第56話 多分、同じ歳なのに
「じゃ、改めて……君は海エルフのベネ……で、いいんだよね?」
「うん……じゃってのが気になりますが……それでいいです」
「分かった。じゃ、改めてよろしく」
「また、じゃって……まあ、いいけど……よろしく」
「じゃ、聞くけどさ。そんなに泣くほどここから出たいの?」
「ま~た、じゃ……ふぅ~好きな場所に自由に行けるあんた達には分からないわよ!」
「ま、そうだよね」
「ん~私は思わなかったので、なんとも……」
「俺もだな」
「妾は……諦めたのじゃ」
「え?」
見た目はリーアさんの色違いだが、着ている服というか様相は生地が薄めの麻っぽい半袖のシャツに腰蓑の様なゴワゴワした感触っぽい膝上のスカートいう格好のベネに対し思わずダークエルフと口から出てしまった俺は悪くないはずだと思うが、泣かせてしまったのは事実なので、そこは謝り頭を下げる。
そして改めてベネに泣くほどここから出たいのかと問えば、好きに動ける俺達に自分の気持ちは分からないと言われ、それもそうだと肯定すればリーアさん、ガルちゃん、ルリは出たいと思わなかったと言えばベネが驚く。
「ウソでしょ! だって……」
「まあ、私の場合は出ようと思わなかったのでなんとも言えないですが、ここだとそう思う気持ちもなんとなくは理解出来る様な気がします」
「様はアレだろ? ここは海に面しているから、他所から色んなモノが流れ着いてソレに興味を持って出たいと思ったんじゃねえか?」
「なるほどの。妾達の場所とはまた違う趣きがあるのじゃな」
「そう! 分かってくれますか! お姉さま方!」
「「「え?」」」
リーアさん達が外の世界に対し興味を持ってなかったり、出ることを諦めたと聞き自分の耳を疑ったベネに対しリーアさんがベネの気持ちを分からないでもないと言えば、ガルちゃんがそれを後押しするかの様に説明し、ルリもまたそれを理解するとベネは三人の守人に対し嬉しそうにお姉さまと三人を呼べば、呼ばれた三人は一瞬ひいた顔をする。
「えっと、ベネ。その……お姉さまと言うのは……」
「はい、なんでしょうか。お姉さま!」
「いえ、ですから……」
「リーア、こういうのはガツンとちゃんと言わねえと分からないぞ。ベネ、いいか」
「はい、ガル姉さん!」
「だからよ、その……ん? ちょっと待て! なんで俺は『お姉さま』じゃなく『ガル姉さん』なんだ?」
「え、ダメでしたか?」
「いや、ダメって言うかよ……あぁ~もう、パス!」
「ふん! 大方ガサツだからじゃろうて。のぉ」
「そうなのよ、ルリちゃん」
「は?」
「ぷはっ! なんだよ、お前はちゃん付けかよ!」
「笑うでない! これは何かの間違いなのじゃ! な、そうじゃろ?」
「え? 何が間違いなの? だって、ルリちゃんはルリちゃんでしょ?」
「くくく……そうだな。お前の言う通り何も間違っちゃいねえよ。なあ、ルリ」
「ぐぬぬ……」
「で、ガツンと言って下さるんじゃなかったんですか?」
リーアさんがベネからお姉さまと呼ばれた真意を問おうとして、ベネからキラキラした目で「なんでしょうか。お姉さま」と言われ何も言えなくなったところで、ガルちゃんが横から俺に任せろと交代を申し出れば、今度はガルちゃんに対しガル姉さんと呼ぶ。
ガルちゃんは自分達を姉扱いするのはなんでだと聞きたかったが、リーアさんがお姉さんなのに対し自分はなんで姉さんなのかと引っ掛かる。
ガルちゃんはそれを問い質そうとするが、何がダメなのかとベネに言われれば何も言い返せなくなりお手上げだと両手を挙げ肩を竦めて見せれば、ルリが交代じゃと替わるがちゃん付けで呼ばれガルちゃんに笑われてしまう。
そして二人が何も言い返さなくなったところでリーアさんにガツンと言わないんですかと言われたところで、話を戻す。
「おっと、そうだった。あのよ、言わなくても分かると思うが、俺達は同い歳だろ」
「はい!」
「分かってんならよぉ、なんで俺達をお姉さまと呼ぶんだ?」
「え? お姉さまではなくガル姉さんと呼んでますけど?」
「確かにな……って、そうじゃねぇ! いや、確かにリーアがお姉さまで俺が姉さんなのも気になっているが、俺が聞きたいのはそこじゃねえんだよ!」
「ん? では、何でしょうか?」
「だからよ、俺とお前は同い歳だろ?」
「はい、多分そうだと思います」
「だろ? じゃ、姉さんと呼ぶのは変だろ」
「そうですか? ウチは気にしませんよ」
「俺が気にするんだよ!」
「でも……」
「ガルちゃん、もういいでしょう」
「リーア、お前いいのかよ」
「ええ。それに同じ歳と言いましても誰もそれを証明出来ないでしょ」
「そりゃ、そうだけどよ……」
「さすがです! お姉さま!」
「……直に慣れるでしょう。それまでの我慢です」
「まあな。リーアがいいならいいけどよ。問題は……」
「なんで妾がルリちゃんなのじゃ!」
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