第26話 誰か扱い方を教えて!
先を歩くガルちゃんに追いつこうと少し早足で歩き出すと、こちらに気付いたガルちゃんが振り返る。
「おい、ズリぃだろ」
「え?」
振り向いたガルちゃんはゴーグルを装着し口元はスカーフをマスク代わりにして土埃を塞いでいるが、結界で守られている俺達を見て「ズルい!」と言い出した。
「いや、ズルいって何?」
「どう見たってズルだろうが!」
「ハァ~まあいいや。で、何処に向かっているの?」
「……」
「ガルちゃん?」
「ヒロさん。彼女は強がっているだけで素直になれないみたいですよ」
「え?」
「ですから、ヒロさんの方から誘って見てはどうですか?」
「え? 誘う? 何を?」
「ハァ~説明がいりますか……あのですね」
リーアさんが嘆息しながら言うには、ガルちゃんはゴーグルを装着し、スカーフをマスク代わりにして俺達を無視するように先に歩き出したが、俺達が結界に守られながら土埃を気にせず笑顔で会話しながら歩いているのを見て、多少のヤキモチを感じたらしい。
だが、先に歩き出した手前……今更、結界に入れてくれと言うには多少の抵抗があるようで自分から言い出すのは難しいらしい。だから、そこは俺が折れる形でガルちゃんを結界に招き入れるのがベストな選択だと言う。
「えぇ~面倒臭い……」
「ですが、その面倒臭いのを取り除かないと話は先に進みませんよ」
「ハァ~それもそうみたいですね……ガルちゃん、よかったらだけ「遅い! 痛っ!」ど……もう、ちょっと落ち着こうよ。今、解除するから」
「……」
俺が結界を解除するよりも前に早く結界の中に入ろうとして結界に阻まれて痛そうに赤くなった鼻を抑えて涙目になるガルちゃん。ガルちゃんは風上に立っているので、その背後に回り込むことで土埃の影響を特に受けずにガルちゃんを結界の中へと招き入れることが出来た。
「あ~まだ痛い……」
「いや、俺のせいじゃないよね」
「い~や、お前の気遣いが足りないせいだ!」
「そこまで言う」
「ああ、言わせて貰う。ハッキリ言ってお前は女性に対する扱いがなっていない!」
「えぇ! 昨日、会ったばかりの俺に言う?」
「言うぞ。それに確かに昨日会ったばかりだが、必要なことはお前の周りにいるウララ達がこと細かに話してくれたからな」
「はい? いやいやいや、ちょっと待って!」
「なんだ。反論なら聞くぞ」
「別に反論はしないよ。確かにそういう面があるのは……自分でも少しは認識していたしね」
「少し……な」
「うん、少しだけね。でもさ、気遣い云々の前にさっさと歩き出したのはガルちゃんでしょ。しかも土埃を防ぐ方法も禄に教えないまま……ね」
「うぐっ……」
「と、言う訳でリーアさん。このことはしっかり覚えて置いて下さいね」
「はぁ、分かりました。確かにガルちゃんは私達を気遣うことなく一人で先に行きましたからね」
「ぐぬぬ……」
「と、言う訳でこの話はここまで! さ、改めて里を案内して下さい」
「分かったよ! 目的地はあの小屋だ」
ガルちゃんは納得いかない様だが、多勢に無勢と感じたのか特に反論せずに素直に目的地を右手人差し指で指す。
「しかし、人がいない……」
「皆、人見知りと言うのもあるが元々土属性の精霊、ノームを祖先に持つ者達だからな」
「でも、それにしても人の気配が全然しないのはどうかと思うけど」
「ハァ~お前はこのヒドい土埃の中で何をしようと?」
「あ……」
「そういうことだ。ほら、着いたぞ」
小屋の前に着いたガルちゃんは「開けたら直ぐに閉めること! いいな!」と俺達に念押しするように言うと「邪魔するぞ」と小屋の中の住人に声を掛けながら扉を開ける。
「誰だ! ん? これはこれはガルディア様ではないですか! 一体、何事ですか? まさか、世界樹に何かありましたか? ならば、こうしてはおられん! 急いで里の皆に知らせねば!」
「落ち着け!」
「いえ、例えガルディア様と言えど、これが落ち着いていられますか! 失礼、そこをどいていただけますか」
「だから、落ち着け! デュダ!」
ガルちゃんは今にも小屋を飛び出そうとしている小さな髭面のオジさんを片手で制すると「相変わらず、人の話を聞かないな」と嘆息する。
肩を掴まれたままのデュダと呼ばれたオジさんはそれまで荒く息し肩を上下させていたが、ガルちゃんの後ろにいる俺達にやっと気付いた様で「誰だ!」とケンカ越しになる。
「だから、人の話を聞けと言っているだろうが!」
「アイタッ!」
ガルちゃんはデュダの頭をパシッと叩くと落ち着く様に言い聞かせる。
デュダと呼ばれたオジさんは見た目通りのドワーフだった。
背は百四十センチあるかどうかで、その体型も手足が短く樽の様だ。そして何よりも特徴的なのはその髭面だろう。
その顔には長い顎髭をたくわえ、今も自分を落ち着かせる為なのか顎髭を片手でしきりに触っている。
「落ち着いたか?」
「……はい。申し訳ありませんでした……で、コイツらは? アイタッ!」
ガルちゃんの問い掛けにデュダもなんとか落ち着きを取り戻したようだが、俺達に対しコイツらと言った為にガルちゃんがデュダの頭を叩く。
「コイツら……いや、この人達は俺の旦那とその一行だ。よろしく頼むぞ」
「はい、分かりました。……え? 今、旦那と言いましたか?」
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