第38話 それぞれの考察
「さて、さっきの話だけど……って、今はムリそうね。ふぅ~」
「……」
リーアはガルディアが知りたがっていたセツの進化の秘密を話そうと思っていたが、肝心のガルディアはと言えば、リーアに渡されたレディコミから目を離せないまま読みふけっていた。そして時折、足をもぞもぞさせていたのを見てリーアは思わずクスッと笑う。
「まあ、お互いこの歳になるまでまともに異性と会話したこともなければ、そういう知識も得られないまま来たのだからしょうがないことなんでしょうね」
「……」
リーアのことなど頭の片隅にもない様にレディコミから目を離さないガルディアはしばらく放置することにして、さっきまで話していたヒロについての考察を自分なりに考えてみる。
「とりあえず、異性とは会わなかった訳ではありませんよね。現に眷属のエルフ達にも雄はいるのですから……ですが、彼らは私のことを異性としては見ていませんでした。ですから、私もそういう対象としては見ることは出来ませんでした。ならば、残るは他種属、または客でしょうか」
「……っ」
リーアは考察をしてみるもこれといった確証が得られないままだった。
「ヒロさん以外の客には会ったことはありませんから、これも確証を得るには遠いですね。後は他種属に対する免疫でしょうか……ですが、実際に屋敷でヒロさん以外の男性にも会いましたが……ヒロさんほどの衝撃はありませんでしたね。となると、やはり客限定なのでしょうか……ふぅ、まとまりませんね」
「……あ!」
「ガルちゃん、読むならもう少し静かにお願いします」
「……くっ……わ、分かった」
リーアは手に持ったワイングラスを揺らしながら「あれが噂に聞いていた『ビビビ婚』なのでしょうか」と呟くが、直ぐに頭を振りその考えを振り払う。
「今まで私と対等に話してくれる異性がいなかったから、多少のぼせているのかもしれませんね。ですが、一目惚れという可能性は捨てられませんね。ふっ……この私が一目惚れですか。まあ、永い人生です。多少の寄り道くらい神様も許してくれるでしょう。神様……そう言えば、今まで考えたことありませんが、私を作ったのは神様なのでしょうか?」
「……うぅ」
リーアは今までなんの疑いもなく過ごしてきたが、今ハッキリと神という存在について考えてみた。
「ふぅ~やはり、神は存在するのでしょうか。いえ、存在するからこそ、私達守人なる者も存在するのでしょう。ですが、その目的はなんなのでしょうか。今更ですが、私達……いえ、私には漠然と『世界樹を護れ』としか与えられていません。それに他の守人の存在すら教えられていません。そうなると……ん~分かりませんね。はぁ~」
「……はぅ」
リーアもガルディアもそれぞれイッた様で互いに顔を見合わせる。
「えっと……お疲れ様」
「くっ……こんなことになるとは!」
「ふふふ、初めての体験ですからね。で、私が言ってたことがウソではないと分かりましたね」
「ああ、そうだな……悔しいがお前の言う通りだった」
「と、言うことは……」
「言うな! 見るな! いいか、絶対に他の連中に言うなよ!」
「そうですね。では、互いに秘密の共有ということでお願いしますね」
「ああ、それでいい。で?」
「はい?」
リーアとガルディアは互いに秘密を共有すると言うことで手を握り合うが、ガルディアが「で?」と続きを促すが、リーアはなんのことか分からない。
「だからよ、セツの進化の秘密もなんとなくだが、分かった。まあ、それに対する考察は今はいい。で、これからどうするんだ?」
「はい?」
「いや、ここはお前が管理する世界樹だろ?」
「ええ、そうですよ。それが何か?」
「だから、アイツの所には戻らないのかって聞いてんだよ」
「あ!」
リーアも言われて気が付いた。
リーアの管理する世界樹の元へは転移出来たが、ここから元の場所……ヒロの元へ帰るにはどうすればいいのだろうかと。
「考えていませんでした」
「おいおい、じゃどうするんだよ。俺は……俺達はず~っとここにいなきゃダメなのか?」
「あら、別にガルちゃんは自分の世界樹に戻れるでしょ? なら、別に問題はないと思いますが?」
「……」
「ガルちゃん?」
「お前はそれでいいのかよ?」
「はい?」
「だから、アイツらと離れて平気なのかって言ってんだよ!」
「あぁ」
「あぁじゃねぇ!」
「ふふふ、確かにちょっと淋しいですね」
「ちょっとかよ」
「ええ、ちょっとです」
「なら、なんで泣いてんだ?」
「え?」
ガルディアはヒロ達の元に帰る方法がないことに腹を立てている様だが、ガルディアもリーアと同じ様に自分が守護する世界樹の元へと転移出来るでしょと言い、ガルディアが何を焦っているのか理解出来なかった。
だが、ガルディアにヒロ達と離れても平気なのかと問われ、今までの生活に戻るだけのことなのに何を言っているのでしょうかと焦っているガルディアの様子を不思議そうに見ていたが、ガルディアはそんなリーアに対し「何故、泣く」と言ってきた。
リーアはその言葉に自分の頬をなぞれば、ガルディアの言う通り涙が頬を伝っていた。
「え……ははっ……泣いているんですか? 私が? なんで……」
「お前、感情の起伏が乏しいと思ったが、そこまでか」
「あ……」
リーアは自分の頬を伝う涙に驚きながらも、自分の感情がこれほど揺さぶられるのかと楽しくなる。
「ふふふ、そうですか。これが悲しいという思いなのですね。ヒロさん、やはり私はあなたから離れることは難しい様です。ですが……」
「リーアさん、話は終わりました?」
「……ヒロさん?」
「はい、ヒロです。えっと、どうしました? まさか、ガルちゃんに?」
「おいおい、なんで俺が悪者になるんだよ!」
「ふふふ、違います。ガルちゃんは何も悪くはありません」
「ホントに?」
「だから「ホントです!」……ほら、リーアもこう言っているだろ」
「……分かりました。じゃ、帰りましょうか」
「はい!」
「おう!」
リーアはヒロから貰ったハンカチで涙を拭うと「絶対に二度と離しませんからね!」とヒロの右腕を取り、ガルディアもまた「そりゃ俺もだ」と左腕に絡みつく。
ヒロはそんな二人の様子に戸惑いながらも「じゃ、帰りますね」と改めて声を掛ければ二人はギュッと強く握りしめる。
最後まで読んで下さりありがとうございます。
おもしろい!
続きはどうなの!
応援してあげてもよくてよ!
と、思ってくれた方。
恥ずかしがらずに下にある☆を★にしてみませんか?
★は★★★★★までありますから好きなだけどうぞ!




