第30話 最初は一回だけだから
「ね、セツ……セツちゃん、ちょっとだけ目と耳を塞いでいてもらえるかな?」
『目……耳……どこかなぁ?』
「あぁ~そうよね。スライムだもんね。困ったわねぇ……」
「いや、困る必要はないでしょ。リーアさん、ちょっと考え直しましょうよ」
「考え直すですって!」
「あ!」
酔ったフリをしていたリーアさん。そうだよ、ちょっと考えれば分かることじゃないかと頭を抱えてみれば、自分より数十年、数百年も長く永く生きているエルフがあんな簡単に酔うわけないじゃないかと考え、リーアさんにもちょっと考え直してみてはと提案すればリーアさんが豹変し、俺をベッドへと突き倒し馬乗りになる。
「考え直す時間は十分にあったわ。それこそ、あなた達ヒト族が何世代も繰り返すほどに」
「え~と……で、今のこの状態は?」
「ふふふ、分からない?」
「……ちょっと思い付かない訳でもないけど……出来れば外れて欲しいかな……とか、思ってたり」
「ふ~ん、そうなんですね。まあ、こんな状態になっていれば大体の想像は着くのでしょうね」
『主ぃ~ぷぅからの伝言なのぉ~ガルちゃんがまだかって暴れそうだってぇ~』
「お、そりゃ大変だ……うっ!」
「セツちゃん、ぷぅちゃんには後二時間ほど待ってる様に伝えてもらって」
『分かったぁ~』
「な、ちょっと!」
「じゃ、そういう訳で……大丈夫、ヒロさんは何も心配しないでいいんですよ。天井のシミを数えている内に終わりますから」
「えっと、それって……」
「そう、そういうことよ。折角二人きりになれたんですもの。二時間しかないけど、大丈夫よね」
「その前に……その具体的な時間は一体誰から」
「もう、そんなこと誰からでもいいでしょ。でも、気になるのなら教えてあげますけど、ヒロさんと同じ客と言えば分かるでしょ」
「え? でも、客には会ったことないって」
「ええ、直接会ったことはないわね」
「なら「何も不思議なことじゃないでしょ」……ん?」
リーアさんがなんで二時間とか天井のシミとかそういうのを知っているのか不思議に思い問い掛ければ客に教えてもらったと言う。
だが、リーアさんはあの世界樹の元を離れることなどなかったし、外から人が尋ねてくることもなかったと聞いていた俺は不思議に思っているとリーアさんはフッと鼻で笑う。
「別に直接会わなくてもですね、マンガとか小説とか色んな形で客達の知識は残されていたのです。それが私の元にも伝わって来ただけです。ね、特に不思議な話じゃないでしょ」
「いや、十分に不思議でしょ」
「そうね。不思議と言えば、不思議よね。なんで二時間なんですの? 天井のシミってどういうことですか? ほら、私は世界樹の側で暮らしていたらそういうのが分からないんですよね」
「分からなくてもいいです!」
「あら? ってことはヒロさんは知っているのですね? なら、そういうのも含めて全部教えて欲しいですわ。うふっ」
リーアさんは俺が不思議に思っていることとは別の次元で不思議に思っていることがあるらしく意味も分からず使ってはみたが、今更考えるに納得出来ないらしく俺にどういうことなのかと聞いてくるが……知ってはいるけど言わなくてもいいよねと言葉を濁せばリーアさんは上着をゆっくりとたくし上げ脱ごうとしていたので俺は慌てて止める。
「いや、だから脱がなくても」
「あら? 着たままがいいんですか? でも、それはまた今度ということで……今は直にヒロさんを感じたいので……ふふふ」
このままなし崩しにされてしまうのもひょっとしたらアリかなと思ったが、ブンブンと首を横に振り、俺はともかくリーアさんの初めてが無理矢理だったと記憶に残るのはダメでしょと既に上半身どころか全身が露わになったリーアさんを見て「履いてないし生えてないんだ」と感心してしまったが、心のシャッターを押しつつ気を取り直し上半身を起こしリーアさんの両肩を掴み「こんなことはよくない」と言ってみる。
「あら、方法はどうであれすることは一緒でしょ」と言うので俺はハァ~と嘆息しつつ「だから、最初が大事なんです」と答える。
「最初? そんなのはどうでもいいですから、まずは一回どうです?」
「リーアさん! ホントにいいんですか! 人生で最初で最後ですよ!」
「うふふ、優しいんですね」
「まあ、他に取り柄もないですから」
「でもね、客の知識には再生についても書かれてましたのよ。ナニがとはいいませんが……これで最初で最後にはならないでしょ?」
「うわぁ~」
俺は今までの客が何を伝えているのかを改めて知りたくなった。
それでもなんとか気を取り直して「でも、最初は一回だけでしょ!」と言い、それでホントにいいのかと念を推すように言えば、リーアさんも右手人差し指を顎に当て少し考えているようだ。
その間、俺はリーアさんの綺麗な膨らみを飽きもせずにずっと見ていたが手を伸ばせばそこに届くのにと考えれば『今手を出すのは絶対にダメだ!』『いいから、やっちゃえ! 据え膳だろ』と心の中で天使と悪魔が葛藤していた。
そんな俺の葛藤を他所にリーアさんは「なんだか興が冷めました」と上着を着直し、俺の上からどくとリーアさんが座っていた場所にはジンワリとした暖かいシミが広がっていた。
リーアさんもそれに気付いたらしく「見ないで!」と身体全体を使って隠そうとしたが俺はそんなリーアさんを可愛く思いセツに「お願い出来るかな」と頼めば、セツは『いいよぉ~リーアのお漏らしを綺麗にすればいいんだよねぇ~』と返事をすればリーアさんはセツをキッと睨み「違いますから!」とだけ言って両手で赤くなった顔を隠した。
「ヒロォ~まだなのぉ~遅くても一時間って言ったじゃないかよぉ!」
「ぷぅ……セツからの返事は?」
『ん~なんだか忙しいみたい』
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