第20話 それは誤解なんです。多分……
「ミー、いるんでしょ! 開けるわよ!」
「あ、マズい! セツ、お願い!」
『ピピィ!』
会議室の扉が『ドンドンドン!』と勢いよくノックされミーさんを呼ぶ声がしたので俺は焦ってヒール草を収納し、セツにはコンビニ袋とか俺が散らかしたゴミを吸収してもらう。
「入るわよ……何、酒臭っ!」
「……」
会議室に入ってきた女性は俺の方を一瞥すると鼻を抑え、テーブルに突っ伏しているミーさんに気が付く。
「ミー? ミーってば……あんた、何したの?」
「え、俺は何も……してないですよ。俺は……」
「じゃあ、ミーはなんでこんなところで寝てるのよ! ん? もしかして、酔っ払ってる? もしかして、あんたが?」
「いいえ」
「ん~でも、ここにはあんたとミーしかいないのよ。ここでミーが一人でお酒を呑んだって言うの?」
「そう……なりますかね」
「ならないわよ!」
「なら、聞くなよ」
「なによ!」
この状況は俺にとっても不利な状況になっていることは十分に感じてはいるが、肝心のミーさんがセツに抱き着き突っ伏したままなので、俺は不利なままだ。そして彼女の俺に対する不信感ゲージは恐らくだが振り切れる寸前だろう。俺はどうにも居た堪れなくなりミーさんを起こそうと手を伸ばせば、「何するつもりよ」と俺の手を彼女が振り払う。
「えっと、ミーさんを起こそうと思って」
「私がするから、ミーに触らないで!」
「……そんなに警戒しないでも」
「するわよ!」
「へ? なんでだよ」
「だって、こんな密室に二人っきりになるようにしている時点で十分、疑わしいわよ」
「え、いや、あの、ここに連れて来たのはミーさんで、どちらかと言えば俺が引き込まれた方になるんだけど?」
「ウソよ!」
「え?」
「だって、ミーがそんなことするワケないでしょ!」
「いやいやいや、そもそも会議室に入れられたのは「聞かない!」……え~」
「もう、うるさい!」
「「ミー(さん)!」」
俺と知らない女性と言い争っているのが、よっぽど五月蠅かったのかテーブルに突っ伏していたミーさんが上半身を起こし、軽く伸びをしながら「うるさい!」と文句を言う。
「さっきから、うるさい!」
「ミー、大丈夫なの?」
「ミーさん、俺がミーさんに悪さしたって疑われているんだけど、どうにかしてよ」
「……」
「ミー?」
「ミーさん?」
「ちょっと、待って……ねえ、なんであなたがここにいるの?」
「なんでってミーがなかなか戻ってこないから、呼びに来たんでしょ」
「あ、そうか。で、あなたはなんでまだいるの?」
「いや、そのままにしておけなかったし……」
「もしかして……ん、大丈夫みたい」
「あれ、疑われてる?」
やっと起きたミーさんは入って来た女性に対しなんでいるのかを聞いた後に、俺に対してはなんでまだいるのかと聞いてから自分の衣服に乱れがないかを確認しホッとしている。
そして、ミーさんは自分の体を守るかのように前で腕を組み、俺のことを軽く睨み付ける。まあ、男の前で寝てしまったのだから、俺が疑われるのは分からないでもないが、後から入って来た彼女は関係ないだろ!
「さっきから、私のことジロジロ見てるでしょ!」とミーさんに比べれば見るところがないのだが、それでも隠そうとするのは見ていてなんだかほっこりしてくるから不思議だ。
「な、なによ! その目は! バカにしてるでしょ!」
「……」
「そんな目で私を見るのは止めろよぉ!」
「チッパー」
「ミー」
「ちっぱ……ぃ?」
「「チッパー!」」
「お、おお。チッパーさんね。OK、了解です」
「ふぅふぅ~ミー、コイツキライ!」
「えぇ!」
初対面の彼女……チッパーさんにいきなりキライと言われてしまうが、俺は気にしない。それよりもセツを持ち上げ、自分の胸に当て少しだけ揉んでみて「あ、いい感じかも」と思い、チッパーさんを見れば「やっぱムリ!」と更に嫌われてしまったみたいだ。
人が折角パット替わりにセツをお裾分けしてやろうかと思っていたけど、止めた。「一生、ちっぱいに悩むがいい! ふん!」と見下した感じでチッパーを見れば、俺の意図に気付いたのか飛び掛かろうとしているのをミーさんが抑え込んでいる。
これ以上、ここにいちゃ怪我しそうだなとミーさんに「また、明日」と挨拶して会議室から出ようとすれば「二度と来るな!」とチッパーさんから有り難い言葉を頂いたので「チッパーさんもまた明日」と言えば「キーッ!」と言いだした。
チッパーさんを抑えているミーさんが気の毒になったので、ミーさんに向け軽く頭を下げてからセツを胸に抱いて会議室を出る。
「あ~もう少し、教えて欲しかったんだけどな」
『ピ!』
「あ、勘違いしないでくれよ。ミーさんにはもう少しだけ、この世界のことを聞きたかったんだよ。貨幣価値とか全然知らないしさ。ん~どうしたもんかな。ん?」
冒険者ギルドを出たはいいが結局財布の中身は増えないままで終わったので、ホントにどうしたものかと思ったが視線を通りに向けると看板に服が書かれていた店が見えたので、もしかしてと期待して側に寄ってみる。
店の前に立ち、ショーケースに並ぶ服を見て俺が思った通り衣服を扱っているお店に間違いないと確信し、買えないまでもどんな物があるかだけでも確認しようと「ごめんくださ~い」とドアを開け店内に入る。
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