第33話 何かが違う進化の方向
「大変だ! 大変だぁ!」
「デュダ!」
「サリア、大変だぞ! あの伝説のスライムがすぐ側にいるんだってよ! すぐに非難しないと! いや、非難してもダメだ! そうだ! なら、いっそのこと……アイタッ!」
「だから、落ち着きなさいっていつも言っているでしょ! 回りをよく見なさい!」
「え……あ!」
オジーが大事そうに抱えているスライム……ぷぅがあの伝説のスライムだと気付き慌てだしたガルちゃんとドワーフ達だったが、オジーのぷぅに対する愛おしそうな姿と俺の説得? により事態は収拾したように見えたのだが、慌て者のデュダが一人だけ大変だ大変だと騒ぎだしサリアさんがそれを止める。
まあ、サリアさんが言うように俺達の様子から、一先ずはぷぅ達に対し危険視することはなくなったと、思ったらデュダが思い出した様にボソッと漏らす。
「でもよぉ、さっき進化するって言っただろ? なら、その進化した後に危険がないって言えるのか?」
「えっと……」
「ほら、見ろ! 言えねえじゃないか! よし、こうなったらこんな所に一秒でも長くはいられない! サリア、行くぞ!」
「行くってどこへ?」
「どこへって、そりゃ……どこに行けばいいんだ?」
「ハァ~だから、少しは落ち着きなさいって普段からあれほど言っているのにアンタってヒトはホントにもう……」
あくまでもぷぅが危険だと騒ぐデュダに対しサリアさんが普段からの鬱憤を晴らすかのようにデュダに対しグチグチと『今、この場で言う必要があるのか?』と思えるような内容のことを繰り返し責め立てる。
ドワーフ達もそんな二人の様子を見て、確かに今更慌ててもしょうがないかと悟りにも似た心境なのか、今度はぷぅの進化が平穏無事に終わることを祈り祝杯をあげるのだった。
『……ん……お……』
「ぷぅ! 私だ! オジーはここにいるぞ!」
『お……』
「ああ、オジーだ! お前の主で家族のオジーはここにいるぞ!」
『お腹空いたぁ~』
「へ?」
オジーの手の中にいたぷぅの身体が徐々に膨らみ始めると同時に眩しいくらいに発光していた光量も徐々に収まりつつあった。
そして、ぷぅが漏らすようにささやかな声で呟けば、それをかき消すようにオジーが大声で答える。
そして、全てが元通りに戻ったぷぅの第一声は『お腹が空いた』だった。
ぷぅが復活し嬉しいはずなのに第一声が自分の名ではなく『お腹が空いた』だったことにショックを受けながらもオジーは俺に両手を差し伸べ「お願いします」と頭を垂れる。
俺は黙って頷くとインベントリからツナマヨを取り出し、袋ごとぷぅに与えるとぷぅもその味を覚えているのか大きく口? を開け、俺が差し出したツナマヨを包み込むように取り込む。
『……はぁ、やっぱりヒロ様のご飯は格別だね!』
「えっと間違ってたらごめん……ぷぅ……だよな?」
『うん、僕はぷぅだよ。オジー、心配掛けちゃってごめんね』
「あ、ああ。それはいいんだ。今が大丈夫なら……でも、ホントにぷぅなのか?」
『もう、いくらオジーでも怒るよ! オジーがずっと大事に持っててくれたのでしょ』
「そうだ。いや、そうだけど……何かこう……なんと言うか……雰囲気が……」
『変わっちゃった?』
「そ、そう! それな!」
『そんなに変わっちゃったかなぁ~』
「……」
オジーは驚愕した顔で手の平の上ではしゃいでいるぷぅを黙って見詰めている。
まあ、あんなのを見せられたら俺だって疑っちゃうよ。だって、いつも通りのまん丸の体型に戻っていたハズなのに……食事を済ませた途端にそのまん丸ボディーがスッと縦に伸びたかと思うと、そこには人形サイズの少年がいたのだから。
そんなオジーとぷぅの様子を見ていたかったが、俺はハッと思い出す。
ぷぅがお腹が空いたと訴えて来たのなら、セツも同じ様にお腹を空かせているに違いないと思うとこうしちゃいられないと「オジー、帰るよ!」と声を掛け、転移しようとすれば「俺を迎えに来たのじゃないのか!」とガルちゃんが慌てて俺に抱き着いて来る。
「いや、別にガルちゃんは「置いてくなよ?」……あぁ~分かったよ。もう、急ぎたいのに……オジー、準備はいい?」
「はい、まだドキドキしていますが……お願いします!」
「うん、じゃあ行くね。サリアさん、また明日!」
「サリア、ほどほどにな。あと、長も明日な」
「えっと、お世話になりました」
俺達が転移で帰ると気付いたガルちゃんが置いてかれまいと慌てて抱き着いて来たが邪険にするわけにもいかず、逸る気持ちを抑えながらオジー達に確認し、ドワーフの人達に「また、明日!」と挨拶を交わし自室へと戻る。
「えっと、一応聞くけどこれはどういう状況なのかな?」
『えへへ。主ぃ~私が誰か分かるかなぁ~』
「セツでしょ。よかったぁ~」
『え? それだけぇ?』
「あ、ご飯は大丈夫? お腹が空いているんでしょ」
『もう、ご飯ならリーア達に用意してもらったから大丈夫だよぉ。それよりもさ、他に言うことがあるでしょぉ? ほらぁ!』
「えっと、可愛い……かな?」
『もう、なんで疑問形なのぉ?』
「だって、聞いていいかどうか分からないけど……多分、女の子……なのかな?」
『そうだよぉ! どう見たって女の子でしょぉ! ほらぁ!』
そう言ってセツがその場でくるりと回って見せるとスカートらしきモノがフワッと舞い上がり『キャッ! 見たでしょ!』とセツが言うが、いや見えないし。ってか、その半透明の身体で、その延長上の構成物で作られたスカートらしきモノと見たと疑っているパンツらしきモノも半透明なのだろうから、見たとかどうとか問題じゃないだろと思ってしまうが、リーアさんを始め、回りにいた女性陣は皆一様に「ハァ~分かってないわね」と呆れた様な表情をしていた。
「いや、どうしろと……だって、こんな人形サイズの少女に何をときめけと?」
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