第35話 真実は一つ
「いいかい。お前達も自分のスライムとたくさん遊びたいだろうし自慢もしたいだろう」
「「「……」」」
「でもな、さっきも言ったがお前達がそうやって好き勝手にすると、そのスライムを狙ってくる連中も出てくるだろう。そんな時にお前達も当然、襲われることになる。だが、お前達はまだ自分の身を護ることすら出来ない」
「「「……」」」
「もちろん、親である私とて何もしない訳ではない。我が子を守るのは親として当然だ。でもな、お前達がそんな親の言いつけを守ることなく好き勝手されれば、いくら親とは言え守り切るのも難しいだろう。私の言いたいことは分かるな」
「「「……はい」」」
「まあ、正直今は分かってくれなくてもいい。だが、お前達が大人しくしてスライム達のことを公にしないだけでもお前達の危険度はグッと下がるんだ。それだけを忘れてくれなければそれでいい。そして、自分で身を護れる自信がついたら、好きな様にするがいい」
「「「はい!」」」
子供達は伯爵の言葉にシュンとなっていたが、自分達が弱くスライムを守れないのも事実だと奥歯を噛み締めながら実感していた。
泣いて赤くなった目を袖で拭いながら伯爵の言葉に力強く頷くと、子供達の顔が少しだけ大人びた感じがした。
そんなこんなでスライム達の進化騒動がやっと収まりはしたが、誰も俺の部屋から出て行こうとしない。
「いや、ここ俺の部屋なんだけど……」と俺も進化したセツにどんな新しい力が備わったのか確認したいのに……皆、誰も出て行こうとしない。
伯爵も子供達の成長が見て取れたのが嬉しいのか、感極まって涙目になっているし……そんな伯爵にユリアが伯爵に祝杯用のグラスを渡し並々とお酒を注ぐと伯爵は頷きグラスを煽る。
そして「皆、今日ほど嬉しいことはない! さあ、飲み明かそうじゃないか!」と声に出せば先輩までいつの間にかグラスを片手に「おぉ!」と答えている。
俺は早く一人になりたいのにいつの間にか宴会場と化してしまった部屋から出ることも出来ずにどうしようかと思っていたら、ガルちゃんが側に寄ってきて「肝心の部分がぼかされたままなんだけど」と耳打ちして来た。
俺は「え、なんのことかな?」と惚けてみせるがガルちゃんは「で、なんで進化したのか話してくれるよな」としつこい。
「えっと、なんのことかな?」
「なんのことじゃないだろ。あのな、スライムだぞ。いや、いくら伝説のスライムだとしても進化するなんて普通じゃないだろ。なあ、教えろよ」
「ハァ~絶対に誰にも言わないって約束出来るな「する! するから、教えろ!」ら……ちょ、ちょっと……」
ガルちゃんがなんでそれほど進化の秘密を知りたいのか分からないけど、俺が絶対に口外しないと約束出来るならと言い切る前に食い気味に即答してきたのも気になる。
「ホントにしないよね。もし、したら……」
「し、したら……」
「その時は……」
ガルちゃんにもし、約束を破った場合にどうなるかを説明するとガルちゃんは最初「そんなバカな」と小馬鹿にしていたが、俺が「出来ないとでも?」とちょっと凄むと「マジ?」と聞いてきたので「マジ」とだけ返せば腕組みして暫く考えていたが、やがて意を決した様に「分かった! だから、教えてくれ!」と言ってきた。
「いや、そんなに悩むなんて絶対に話すつもりだったよね?」
「な、なんのことかなぁ~それよりも早く教えてくれよ! 頼むよ、後生だからさぁ!」
「まあ、いいけどさ。なんでそんなに知りたいの?」
「なんでって別にいいだろ! さぁ聞かせろ!」
「……」
執拗に知りたがるガルちゃんを訝しむが「ま、直ぐに知られることだろうし」とガルちゃんの目を見据えて「じゃあ、話すね。あのね……ムグッ」と言ったところでリーアさんが俺の口を塞いできた。
「はい、そこまで!」
「ぷはっ! ちょっとリーアさん、何をするんですか!」
「何をするかはこちらの話です。ヒロさん、あなたは何を話そうとしていたのですか」
「何ってセツが進化した原因と思えることをチョロッとガルちゃんに「は?」……え?」
「ヒロさん、本気ですか?」
「ん? 本気も何も真実をチョロッと話そうかと」
「はぁ?」
「おいおい、なんでリーアが邪魔するんだ。ヒロ、いいからさっさと話せよ」
「えっと「ダメです!」……ちょっと、リーアさん」
「リーア、俺はヒロに聞いているんだ。いいから、邪魔するなよ」
「ヒロさん! 絶対に言わないで下さい! お願いします!」
「リーア、なんでそこまで……」
「いいから、ガルちゃんもこれ以上は聞かないで! お願い!」
必死にお願いするリーアさんをガルちゃんは不思議そうに見ているが、そこまでされると却って知りたくなるのが人情というものだ。
でも、ここまで必死になるのだからとガルちゃんは「分かった。ヒロには聞かない」とリーアさんに答え、リーアさんもパァッと顔が明るくなり「ありがとう、ガルちゃん!」と思わずガルちゃんに抱き着くがガルちゃんはニヤリと笑う。
俺はその笑みに何か引っ掛かりを覚えるが、その理由は直ぐに分かった。
「ああ、ヒロには聞かない。だから、直接セツに聞く」
「「はぁ?」」
「なんだ? 約束通り、ヒロには聞かないんだからいいだろ」
「いえ、でも……」
「セツ、話してくれ」
『いいよぉ、あのねリーアのおs「ちょっと、セツちゃん! 違うでしょ!」……ん~セツにはよく分からないのぉ~』
「はぁ? よく分からないがリーアが何かしたのか?」
『そう! リーアの「セツちゃん!」……えぇ~』
「ああ、もうちっとも話がすすまない! もう、こうなったらリーアがちゃんと言えよ!」
「……しぃ」
「は?」
「いやよ! そんな……恥ずかしい……」
「はぁ?」
セツが何を話そうとしているのか、大体は想像がついたけど、セツにはあれがどういうものかよく分かっていないのだろう。
だから、セツが話そうとする度にリーアさんが止めるのも分かるけど、早く自分からゲロっちゃえば楽になるのにね。
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