりましたし、しっかり理解したつもりです」
「なら「そういう流れってあると思うんです!」……いや、ないから」
「チッ」
「また……やっぱ「あぁ~ウソです。イヤです。もうしません! 焦りませんから!」り……ホントだね?」
「はい……出来る範囲でですが」
「そこはウソでも必ずと行って欲しかったよ。ふぅ~でも、まあいっか」
俺は先ずは落ち着いてお互いを知ることから始めようじゃないかと部屋の中央に置かれているソファに座ろうと提案すると、セシルはお茶を用意しに部屋から出て行った。
「ハァ~これから大丈夫かな? ねぇセツ」
『ピ?』
セシルが煎れてくれたお茶を飲みながら互いに自己紹介から始める。
「じゃあ、俺からね。俺は日本で生まれ日本で育って、大学を卒業した後にIT関連会社に就職した二十三歳でほぼ一週間ほど前にこの世界に流れてきた客だ」
「……三つも年下ですか。でも、三歳差はちょうどいいと言いますし『年上の女房は金の草鞋を履いてでも探せ』とも言われていますし、ある意味理想的な組み合わせですよね」
「えっと、気になるのはそこなの?」
「大事なことですよ。歳が違えば、世代間格差が生じるのですから!」
「いや、その前に文字通りに育ってきた世界が違い過ぎるから」
「あ、そう言えばそうでした」
「いや、まいいけど……で、セシルの番だよ」
「はい! では、お聞き下さい。私のこれまでの人生を!」
「えっと、自己紹介だよね?」
「はい、そうですよ。ソレ以外になにか?」
「なんでもない。聞かせて」
「はい、では……第1幕『私が生まれるまで!』を「ちょっと、待とうか」……まだ、始まってませんよ?」
セシルは第一幕として多分だけど、母親のお腹から出てくるまでを話そうとしている気がしているのかなと思い、現在までに何幕あるのかと気になり慌てて止める。
「いや、ちょっと待ってよ。産まれるまでが第一幕なら、今の現時点まで何幕の予定なのさ」
「えっと、そうですね。ざっと五十は行くかと「却下で」……えぇ!」
「いや、自己紹介だからね。何も自叙伝を聞かせて欲しいという話じゃないから」
「自叙伝を希望ですか、それなら寝物語にでもお聞かせしますよ」
「あるのかよ」
俺はそういうのじゃなくてもっと簡単に説明して欲しいとお願いすれば、セシルは「私のことをもっと知って欲しいのですが」と不満そうにしながらも「では」と前置きして話してくれた。
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