第42話 守人の捕まえ方
「ねえ、どこに進んでいるの? なんで皆何も言わないの?」
「うるさいなぁ~やっぱり、置いてきた方がいいんじゃないか? なあ、ヒロ」
「ん~もう少し様子を見ましょうか」
「え? 何ソレ、ウソでしょ」
「ウララ様、申し訳ないですが……ガルディア様の言う通りです。少し静かにしていただけないでしょうか」
「……でも、どこに行くかくらいは教えてくれてもよくない?」
「はぁ? 行き先を教えるも何も次の世界樹を目指していることは知っているだろうが!」
「でもさぁ、こうなんて言うの? 地図もないし、目的地が分かっていたとしてもどこに向かっているのかが全然分からなくて不安なんですけど……」
「はぁ? 目的地なら、ずっと見えているだろうが。お前はどこを見ているんだ?」
「え? ヒロ、ホント?」
「うん、ほら」
「へ?」
動き出したのはいいが、先輩も高さに慣れてヒマなのか騒ぎ出した。
それをガルちゃんが置いてきた方がいいんじゃないかと俺に提案するが、俺もその方がいいかなと思ったが、ここは様子見でと言えば先輩は対応が優しくないとかまた騒ぎだすが、オジーにも注意される。
それでも先輩がせめてどこへ向かっているのかくらいは教えて欲しいと言えば、ガルちゃんは「世界樹なら見えている」と素っ気なく答える。
だが、先輩には皆が見えているソレがなんなのか分からないらしく俺の袖を引き、どこなのか聞いてきたので俺は、進行方向にちょっとだけ見えている木の先端を指差す。
「え? あれ? あれって普通の木じゃないの?」
「うん、俺も最初はそう思っていた。でもさ……ほら、ね?」
「ね? って言われても……」
「ほら、分かるでしょ」
「いや、だから……え?」
俺が指差した木を見て、先輩も呆気にとられたのか、単なる普通の木だと思っている様でまだ得心していないようだけど、俺達がどれだけ移動しても、その木の全体どころか一向に近付けないことに、やっと得心した様だ。
「え? どゆこと?」
「だから、今は遠くからだから小さな木にしか見えないけど、アレが目的地の次の世界樹だよ」
「ええ!」
「あぁ、もううるさい!」
「ごめんなさい……」
それから先輩は大人しくなったかと思うとスマホを構えて動画を撮りだした。
「ほう、なんだそれは?」
「シッ! いいから話しかけないで」
「なんだ? つれないな。もしかしてさっきのこと怒っているのか?」
「いいから、あの木に着くまで放っておいて!」
「なんだよ……ヒロ、いいのか?」
「ん~特に問題ないからいいんじゃない?」
結局、次の世界樹に着くまで先輩はスマホを構えたまま誰とも話さずにいたが、世界樹に着くなり「いっちば~ん!」と先に枝へと飛び下りた。
「ったく、この小娘は……」
「まあ、よほど嬉しいのでしょう」
「ですが、何があるかも分からない場所に直ぐに降り立つのはどうかと思いますが……」
「まあ、そこは先輩の『絶対防御』があるから大丈夫だとは思いますけど……でも、確かに不用心ですよね」
「もう、何? ここが目的地なんでしょ! なら、さっさと済ませましょうよ!」
「「「ハァ……」」」
先輩の行動にガルちゃん、リーアさん、オジーまで呆れているが確かに先輩が不用心なのは否めない。
ま、先輩が言う様に目的地に着いたのだから……とは、言え何をするでもない。
「ねえ、何もしないの? 探検とかさ」
「ん~まだ何も分からないし……今は何もしないかな」
「え? なんで?」
「なんでって……なんで?」
「私に聞かないでよ」
先輩が言うように次の目的地に来たと言うのに俺達は特に何をする訳でもなく枝から下を眺めたりしていたが、やがてそれにも飽きたのかガルちゃん達が枝のほぼ中央の位置で座り込んだので俺もそちらへと近付き低い座卓を取り出し、そこにいつもの様に発泡酒やらデパ地下惣菜、デパ地下スイーツを並べる。
「ヒロ、何しているの?」
「何って準備ですけど?」
「いや、何を当たり前の様に言っているの?」
「いいから、いいから。これでいいんだって。ね」
「ええ、ヒロさんの言う通りです。では、いただきます」
「そうそう、俺もこれで誘われちまったからな。プハァ! やっぱ、これだな!」
「私も最初は驚きましたがね、これが意外と……あ、それ私が狙っていたのに」
「ん? そうじゃったか。それは悪いことしたの。じゃあ」
「ああ、もういいです。掴んだのは自分で取って下さいね。それが最低限のルールですから」
「すまないのじゃ。どうも初めてのモノばかりでの、つい」
「いえ、分かればいいんですよ。え?」
「「「あ!」」」
俺が酒宴の準備をし、皆で飲み食いしていると自然に守人が現れると言うのは、今まで二回の経験から分かっている。
まあ、それで呼び出されたリーアさん達本人もこれでいいと言っているから間違いはないのだろう。
そんな風に皆が思い思いに皿を手に持ち、目的の惣菜や菓子などを摘まんでいるとオジーが情けない声をあげる。
また、誰かがオジーを揶揄っているのだろうとそっちを見ずに俺は俺で食事を楽しんでいたのだが、どうもオジーの声とは別に聞き覚えのない声が聞こえるので、皆もそれが気になったのか、そこを見ると口や手をチョコまみれにした小さな女の子がちょこんと座っていた。
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