第31話 こう見えても伝説ですから
「じゃ、もういいですね。俺はこの後……え? セツ! どうした!」
『主ぃ~なんかちょっと眠いのぉ~』
「セツ! おい、セツゥ!」
『……だめ、眠いのぉ~……』
「セツ!」
「ヒロさん、ちょっと落ち着いて下さい」
「リーアさん、だって……だって、セツが……」
「だから、少し落ち着いて下さい。セツちゃんも眠いと言ったんでしょ。それにどこも苦しそうな様子はないですし」
「でも、こんなに光っているんですよ! え? 光って……あ!」
リーアさんとの妙なやり取りも終わり、じゃあそろそろガルちゃんのお迎えに転移しようかと思っていたところでセツが急に萎れたようにペタリとなり光り出したのを見て慌てて呼び掛けるが眠たくなったとしか言わなかったので慌ててセツを起こそうとしていたのを見てリーアさんがとにかく落ち着いてと言うので「セツが光っているのに……」と言ったところで思いだした。
そう、少し前に同じ様にセツがグッタリしたと思ったらいきなり光り出し、セツの意識が戻ると同時に話し出したことを。
「まさか、また進化しているのかも」
「進化ですか? ですが、セツちゃんはスライムですよね?」
「そうですよ。『エレメンタル・スライム』です」
「は? 今、なんと言いましたか?」
「だから、エレメンタル・スライムですよ。まさか、もう耳が遠くなったんですか? もしかして老眼とか「違います!」……そうですか。でも、セツは普通のスライムとちょっと違うくらいですから」
「ちょっと……ですか……」
俺がグッタリしているセツを慈しみ撫でているとリーアさんが呆れた顔で俺達を見ているのに気付いたが、それを無視して少し前のことを思いだし「進化しているのかも」と呟けばリーアさんが呆れながらセツの種族を聞いてきたので俺は隠すこと無くエレメンタル・スライムであることを明かせば、リーアさんは更に呆れた様に嘆息する。
「失礼ですが、ヒロさんはその……エレメンタル・スライムの伝説をご存じでしょうか?」
「あ~街を一つ滅ぼしたとかなんとかって話なら、聞きました」
「それを聞いても……平気なんですか?」
「え? だってセツはセツですよ。そんな大昔のことを言われても俺には分からないことですから」
「そうですね。そう言われてしまえば、私からは何も言うことはありません。ですが……」
「うん、リーアさんが言いたいことはなんとなく分かります。今は大人しいセツでも、何かを切っ掛けに暴走するかも知れないと言いたいんですよね」
「はい……ですから、くれぐれも用心だけは忘れない様にお願いします」
「ん~分かりましたと言いたいですが、難しいですね」
「そうですね。私も今、その話を聞いたからと言って今までのセツちゃんのことがなくなる訳でもないので……正直、戸惑ってはいます」
「あ!」
「ど、どうしましたヒロさん」
「あのね、多分だけど……セツがこうなったと言うことはさ……」
俺は以前もセツの進化に合わせてセツから分裂したぷぅ達にも異変が起きたことを思い出し、リーアさんにセツを託すと同時に「多分、子供達が泣きながら入ってくると思うけど」と前置きしてから、進化する過程でグッタリしているだけだと言い聞かせるようにお願いしてからセツを両手に乗せたままオロオロしているリーアさんを横目にガルちゃん……じゃないな、今頃は涙目になっているであろうオジーの元へと転移する。
「オジー!」
「あ、ヒロ様……ぷぅが……ぷぅが返事しないんです!」
「あぁ~やっぱりか……」
「やっぱりって何ですか! 何かご存じなんですか! ぷぅはどうなるんですか!」
「飛んでる、ツバが飛んでるから。いいから、落ち着いて。ほら、涙も拭かないと」
「そんなのはどうでもいいんです! ぷぅが起きないんですよ! ヒロ様は平気なんですか! そんな冷酷とは思いませんでした! 軽蔑します!」
「あぁ~もう、だから落ち着いてって。前も似たようなことがあったでしょ!」
「前に何ですか! 前がそうだからって……え? あ!」
「どうやら思い出してくれたみたいね。そう、セツの進化に合わせてぷぅ達も進化の途中なんだよ。どう、もう落ち着いた?」
「……はい。色々と失礼なことを言いました。すみませんでしたぁ!」
「いいから、いいから、ほら顔を上げて。ね、大事なぷぅがいきなりそんな状態になったら慌てるのはしょうがないよ。実際に俺もセツのそんな状態を見て慌ててしまったからさ」
「ヒロ様ぁ!」
ドワーフ達の地下に作られた簡易酒場へと転移すれば、予想通りにぷぅを両手に乗せたままオイオイと泣いているオジーと少し苛立っているガルちゃんが目に入る。
ガルちゃんは直ぐに俺に気付き「遅い!」と文句を言ってきたが、俺はそれを無視して泣きじゃくるオジーの元に急ぐとオジーは俺にぷぅを乗せたままの両手を差し出しどうしようどうしましょうと連呼していたが、俺はそんなオジーを宥めるのが先だとなんとか落ち着かせようとするが、オジーは俺に対し「ぷぅがどうなってもいいんですか!」と責め立ててくるから「前に似たようなことが合ったよね」と話してやっと「あ!」と思い出した様でなんとか泣き止み、俺にすみませんでしたと頭を下げる。
すると待ちくたびれていた自分を放って男二人がスライムを大事そうに見守っているのが面白くなかったのか「そんなスライムごときで」とガルちゃんが口にすれば「たかがじゃありません!」と直ぐにオジーが反論する。
「はっ! たかがじゃなければなんなんだ? どう見たって普通のスライムだろうが!」
「「「……」」」
「え?」
ガルちゃんの言葉に回りにいたドワーフがプルプルと首を横に振る。そして、今気付いたかの様のオジーの……正確にはオジーが抱えているぷぅから離れ距離を取る。
そんなドワーフ達の様子にガルちゃんは頭に疑問符を浮かべる。
「おいおい、ちょっと待て! お前等、どうしたんだ? これは単なるスライムだろ? なんでそんなに離れるんだ? おい、長!」
「ハァ~ガルディア様。ワシ達も普通に大人しくしていたのと、その旦那様の肩で大人しく揺れていたし、お連れ様も同じ様に愛でていたので大した危険性はないと思っていたのですが……」
「だろ? だから、そんなに危険視することはないだろ?」
「ハァ~ですから、ワシ達も忘れていたんです。もう、すっかり見なくなりましたから」
「だから、何だよ! 俺にも分かる様に言えよ!」
「エレメンタル・スライムです」
「は? そんなのとっくの昔に「その子です」……は?」
「ですから、お連れ様が愛でているスライムは普通のスライムではありません。今はグッタリとしている様なので普通のスライムの様に見えますが、先程までの形状は間違いなく……」
「いや、でも……ヒロ、本当なのか?」
「はい。セツもぷぅもそうです」
「は? お前、正気か?」
オジーはガルちゃんのたかがスライムという発言に対して、たかがじゃないと反論したが、その意味は大切で大事な家族と言う意味でたかがじゃないと言ったのだが、その言葉を重く受け止めたのが回りにいたドワーフ達だった。
ドワーフ達もぷぅのことを思い出したのか、さっとオジー達から距離を取ったから、ガルちゃんはどうしたと訝しめばドワーフ達も「たかがスライムじゃないです」と言うのでガルちゃんは更に訝しむ。
そしてドワーフ達の説明を聞き、思い出したのか目を見開きぷぅを改めて見るが、やはり信じられない様で俺に確認してきたので俺はそれを肯定する。
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