第61話 その件
「ふ……ふふ……ふふふ……」
『主ぃ~?』
昨夜の恒例となった入浴の儀で披露されたダークエルフのベネの……を思い出してしまい思わず顔がニヤけてしまう。
だってダークエルフっていうくらいだから、全身が褐色に染められているとばかり思っていたのにタンクトップに短パンの日焼け跡に思わずガン見してしまったのは秘密だ。
多分、バレているだろうけれど……俺が秘密だと言っているんだから秘密だ。
「お~い、ヒロ……って、ハァ~」
「ガルちゃん。ヒロさんは……まぁ」
「なんじゃ此奴は……随分とだらしない顔じゃの」
「まさか……最低!」
遠くでガルちゃん、リーアさん、ルリ、先輩の声がした気がするので、ゆっくりと声のする方へと歩く。
「で?」
「へ?」
「だから、昨夜のことでも思い出していたんでしょ。で?」
「あ……ん? でって?」
「あ~もう、だから、昨夜のお風呂でのことを思い出してあんなだらしない顔をしていたんでしょ! だから、ヒロの中では誰が一番だったの?」
「え?」
「おいおい、そんなの聞くまでもないだろう。なあ、ヒロ」
「はい?」
「うふふ、わざわざ負け戦を仕掛けるなんてガルちゃんらしいですわね」
「そういうが、此奴の趣味と言うか性癖はまともとは言えないことは分かっていることじゃろ。だから、ここはやはり妾が一番じゃろ。のぉ?」
「えぇ?」
先ずは先輩には昨夜の楽しい一時を思い出していたのをしっかりと指摘されてしまったが、脳内で再生された映像まではバレていないらしい。
だが、先輩はその思い出している内容に対し『誰が一番なのか?』と問い詰めてくる。
するとガルちゃん、リーアさん、ルリまでが便乗して質問してくる。
正直言ってこの中で誰が一番だなんて……と、ある曲のフレーズが浮かんできた。
そんな風にオンリーワンだらけの中でナンバーワンを決めるなんてことが出来る訳もなく、俺は問い詰められても答えることも出来ずにただ黙って俯くことしか出来なかった。
普通の男であれば綺麗なお姉さま達(若干、幼女っぽいのもいるが、年齢的にはお姉さん? )に詰め寄られ、色んな柔らかい部分が当たるのは羨ましがられる状況だとは思うが、迂闊に誰某と言ってしまえば、どんな結末になるかは分からない。
だから、返事することも出来ずに固まっていると部屋の扉が開かれると同時に「遅い!」と言われてしまった。
「え? 誰?」と扉の方を見ればそこにはやつれた様子の伯爵といつものゴテゴテした装飾の貴族風ではなく、どことなく『ちょっとそこまで』といった感じの旅装に身を包んだ王様が数人のお供と一緒に立っていた。
「えっと……遅いとは?」
「それが「遅い! 遅すぎるぞ! ヒロ殿!」……そういう訳だ。はぁ~」
「え?」
王様だけがやる気満々の顔で腕組みをして仁王立ちしている横でどことなく疲れた顔の伯爵とこれから何が行われるのか不安そうな顔をしているお供の人達を見ても俺はなんで遅いと怒られているのか訳が分からず伯爵に説明を求めようと見れば、伯爵はあからさまに顔を逸らす。
ならばと王様の側にいるお供の人達を見れば、こちらも「俺を見るな! 見ないでくれ!」とでも言いたげに皆一様に顔を伏せる。
そうなると残るのは当然の様に「ほら、早く聞け!」とばかりにふんすと鼻息の荒い王様しか残っていない。
俺はしょうがないかと後頭部をボリボリと掻きながら、面倒臭いけど聞くしかないかと「あの……」と声を掛けようとしたところでガルちゃんから「行くぞ」と声を掛けられる。
「え?」
「え? じゃないだろ。ほら、いつもの様にコイツのところに行くんだろ?」
「あ……うん、そうだけど……」
ガルちゃんの言葉に頷きながら、俺が王様の方を見ると王様はちょっとだけバツが悪そうな顔をするが、直ぐに顔を上げ「その件で話がある」と俺に言う。
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