第51話 守人の存在
「それじゃ、行くわよ」
「え?」
「『え?』じゃなく、ほら」
「わ、妾は何処にも行かぬ!」
「もう、何言っているのかしら」
「お、奥様……その人は……」
いきなりルリの手を引き部屋から出て行こうとする奥様にルリは必死に抵抗するも奥様はその手を離そうとはしないので俺が奥様に説明すると奥様は慌てて掴んでいた手を離す。
「え? 守人様……は! 失礼しました。申し訳ございません」
「よ、よい。分かってもらえればそれでよい」
「はい。本当に失礼しました。では「待て」……はい? まだ、何か……私の謝罪が足りないと仰るのでしたら……」
「違うのじゃ!」
「はい?」
「其方は妾に何をして欲しかったのじゃ?」
「えっと……」
ルリは奥様に握られていた手を擦りながら、奥様に対し自分に何をさせたかったのかと質問し、奥様は俺と先輩の顔を見るので、俺と二人に両腕を確保されたままの先輩も黙って頷けば奥様はハァ~と嘆息しながらも「実は……」と話し出す。
「ふむ、なるほどの……よかろう、その話受けようではないか」
「え? いえ、それは私としては有り難いのですが……」
まさかのルリの承諾に奥様はまたしても「マジ?」という顔で俺と先輩を見るが、ルリがやりたいと言っていることを俺達が邪魔するのもおかしいだろうと、二人で頷く。
「で、ですが……さすがに守人様を……なんと言いますか、モデルとして使うのはどうかと思うと言うかですね……」
「かまわん」
「はい?」
「じゃから、妾は構わぬと言っておる」
「いえ、ですから……」
「ふむ、そうじゃな。妾の様な守人を使うのに抵抗があるというのならば、其奴らも一緒にどうじゃ?」
「はい?」
「うふふ、面白そうですね。私は構いませんよ」
「そうだな。でもよ、実際に何をどうすりゃいいんだ?」
「……」
奥様からはウララブランドのモデルとして、女性しか入れない女性限定の発表会の場でモデルとして出て欲しいと言われたルリは、その話を聞いて興味を持ち自分から出たいと言い出した。
だが、今度は奥様が相手が守人と言うことで躊躇したのだが、ルリはそれを些細なことだと撥ね除けるも奥様は首を横に振り、頷くことはない。
ルリはそんな奥様に対し守人を使うことに抵抗があるのなら、ここにいる守人三人を纏めて使えばいいのではと真逆とも思える提案をしリーアさんとガルちゃんもそれを聞きノリ気になる。
だが、奥様の表情はまだ優れないどころか、眉間に皺を寄せたまま頭を抱えている状態だ。
俺はそんな奥様に一つだけアドバイスをしてみる。
「あの、ルリ達が守人だということを問題に感じているようですが?」
「ええ、その通りです。イチ伯爵家が守人様を……例え、それがモデルで酷使するような状況でもないとしても守人様を使ったと言うことが問題視されます」
「そこ!」
「はい?」
「ですから、奥様はルリ達が守人だと言うことを問題視されていますが、そもそも守人がなんなのか、守人がどういう役割なのかを知っている人がどれだけいるのでしょうねぇ~」
「え? ヒロ様は何を……は! そう、そういうことですのね。分かりました。ヒロ様、ご助言ありがとうございます」
「いえ、普段からお世話になっていますし。これくらいなんとも……」
「そうですか。では、そうですね……後、五人なんですよね?」
「はい?」
「うふふ、いえ。お気になさらずに」
奥様がルリ達を守人だと分かり、畏れ多いと気にしているが当の守人であるリーアさん達は、そんなことは意に介していない様だ。
だから、俺は「では、誰が守人の存在を知っているのか」「ルリ達を見て守人だと分かるのか」と質問を投げ掛ければ、奥様は顔を上げる。
多分、女性限定の発表会……しかも貴族限定ともなれば、どうにでもなると踏んだのか口角の端を上げニヤリ……と、したように見えた。
奥様は俺にお礼を言うが「あと、五人なんですよね」と意味深な発言を残し「では、準備が整いましたら、後日改めてお伺いします」とルリ達に会釈して部屋から出て行った。
そして「イヤなのぉ~もう、ムリぃ~助けてよぉ~」と泣き叫ぶ先輩をセシルとユリアが「大丈夫です」「すぐに終わりますから」と慰めにもならない言葉を囁きながら部屋を出ていく。
そんなこんなで部屋に取り残された形になったが、元々は俺用にと宛がってくれた部屋なんだけど人の出入りが激しすぎる。
俺は改めて、ルリ、リーアさん、ガルちゃんの顔を見て「ホントにいいの?」と聞けば三人はそれぞれに頷く。
「うふふ、面白そうじゃありませんか。私の知識では確か……明るいステージの上を練り歩くのですよね」
「おぉ! アレか! 確かレディ「ガルちゃん!」……な、なんだよ。でも、アレってかなり際ど「だから、ガルちゃん!」い……分かったよ。でもなぁ~」
「なんじゃ。妾が聞いた話とは違うのか?」
「い、いいえ。間違いではありません」
「じゃが、先程から此奴が「気にする必要はありません」……そ、それならよいが……」
リーアさんは面白そうだと前向きだが、ガルちゃんの頭の中では違うステージを思い浮かべているようで、それに気付いたリーアさんがこれ以上はマズいと思ったのかガルちゃんにそれ以上の発言をしないように注意し、それを見ていたルリが不安になるが、リーアさんはそれを否定する。
「ま、とにかくこれで丸く収まったのかな。じゃ、俺は「どこへ行くのじゃ」……どこってお風呂だけど?」
「あら、いいですわね。では、行きましょうか」
「お、そうだな。新入りの歓迎会だな」
「む? なんじゃ? 何が始まるのじゃ?」
「ちょ、ちょっとリーアさん! 止めて下さいよ!」
「あら、どうしてですか? 連れて来たのはヒロさんですよ。で、あればこうなるのは分かっていたのではないでしょうか?」
「そうだぞ。なんで俺らがよくてコイツはダメなんだよ!」
「だ、だって……」
「どうしたのじゃ? 風呂ならば妾は好きな方じゃぞ」
「ですって。よかったですねぇ」
「よし! じゃ、行くぞ」
「……」
なんだかんだとあったけど、ちょっと落ち着いた様なので俺が風呂へと行こうとすれば、置いて行かれると思ったのかルリが俺の服の袖を掴み何処へ行くのかと聞いてくるので、そのまま風呂へ行くと答えればリーアさん達も行きましょうと言い出した。
俺はまた、いつものノリで来られちゃマズいと必死に抵抗するがガルちゃんのなんでルリがいるとダメなんだと言う言葉に「だって、見た目が少女だし」と言えずに口籠もる。
そんな俺の気遣いも気にすることなくルリは風呂好きをアピールし、リーアさんはそれを微笑ましく受け取り、ガルちゃんも俺の腕を引っ張り風呂場へと連行する。
先輩じゃないけど……俺の道徳心も崩壊しそうなんだけど……
「今更でしょうに……」と、俺に合掌しているオジーが目に入る。
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