第59話 誰のせい?
「リーアお姉さま!」
「……」
「リーア、どうした? 教えてやれよ。ぷっ」
「ガルちゃん、あなたは……ハァ~」
ガルちゃんの言葉を聞き、ベネはリーアさんなら自分の想いを成就してくれるのではと期待に満ちた眼差しで見上げるが、リーアさんはそんなベネの羨望の眼差しが眩しすぎるのか、その視線を遮るように顔を背ける。
するとそれを見たガルちゃんが面白そうに「早く教えてやれよ」と笑いを堪えることもせずに腹を抱えながらリーアさんにそう言えばリーアさんは、転げ回るガルちゃんを見ながら嘆息する。
「リーアお姉さま?」
「いいでしょう。では、ヒロさんお願いしますね」
「あぁやっぱりそうなるんだ……」
「はぁ、旦那様になんと言えば……」
リーアさんは全てを諦めた様な顔をして俺に対しお願いしますと頭を下げる。
俺はリーアさんの頭頂部を見ながら、やっぱりと思いオジーは俺の隣で旦那様になんと言えばと頭を抱えていた。
「じゃ、行きますよ」と皆に声を掛ければ一際大きな声で「はい!」とベネが元気よく答える。
会話する間もなく御屋敷の自室へと戻ればベネはゆっくりと回りを見渡し「うそ……」と呟く。
「で、どうよ。念願の外へと出られた感想は?」
「……ここは?」
「ここは、リーアの管轄する世界樹の範囲内のヒト族が納める国だ」
「えっ……ってことは……もしかして……」
「ああ、そういうことだ。ようこそ、別世界へ」
「ありがとうございます! リーアお姉さま!」
「は? おい!」
俺の部屋へと転移した後、ガルちゃんが得意気にベネに対し感想を求めるが、そのベネはガルちゃんではなくリーアさんへ感謝の意を述べ、ガルちゃんは違うだろと憤慨する。
リーアさんはそんなガルちゃんを無視するかのようにベネに対し「外の世界はどうですか?」と声を掛ければ、ベネもリーアさんに「はい! とても素晴らしいです!」と感嘆の声をあげる。
部屋に戻ってからしばらくはベネが信じられないと連呼しながら、部屋のあちこちを見て回っていたら「戻ったようだね」とオジーと一緒に伯爵が部屋に入ってきた。
俺が今の状況を説明しようとすると伯爵はそれを右手で遮り「オジーから粗方の話は聞いた」と言いながら嘆息する。
「ハァ~分かってはいたよ。こうなることはさ……でも、実際にこんなことになるなんて誰が予測出来るって言うんだ。ねえ、ヒロ殿。君は……いや、今はいい。今は怖くて聞けないな」
「え?」
「いやいやいや、『え?』じゃないでしょ。それを言いたいのは私だと分かっているかい?」
「えっと……申し訳ありません」
「ふぅ~君に謝ってもらっても今のこの状況は何も変わらない。それは分かってもらえるかな」
「……はい」
伯爵がこめかみを抑えながら俺に対し愚痴を吐くが、今回も俺は悪くないと思う。
ダッテサソッタノハオレジャナイ
ダカラ、オレハワルクナイ
そんな気持ちを抑えながら黙って伯爵の愚痴を聞いていたが「何、ウチが来たらダメなの?」とベネが水を差す。
「あ、いえ。守人様に対し不満がある訳では……」
「じゃあ、何? ウチを誘ったリーアお姉さまが悪いの?」
「いえ、ですから……そういう訳では……ヒロ殿……」
「ワタシハカンケイアリマセンカラ」
「おい! それはないだろ!」
「おじさん! ハッキリ言いなよ。ウチは迷惑なの? どうなの?」
「か……」
「か?」
「歓迎します。私は守人様を歓迎します!」
「ふ~ん、じゃあそっちのオジさんもいいってことよね」
「あ、はい……」
「だって、よかったね。オジさん」
「オジさん……」
ベネは伯爵から追求される俺に対し助け船を出してくれた様だが、実際は誘ったリーアさんに迷惑になると思っての行動だというのが分かる。
そしてベネは伯爵に対し自分という存在が迷惑ならハッキリと言えばいいと言うが、守人に対しそんなことを言えるハズもなくなし崩し的に自分の存在を認めさせ俺に対してもベネに対する責を負うことはないと言質をとってくれたのはいいがオジさんって……俺は、この中で一番の若造なんですけどね。
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