第27話 やっちまった……のか?
俺は革サンダルとは別にスリッパも作ってもらい帰ろうとしたところで、お爺さんに呼び止められる。
「一つ、言い忘れていたことがあったのを思い出しての」
「大事なことなの?」
「ん~それがな、大事なことのようで……そうでもないような……」
「じゃあ、その程度ってことじゃないの」
「じゃがな、それがどうも喉の奥に魚の骨が刺さった様な感じでの、大事なことの様な……そこまで大事じゃなかったような……どうもハッキリしなくての」
「ん~よく分からないけど、お爺さんがそこまで気にしているのなら、大事というか大事の様な気がしないでもないけど、そこまでキケンとかそういう感じでもなさそうなんでしょ」
「まあ、命のキケンはないというか、結果的に寿命が縮む様なことになるのかもしれんが、さしてキケンでもないというか……」
「なんかハッキリしないしキレが悪いね。でも、思い出しそうで思い出せないってことはそこまでキケンが差し迫っているってことじゃないみたいだけど」
「そうじゃな……すまんが思い出せそうにないわ」
「いいよ。他にも色んなことが聞けたし。な、セツ」
『ピ!』
「そうか、そういうてくれるなら甘えとくかの」
「うん、でも何か分かったら教えてもらえれば嬉しいかな。多分、もう少しは村長の家の近くにいるからさ」
「うむ、分かった」
俺はお爺さんに「じゃ」と軽く手を振り、作ってもらった革サンダルを履き、手には革のブーツを持ち、店を出れば先程お世話になったミーさんが歩いているのを見かけたので、思わず「あ、ミーさん」と呟けば、ミーさんは立ち止まり、こちらを振り返ったかと思うとダッと駆け寄ってきて俺の右手を両手で掴むと「責任取って貰いますからね。お忘れなきように」とだけ言うと「では、私は色々と済ませたい用事がありますので」と俺にいうか肩の上のセツに一礼してから踵を返す。
そんな言葉を残して去って行ったミーさんの背中を眺めながら「セツ、どういう意味だと思う?」とセツに聞いてみるが『ピ?』と答えるだけで、セツにも分からないみたいだ。
「だよねぇ……ま、いっか」と俺も歩き出そうとすると、店の扉が開きお爺さんが顔を覗かせ、俺がすぐ側に立っているのが分かると「おぉ良かったまだいたか」と胸に手を当て安堵する。
「えっと、何かありました?」
「あ、いやなさっき引っ掛かっていたことを思い出したんじゃよ」
「え、じゃあ教えてください。早く!」
「ちょ、ちょっと待て! ん? なんじゃったかの?」
「え~」
「お前が焦らせるからじゃ、ワシは悪くないぞ!」
「え~もう……ミーさんも訳の分からないことを言うし。お爺さんはボケちゃうし」
「ボケとらんわ! ん? お前、今なんと言うた?」
「お爺さんがボケて「じゃから、ボケとらん!」……じゃあ、何?」
「その前じゃ、なんか言うたじゃろ」
「だから、お爺さんがボケてるって……」
「じゃから、ボケてはおらんし、その件はもうすんだのじゃ。じゃから、その前に何を言うたんじゃ」
「その前……えっと、確かミー「それじゃ!」さんって、ミーさんがどうかしたの?」
「そのミーは、冒険者ギルドに勤めている若い猫系獣人の女性で間違いないかの」
「うん、そうだけど?」
「そうか。なら、間に合ったのかもしれんの」
「え、どゆこと?」
「あのな……」
まだ店の前にいた俺に対しお爺さんはさっき言いかけたことを思い出したと言って話しかけて来た。そして、その内容はどうやらミーさんに関連することだったらしくお爺さんは間に合ったかと安堵した様子で思い出したという内容を話してくれた。
「……と、言う訳での。獣人……特に猫系の獣人には気を付けるんじゃぞ。そして特に気を付けるのがトラ獣人だ」
「……」
「どうしたのかの?」
「いや、話がよく分からないんだけど、纏めるとどういうこと?」
「はぁ~あれだけ話をさせておいて全く理解出来ないとはのぉ~」
「ごめんなさい。でも……ちょっとよく分からないよ。だいたいさ、発情期ってどういうこと?」
「何が難しいことがあるんじゃ。獣人なのじゃから、当然じゃろ。まあ、ワシら人は年中発情しているようなもんじゃがな、獣人はある一定の周期でそういうのがあるそうじゃ」
「あ~そういうこと。なら、ミーさんは関係ないんじゃないの?」
「いや、それなのじゃがな……ん~なんというかの、少しばかり難しい場合もあるんじゃよ」
「へぇそういうのもあるんだね。でもさ、それがミーさんと何が関係するのかが分からないんだけど」
「それはの……ミーはまだ若い」
「うん、まあ見た目はそうだったね」
「若いから、発情期がまだ来てないかもと男どもが噂していたのを聞いたこともあるのじゃ」
「うんうん、だからそれなら「そうじゃないんじゃ」……え?」
「まだ発情期を経験していないんじゃから、何が切っ掛けで暴走するかが分からないんじゃよ」
「ん~やっぱりよく分からないや。それにミーさんにはさっき世話になったけど、そこまで危険な感じはなかったし、俺に対しても余所余所しい感じだったよ」
「まあ、お前がそれでいいなら何も言わん。じゃが、忠告はしたからの。それにミーは猫じゃなく虎じゃから間違えんようにの」
「はい?」
「ん?」
「いやいやいや、ちょっと待ってよ。猫と虎じゃ色々違い過ぎるんじゃないの」
「いや、知らんし」
「知らんって……」
「ワシは忠告しただけじゃぞ。どう相手するかはお前次第じゃろ。ま、なんにせよ回避出来たのなら心配することもないじゃろ」
「……」
「ん? どうしたのじゃ?」
「ねえ、どうしよう……」
「何があった? もしかして手遅れじゃったのか?」
「えっとね、『責任取ってね』って言われたんだけど、これって違うよね」
「まさか、お前、もう……」
「いやいやいや、何もしてないからね! ただ、ちょっと服の上からちょと触れただけだし」
「ふむ、その程度なら問題はなさそうじゃが……他に何をしたのじゃ?」
「えっと……」
俺は正直にミーさんに発泡酒を呑ませたことを話すとお爺さんは俺の右手を掴み「ちと中で話すかの」とグイグイと店の中へと引きずり込もうとする。
「え、何? ちょっと離してほしいんだけど」
「誰が離すか! ミーに出した物をワシにも出すんじゃ!」
「えぇ……」
『ピィ……』
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