第57話 ちょっと留守にするだけ
ベネのリーアさん達への呼び方はそれぞれに任せることにして、本題を確かめないことには先へと進めないのでコホンと空咳をしてから、皆の注目を集めると「どうして泣いたの?」と聞いてみた。
「それは……」とベネが話し始めたけど、俺はそんなベネの話を聞いて泣くほどのことなのかなと思ったけど、今は口を挟まないのがいいかなと呑み込んだ。
「まあ、そりゃ泣くほど出たいと思うのも無理はないか」
「ガルちゃんはベネの気持ちが分かるの?」
「まあな。だってよぉ、ここは海の側で港には色んな国や地方からの珍しい物や話が放っておいても集まってくるんだ」
「「「確かに!」」」
「それによ、話を聞かされるだけで実際にその場所へ行くことも出来ない。文字通りのかごの中の鳥ってことに気付かされたんだ」
「「「なるほどなるほど」」」
「そこに俺達の登場だ。外に出ることは叶わないと思っていたのに、その外の世界から自分と同じ守人が来た」
「「「ふむふむ」」」
「なら、同じ守人である自分も外へと出られるんじゃないかと感極まっての感涙ってやつだな。どうだ?」
「……合っています。ガル姉さん」
「そりゃどうもって……ったく調子が狂うな」
「どうしたんですか?」
「いや、いい。でも、これに慣れなきゃいけねえのかよ。ったく」
「ガルちゃんの気持ちはともかくとして、ベネの気持ちは分かった……と、思う。要はここから外に出るのが望みってことだよね」
「うん、でも……」
「ん?」
ガルちゃんがベネの話を聞いて、それなりに気持ちを代弁したところで、ベネもガルちゃんにお礼を言うが、ガルちゃんはどこか照れくさそうに後頭部をガシガシと掻きまくる。
そしてベネの望みが外の世界に出ることを確認出来たのだが、今度はベネの様子がどこかおかしい。
あれだけ望んでいた外の世界に出られるというのに、嬉しそうというよりはどこか悲しそうな不安そうにしているような気がしないでもない。
そんなベネの様子に俺が「ん~」と唸っているとリーアさんが「お任せを」と横に立ちベネに優しく話しかける。
「多分ですが、ベネは守人である自分がいなくなったら、この世界樹がどうなるのかが不安なのでしょう」
「そ、そうなんです!」
「なんだ、そんなことか」
「ガル姉さん、そんなことじゃない!」
「まあ、待て。落ち着けって。落ち着いて、リーアの話をよく聞けよ」
「お姉さまの……」
「ちっ、やっぱ納得いかねぇ……」
「ふふふ、ガルちゃんも大変ね。では、ベネ」
「はい、なんでしょうお姉さま!」
「……ん~私も人のコトは言えませんね。ですが、ここは気を取り直して……ふぅ~いいですか。私達は創世の頃から悠久の時を世界樹と共に生きてきました……」
ベネの心配を払拭するためにこめかみを押さえながらリーアさんが話し出す。
「え? いいんでしょうか……」
「いいのか悪いかで言えば分からないと言うのが正直なところでしょうか」
「へ?」
「だって、私達は確かに生まれながらにこの姿でしたし、与えられた役目も世界樹を護り管理することでした」
「はい……」
「では、一応お聞きしますが、あなたは私達守人を作られた方……この場合は創造主とお呼びしましょうか。その方と会ったこと、もしくは声を聞いたことはありますか?」
「あ! 言われてみれば確かに。気が付いた時、最初にボンヤリと世界樹を護れと囁かれた様な気はしますが、目にしたことはありません」
「ふふ、それは私達も同じです。では、もう一つ。今まで世界樹で何か問題はありましたか?」
「……特には」
「でしょう?」
「あの、お姉さまは何を言いたいのでしょうか?」
「おいおい、分からねえのかよ」
「ガル姉さん……」
「要はアレだ。リーアが言いたいのはな、今まで何もなかったんだから、今後も特に何もないだろうし、もし何かあったとしても直ぐに戻れるから心配するなってことだよ」
「ええ、ガルちゃんの言う通りです」
「でも……」
「でも……なんだ? 泣くほど外に出てみたいんだろ?」
「うん、そうだけど……」
「だからよ、何も何年も放っておけと言っているんじゃないんだ。ホンの二、三日くらいなら外に出てもいいんじゃないかってのが俺達からの提案だ。なんせ、こっちには切り札があるんだからな」
リーアさん、ガルちゃんがいつもの様に少しくらい留守にしても心配ないからと説明すると共にガルちゃんが切り札として俺に向かってウィンクすれば俺も黙って頷く。
そんな俺達を見たベネは胸の前で両手を合わせ、頷くと「ウチ、外に出たい!」と真っ直ぐに気持ちをぶつけてきた。
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