第36話 ひょっとしたら、出来るんじゃない?
「あ~もう、なんなんだよ!」
「え?」
一向にセツの進化の原因を話してくれないことにガルちゃんが苛立ち俺の顔をジッと睨み付ける。
「なあ、いい加減に教えろや! 何なんだよ一体!」
「ん~じゃあさ」
俺は話しても構わないが、リーアさんはそれを嫌がるし、セツも自分が話したいのに同じ様にリーアさんに邪魔されるのでどことなく不機嫌だ。でも、セツが話そうとしているのはちょっと違うから、話されるのはリーアさんの尊厳を失う結果になるかもしれない。
どうしたものかと考え、それならばと思い付き「リーアさんに直接聞いて」と話せばガルちゃんは「ん?」と訝しみリーアさんは「私の口からはとても」と俯いてしまう。
「でもさ、ガルちゃんは知りたくてしょうがないし、リーアさんは他の人に話されるのはイヤで、セツは間違ったことを言おうとしているんだから、もうリーアさん本人からこっそりと教える以外ないと思うんですけど」
「でも……」
「確かにな」
『セツはウソは言わないよぉ~』
「うん、確かにセツはウソは言わないよ」
『でしょ~だってリーアのおm「そこ!」……えぇ?』
「セツは確かにウソは言ってないんだけど、それが間違いだという知識がないからしょうがないんです。だから、セツには俺が後からちゃんと話しますけど、今はリーアさんがガルちゃんに説明した方がいいと思うんです」
「……確かに言われてみれば」
「もう、誰でもいいからよ。さっさと教えてくれよ!」
「分かりました。でも、こんな人がたくさんいる場所では……」
「俺は構わないぜ」
「私が恥ずかしいんです!」
「お……そ、そうか。でもな」
リーアさんも覚悟を決め漸く話す気にはなったが、この場ではとてもと赤面する。
ガルちゃんは気にしないと言うが、回りで雑談していた人達もセツの進化の秘密が聞けると興味津々で二人のやり取りに注目していた。
「えぇ~い! 聞いていいのは俺だけだ! 散れっ散れっ!」
「「「えぇ~」」」
「ふん! やかましい!」
「「「……」」」
「これでいいだろ。さ、話せ」
「バカですか」
「あ?」
ガルちゃんはリーアさんから直接話を聞けるのは俺だけだと二人のやり取りに注目していた人達に近付かないように散れと言い放ちリーアさんに「話せ」とドヤ顔で言うがリーアさんはそれを見て呆れてしまう。
「誰がバカだ!」
「誰ってあなたに決まっているじゃないですか!」
「あ? お前、俺にケンカ売っているのか!」
「あぁ~もう、なんでそう短絡的なんですか! こんな狭い部屋でちょっと遠ざけたくらいで話が聞かれないと思いますか!」
「は?」
「だから「はいはい。そこまで」……なんだよ邪魔するなよ」
「いいから、ガルちゃんも落ち着いて。でね、リーアさん序でと言っちゃなんだけど試して欲しいことがあるんですけどいいですか?」
「え? なんでしょうか」
「それはですね……」
俺は少しだけ気になっていたことをリーアさんに試して貰おうと思い提案してみる。
「……そうですね。言われて初めて気付きましたが確かにそういうことが出来るのか気にしたことはありませんでしたね」
「でしょ! だからさ……」
俺の提案を聞き、リーアさんはちょっと理解が追いついていないガルちゃんの手を握ると「では、行って来ます」と俺に言った後に小声で何かを呟くとガルちゃんの「あ……」という言葉を残し消えていった。
そしてそんな様子を黙って見ていた先輩が「え? どこに行ったの?」と聞いてきたので俺は短く「里帰り」と答える。
「え? 里帰り? どゆこと?」
「それはね……」
リーアさん達が消えたのを不思議そうに見ていた先輩にリーアさんに試してもらったことを話す。
「あ~なるほどね」
「そう、リーアさんも目から鱗って感じだったけどね。多分、上手くいったと思うよ」
「まあ、今までは自分の領域内だったから、それほど意識してなかっただろうし、まさか世界樹から離れて違う国まで来るなんて考えもしなかったでしょうね」
「でしょ。だからさ、リーアさん達守人が自分達が管理している世界樹の望むところに転移出来るのなら、もしかしたら違う場所……ここからでも転移出来るんじゃないかと思って試して貰ったんだ。ついでに内緒話もしてもらえるしね」
「あぁ~なるほどね。で、私には教えてくれるのよね?」
「あ、え~とごめんなさい」
「えぇ~」
先輩もセツの進化の秘密を知りたいと言うけど、俺の口から言うのは少し憚られるので、先輩にごめんなさいと謝る。
その後もしつこく聞いてくるが、俺はその度にごめんなさい言って話すことはない。
だって先輩にだけ話そうと思っても、まだこの部屋には俺と先輩以外にもたくさんの人達がいる。しかもさっきより増えた気がする。
「一体、いつの間に……」
「ふふふ、ちょっとした宴会場ね」
「そうですね……って、ここは俺の部屋なんですけどね」
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